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81.ダメな理由

「理由は、2つある。それは、詩季と西原さんの事だよ」


 夏休みに陽葵さんとお出掛けしたいと祖父母に、言ったら拒否されてしまった。


「何ででしょうか?2人での外出は大丈夫なはずではないでしょうか?」

「……詩季、丁寧な言葉で、理詰めは辞めてくれない?」

「何でダメなのでしょうか?」


 理由は、さっき言われたが、僕としては、夏休みに陽葵さんと遊びに行きたいのだ。


 ここで、繰り下がる訳にはいかない。


「僕が理由なのは何処ですか?」

「詩季、まだ、体調が安定していないでしょ?6人なら安心出来るけど、2人……しかも、陽葵ちゃんと2人は許可出来ない」

「陽葵さんが理由とはなんですか?」


 確かに、僕の体調は安定していない。


 足腰の疲労度は、日によって違う。


 酷い日には、歩くのさえしんどい時がある。その時の学校への送り迎えは、おばさんにお願いしている。


 では、陽葵さんと2人でダメだという理由は何なのか。

 陽葵さんの人柄は、祖父母だってよく知っているだろう。


「陽葵さんと2人がダメな理由は何なのですか?」


 僕は、少し怒りを込めた声色で話す。


「詩季、今の不安定な体調面で陽葵さんを守れるの?」


 この言葉には、返す言葉がない。


「陽葵ちゃんは、容姿もいいし胸もしっかり育ってスタイルだっていい。男の子は、ほっとかないよ。ただでさえ、体調が不安定な詩季が守れるの?」


 無理だ。


 ただでさえ、身体的ハンデを抱えていて、体調面が安定しない僕が、陽葵さんを守ることは出来ない。


「陽葵さんが直接的な理由では無いの。詩季、あんた自身の体調面の問題なの」

「あ、あの、そこら辺に関しては、人通りの多い所で遊びますし、詩季くんの体調が悪化した際は、お母さんに――」

「陽葵ちゃん」


 僕に変わって、陽葵さんが説得しようとするが、静ばぁは、何かを促すように、陽葵さんの名前を呼んだ。


「今の詩季に、人が多い所を歩くだけの体力あるかい?そうなると、人通りが少ない所を歩かざるを得ないよね」


 静ばぁの言う通りだ。


 僕は、人通りが多い所を少人数では、歩けない。人数が多ければ、その人たちがガードをしてくれるので、比較的歩きやすいが。


 となると必然的に、人通りが少ない道を歩くことになる。


 そうなった時の、陽葵さんの身の安全を心配しているのだ。


「それにね、陽葵ちゃん。桜さんだって、お家の事があるんだよ?陽菜ちゃんの面倒も見ないといけないんだよ?陽葵ちゃんが、詩季のためってお願いしたらどんなに無理をしても叶えてくれるだろうけど・・・・・・その時、桜さんの負担はどうかな?」


 陽葵さんは、俯いている。静ばぁの言っている事はご尤もな内容だからだ。


 甘かった。


 僕自身の考えが甘かった事を深く反省したい。


 僕が抱えている問題や西原さん一家の事を考えていなかった。


「陽葵さん、すみません。僕が無責任に誘ったばかりに」

「うぅん、大丈夫だよ」


 家に来るまでは、構ってモードの猫みたいだったが、今では、尻尾が垂れ下がって落ち込んでいる猫になっている。


「そんな、2人に別の案を示していいかい?」


 静ばぁが、発した事に、僕と陽葵さんは同じタイミングで顔を上げて顔を見る。


「実は、お盆前に、お友達と旅行に行くつもりでねぇ。その間は、西原さんのお家にお願いしようと思っていたのだけど・・・・・・」


 祖父母が旅行に行くと言うのは初耳だった。そして、その間は、西原さんのお家でお泊まりになるかもしれなかった事も。


「陽葵ちゃん。家に泊まって、詩季の面倒を見てくれない?2泊3日!」

「はぁぁい!是非とも、やらせていただきます!」


 何だろう。


 2人で遊ぼうと誘った時よりも、2泊3日、一緒に、1つ屋根の下で生活する事の方が、陽葵さんのテンションが上がっている気がする。


「陽葵ちゃんは、ノリノリねぇ〜〜詩季は、どうなの?陽葵ちゃんとの2人きり」


 嫌な訳無いでしょう!


 1番信頼と信用している人(祖父母除いて)と一緒に居ることが嫌な訳ない。


 もちろん、嬉しいに決まっているではありませんか!


 だけど、女の子相手に素直に、この感情表現をすれば、ドン引きされて、折角、築き上げた友情関係が崩壊しかねないのだ!


 この感情をなんて言ったらわからないけど、一緒に居たいのは事実だ!


「・・・・・・おばさんとおじさんに話した上で、許可が出たら大丈夫です」


 2泊3日の陽葵さんのお泊まりに関しては、彼女の両親にしっかりと同意を得ないとダメだ。


 この前の1泊に関しても、後日、謝罪に行った時、おばさんは、ニヤニヤ顔だった。

 しかし、おじさんは、笑顔が笑顔で無かったのだ。


 もしも、許可を得るにしても、ギリギリにしてしまえば、おじさんに、息の根を止められかねない。


「うん、わかった!ありがとぉ〜〜お父さん、お母さん」


 陽葵さんは、両親に電話を掛けていたようだ。


「詩季くん。お父さんとお母さんの許可降りたよ!」


 この女の子は、こういう時だけ、外堀を埋めるのが早くないか?


 と言うか、娘2人を溺愛しているであろうおじさんが、あっさりと2泊を認めたな。


 後々が、怖いのだが?!


「それでぇ〜〜詩季、どうなの?」


 年齢を考えろ!


 とでも、叫びたくなってしまう。


 孫の色恋話に、何の興味があるというのか。


 と言うか、僕と陽葵さんは、良き友人なのだ。


「陽葵さんが、一緒だと心強いのでお願いします」


 折れた。


 本当だよ。


 決して、陽葵さんと2人きりが楽しみなのは、後半の55%で、前半の45パーセントは、祖父母を除いて陽葵さんが、1番、信頼と信用できるからだ。


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