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80.昼食

 陽葵さんとリビングに移動すると、僕たち3人分のサラダ類は準備されていたので、健じぃが、陽葵さんの分を用意し始めた。


 本当に、健じぃは、静ばぁに頭が上がらないようだ。


「陽葵ちゃん、詩季の隣よね?」

「はい!」


 陽葵さんは、家に来た時の定位置となる僕の隣に空いている椅子に腰掛けた。


「陽葵ちゃん、普段はカレーは、何口で食べてるの?」

「私は、中辛ですね」

「そう。家のカレーは、詩季に合わせてるなら甘口だけど、大丈夫?」

「詩季くん、辛いの苦手なんですか?」


 陽葵さんは、新たなイジりネタを見つけたと言わんばかりに、ニヤニヤしていた。


「詩季は、甘党だからね。少し辛いだけで無理みたい」

「へぇ〜〜」

「甘党で悪かったですね」

「拗ねないでよぉ〜〜」


 陽葵さんに、からかわれている僕を祖父母は、微笑ましい視線で見てくる。


 健じぃは、陽葵さんのテーブルの前に、カレーとサラダを置いた。


「「「「いただきます」」」」


 カレーを食べ始める。


 安定の美味しさだ。家では、定番の人参・玉ねぎ・じゃがいもだけでなく、たまに、サツマイモとかが入っていたりする。


 まぁ、野菜類は、基本的にミキサーにかけているので何が入っているかは、祖父母の申告が無いとわからないのだ。


「今日は、定番以外に何入れたんですか?」

「今回は、ナスだね。友達から貰ったんだけど、多すぎて食べきれないし……」


 静ばぁは、孫を引き取った事を親しいお友達に話しているようだ。


 そして、お友達から、沢山の野菜の差し入れを貰っているようだ。


 静ばぁは、唯一の若い男の食が細いのだから溜まっていく一方と言わんばかりの視線だ。


「……少しずつ、食べる量を増やしていきます」

「陽葵ちゃん。言質取ったね!」

「はい!」


 静ばぁと陽葵さんは、結託したかのように、喜びあっていた。


 確かに、陽翔くんや瑛太くんが食べる量に、比べると少ないのは自覚していたが、そんなに少なかったか。


「それで、詩季。夏休みは、何か予定あるの?」


 静ばぁから夏休みの予定を聞かれた。


「生徒会に入る事になったので、数回は、学校に行く事になります」

「それは、1人?」

「私も生徒会に入るので、一緒に行きます」

「よかった」


 静ばぁ、安心した表情になっていた。


 やはり、僕1人で夏の外を歩く事をかなり心配しているようだ。


「詩季、繰り返すけど、夏の間は、1人での外出はダメだからね」

「はい」


 静ばぁの心配は、わかる。


 自分が、静ばぁの立場なら同じ事をしているだろう。


「でも、生徒会は、頑張りな」

「もちろん」


 やるからには、本気で取り組むつもりだ。


「あと、お友達と遊びに行くつもりです」

「そう〜〜!何人ぐらい?」

「6人ですかね。全員の予定が合えばですけど」

「静子さん。もちろん、詩季くんの負担にならない所で遊ぶつもりです!」


 陽葵さんが、フォローを入れてくれる。


「そう、それは安心だね。お小遣いがいるなら言ってね。と言うか、お小遣いどうしようか」


 祖父母と一緒に住み始めてから、お小遣いは、貰った事は無かった。


 皆とのご飯は、入院期間中に、僕への生活費として振り込まれていたお金を使っていた。


 先日、母さんが帰国した際に、生活費として振り込んだお金は、僕が自由に使っていいと言われている。


「一応ね、しずかから、詩季の生活費という事で、月々、振り込まれているんだけど、そこから出そうか?」


 正直な話、入院費を西原さんの両親が支払ってくれた事もあり、半年分の生活費の振り込みでかなりの金額の貯蓄が出来ている。


 静ばぁは、何も言わないが、母さんは、僕へのお小遣いも含めて生活費を振り込んでいると思う。


「では、頂けますか?」

「わかった。明日、渡すね」


 遠慮と言うのは、相手を慮る的な意味合いを持っている。しかし、遠慮の使い方を間違えれば、相手を傷付ける結果になる。


 今回は、お小遣いは、素直に貰っておくのが正解だろう。


 母さんは、僕と距離を縮めてこようとしている。


 4月の頃の母さんならお小遣いは、貰わない選択をしていただろうが、文化祭の一幕(62.離脱と後悔参照)を見てからは、僕からも少し距離を縮めても良いと思う。


 本当に、日本の礼節という文化は、難しい文化だ。


「他に夏休みの予定は、無いのか?」


 健じぃが、尋ねて来た。


 そうだ。


 陽葵さんと2人で、一緒に遊ぶ約束をしていたことを伝えないといけない。


 陽葵さんとどこに行けたら楽しいかな?


 僕は、猫が好きだから、一緒に猫カフェに行けたら楽しいかもしれない。


「陽葵さんと、2人で出かける予定も立てています」

「おぉ!」


 祖父母は、目を輝かせていた。


 そして、僕と陽葵さんの顔を見て、静ばぁが、口を開いた。


「……ごめんだけど、その外出は、認められない。ごめんだけど」


 予想外だった。


 1人での外出は、ダメと言われていたので、陽葵さんと2人での外出なら大丈夫だと思っていた。


 だけど、拒否されてしまった。


 理由は、何なのだろうか。


「えっと、理由は何でしょうか?」

「理由は、2つある。それは、詩季と西原さんの事だよ」


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