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私はあなたが羨ましいのです。


・・・・




何なんだ。

一体こいつは?


・・・このまま逃げるのが吉か、それともここは俺を襲った理由を問うべきか。



いや、全く関係のない俺がなんかヤバいこいつに関わるのは馬鹿だな。


もう二度と会わなければいいだけの話だし・・・



ふと数十分前に記憶が戻る。


『今日来た転校生ですよ』

そんなことを斜め前の丸メガネ女子高生は言っていた。



今、目の前で起きている事のインパクトが大きすぎてすっかり忘れていた。


コイツは転校生。

俺の前の前の前のそのまた前の右隣にコイツは座っていたじゃないか。



俺はため息を漏らしながら崩れたワイシャツの第三ボタンを片手で止める。



また汗をかいた。



「お前は一体何がしたいんだ?転校生君」


ここは理由を聞くのが先決だ。


毎日学校でさっきみたいなことをされては不登校になりそうだ。



「い、今のは気にするな我の失態だ」


さっきは私って言ってたろ!


「ざけんなよ。喧嘩じゃなかったよな今のは」


あんな喧嘩、やっとことも見たこともない。


昨晩の殺し合いぐら・・・・



俺の頭に一つの仮説がたった。



師匠を襲った日本刀を持つ白奈という男。今、俺の喉元に杭を突き立てやがったこの男。


もしこの二つの男が何らかの関係があったなら。


もしかしてこの男は見えるのか?


人魂に妖怪。


そしてこいつは俺が見えることを知って殺しに来たのか?


だったら俺に勝ち目はない。

だって俺は・・・



ふと目線を落として視界に入った男に何か温かい物を感じた気がした。


「・・・我は、ただの転校生だ。貴様が一瞬、嫌いだったからからかったのよ」


からかったて・・・

こんなに嘘が下手な奴はそうはいないぞ。



俺の仮説はもろくも三十秒で崩れて消えた。


こんなバカな奴があの冷たい目をした白奈という男の仲間の訳がない。


俺があの男ならすぐにチェンジだ。こんなバカと殺しなんかしたくない。



「だったら。今の杭みたいなのはなんだ?どうして持ってる?」


すると男はきょろきょろと黒目を動かし、灰色の前髪をいじる。



動揺が表に出すぎだ。


「・・・護身用というか・・・いや。おもちゃだ!これでクラスの連中を驚かそうと思ってな!」


「ふざけるな。お前は一体なの者だ?」


「いや・・・だから・・・」


男の声はどんどん小さくなっていく。


それと比例して細い体もどんどんと小さくなる。


そしてしゃがみ込んだ。


「おい!聞いてるのか?転校生!」



その言葉が止めになったのか男が一瞬、ビックと体を動かした。


次に聞こえたのは何かを磨って歩いたような音。


しくしくと泣き声を微かにさせながら男は丸まっていた。


ケンカで涙目になる不良は何度か目にしてきたが

まさか、この年で口で同級生の男子を泣かすことになるとは思わなかった。


「あ、ごめんよ・・・」


流石にまずいな。

これ以上、世間体を崩すのは


「・・・・・・」


男は何かをつぶやいた。


だけどそれは俺の耳に度々かない程に小さなもので外の雑音にかき消される。


「なんだって?」



「ほっ・・・・とけ」


仏?


「ほっとけ!そんで楽しく人生でも生きろ!この脳天バカの幸せ者が!!ずるういさ!」


男は突然奇声を発し、両手で俺の腹部を押して立ち上がる。


「うわっ!」


またもや男の攻撃が早く、いくら不意を突かれたといっても視界にすら入らなかった。


俺は体制を崩して締め切った鋼鉄の屋上へのドアへと大きくぶつかり床へと倒れる。



また後頭部だ。



「いってぇな!おま・・・」



立ち上がって見るいつもの風景にあの灰色頭はもう影も形もない。



階段の下では昼飯を食べ終わった連中が教室へと足音を響かせながら帰っていく。



どうやら始礼はもうすぐらしい。


見事に転校生のせいで昼飯を食いそびれた。



ふと、さっきの男の表情が脳裏に浮かんで消えた。




「おもくそ咬んでるじゃん。・・・まったく。変な奴」


俺が言うのもなんだがな。





2-3組教室。


さっきの灰色は授業が始まっても帰ってこなかった。



やっぱりあの血の臭いのする杭が気になる。


そして素早すぎる動き、そしてあの顔。

何処かであったような気がしたのは気のせいだろうか。



5時間目の授業は英語。


教卓で英語の教師がペラペラと英語を教科書を見ながらひとりでしゃべっている。


黒板に書かれる筆記体の英文を辺りの生徒はB4のノートへと鉛筆で書き写す。



授業の間に微かに聞こえる女子生徒の笑い声。

机の下でいじるポケベルの音。


落書きにいそしむ生徒、昼飯後で涎を垂れながらうつ伏せで寝る生徒。


そんな日常を輝かせるように暗幕を翻し窓からは青空が広がる。




あの男・・・山田はどこ行ったのかな・・・



そんな中、俺は空腹に耐えながら昼休みのことが気になって一人考える。


目の前にあるこないだ買った新品のシャーペンと消しゴム。そして白紙のノートにチョークの粉が雪のように積もってゆく。


そんな夏の終わりの雪ふる机に小さな紙切れが横から風に乗って滑り込んだ。


目で追う込はシャーペンにあたって静かに止まる。






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