第二十五話 与一と前田犬千代、撃ち合い友情録
まだまだコミカル回続きます!m(_ _)m
本日は2話投稿します!
――清洲の昼下がりは、今日も騒がしい。
工房の裏手で、与一がいつものように火薬の匂いをまとっていた。
鉄砲の分解、火蓋の掃除、そして謎の実験。
「よっしゃー! 今日は“爆ぜずに済む”気がする!」
嫌なフラグである。
「与一、やめとけ。昨日も屋根吹っ飛ばしただろ」
庄三郎の声が飛ぶ。
「今日は違う! 鉄之助が調合した火薬だ!」
鉄之助は苦笑いを浮かべた。
「お前、頼むから撃つ前に“祈る”くらいの慎重さ持てよ……」
「へいへい。じゃ、試射、いっきまーす!」
――その時だった。
ドカンッ!!
突然、隣の塀が吹き飛んだ。
煙の向こうから現れたのは――派手な朱の鎧、虎皮の袖、
そして誰よりも豪快な笑み。
「おおっ、面白そうなことしてんじゃねぇか!」
坊主頭を金に染めたような男――前田犬千代(利家)である。
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与一が思わず叫ぶ。
「ま、前田様!? な、なんで塀ぶっ壊して登場してんスか!?」
「いやあ、通りかかったら“ドンッ!”て音がしてな。
俺の登場にしては上出来だと思って突っ込んできた!」
「勝手に出オチ作るなぁぁ!!」
鉄之助が慌てて礼をした。
「前田殿、これはその……与一が少し調子に乗りまして」
「ほぉ、お前が噂の鉄之助か」
利家がにやりと笑う。
「信長公の御前試合で“火を従えた小僧”って話、俺の隊でも有名だぜ」
与一が胸を張る。
「俺も撃ったぞ!」
「おう、聞いた聞いた。“五発連続で当てた兄ちゃん”だろ?」
「そうそう! え、もしかして俺のファンですか?」
「いや、的の裏で倒れてた馬のほうが気になってな」
「馬ぁぁぁぁぁぁ!!」
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利家は鉄砲を興味深そうに眺める。
「なあ、それ撃たせてくれ。ちょっと試してみてぇ」
「えっ、いや前田様、これ危ないですよ!? 火蓋の調整がまだ……」
「上等だ。危ないほど燃えるんだろ? 俺、そういうの好きだぜ」
与一が目を輝かせる。
「前田様、マジですか!? じゃあ俺と撃ち合い勝負しましょう!」
「おう、望むところだ!」
庄三郎が慌てて割って入る。
「待て待て! 何を物騒な!」
「いいじゃねぇか兄貴! 友情は火薬の上に咲くもんだ!」
「そんな花いらんわ!」
⸻
結局、二人は裏庭に並んで的を立てた。
標的――なぜか、椿の屋台裏の鶏小屋。
「与一、当てたら飯抜きにするぞ!」
鉄之助の声が飛ぶ。
「了解! 外す気満々です!」
「外すなあぁぁ!!」
利家が笑いながら銃を構える。
「なぁ鉄之助。お前んとこの火薬、どんな気分で燃える?」
「……気分てなんスか」
「俺のはな、“俺が勝つ!”って思って撃つと、なぜか自分の足が焦げる」
「……それ火薬じゃなくてカルマじゃないですか」
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「よっしゃ、準備完了!」
与一が火縄を構え、利家も構える。
二人、息を合わせ――
「いっせーの!」
轟音。
ドッカーーン!!
的も、屋根も、鶏も吹っ飛んだ。
「ギャァァァァ!! あたしの鶏ィィィ!!」
屋台の奥から椿の悲鳴。
鶏が空を舞い、羽毛が雪のように舞う。
利家が腹を抱えて笑った。
「はっはっは! いい腕だなお前! 的の周りごと消し飛ばした!」
「狙い通りッス!」
「いや絶対違うだろ!」と鉄之助が全力でツッコむ。
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そこへ、鬼のような形相で現れた男がいた。
――丹羽長秀である。
「前田ぁぁ! お前まで何をしておるぅぅ!!!」
「おっ、丹羽様! 元気そうっすね!」
「うるさい! 昨日の報告書がまだ終わっておらんのに!!」
「へへっ、書くのも撃つのも速さが命っすよ!」
「黙れぇぇぇ!!!」
丹羽は鶏の羽を頭に乗せたまま怒鳴り散らした。
与一は横で爆笑、利家は腹を抱えて倒れる。
「いいねぇ! 清洲の鍛冶衆、気に入った!」
利家が笑いながら立ち上がった。
「なあ与一、今度俺の隊に来ねぇか? うちの兵、撃つより喋る方が多くてな」
「えっ!? マジっすか!? 給金出ます!?」
「飯付き、酒付き、殴り合い自由!」
「いや最後のいらねぇ!」
⸻
利家は笑いながら鉄之助に視線を向ける。
「お前も、その火床、大事にしろよ。
俺は戦の火を扱うが、お前の火は“人を生かす火”だ」
珍しく真顔だった。
鉄之助は小さく頷く。
「……ありがとうございます」
「また遊びに来る! 次は馬ごと撃とうぜ!」
「やめろぉぉ!!!」
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夕方。
焦げた鶏小屋を片づけながら、鉄之助は呟いた。
「……前田殿、あれで殿の近習なんだよな?」
庄三郎がため息をつく。
「信長公も、よくあんな男を手元に置くものだ」
与一が笑う。
「でもさ、なんか分かる気がする。あの人、撃つ前に笑ってたもん。
俺も撃つ前は笑っちまうんだ」
鉄之助は火床の奥を見た。
炎が静かに揺れる。
――ぱちり。
小さな火花が跳ねた。
蔵六の霊が、炉の奥でうっすら頷いた。
(若ぇのは、よう燃えるな……)
光忠の声がかすかに響く。
「おい蔵六、お前の息子、また派手なの連れてきたぞ」
蔵六、火花で《にぎやかでええ》の意。
清洲の夜空に、笑い声と鶏の鳴き声がいつまでも響いていた。
やべえキャラ登場させてしまった_φ( ̄ー ̄ )ごめんなまた胃痛増えるな丹羽長秀……頑張れよ
次回、第二十六話 藤吉郎、商人街を駆ける お楽しみに! 評価&ブクマも励みになります!
【次回更新】このあと21時予定!




