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78.術中(スパッツ)

「「「失礼しました」」」


 僕達は、生徒会室を後にした。


 結果的には、僕達3人は、9月に開催される体育祭までの任期で、今の生徒会に加入する事になった。


 僕達に、与えられる役職としては、


白村詩季 : 会長補佐

住吉春乃 : 広報

西原陽葵 : 広報補佐


 となった。


 陽葵さんと春乃さんが、広報でタッグを組むことになり、僕は、何故か会長補佐に任命され、古河先輩の下に就く事になった。


 何故、僕は、古河先輩の下に就く事になったのだろうか。

 割と、古河先輩の下の間は、羽衣や陽葵さんを見習ってめちゃくちゃしてやろうか。


「暑いぃ〜〜」


 7月も下旬に差し掛かり、8月が近くなると暑さも半端ない。


 歩くスピードが遅い、僕は、静ばぁから貰った白色のベレー帽をしっかりと被り、水分もすぐに補給出来るように、首からぶら下げる水筒を使っている。


 祖父母からは、夏場の1人での外出を禁じられた。


 これまでは、家の近くのコンビニ程度なら1人での外出は、認めて貰っていたが、夏場は、禁止だそうだ。


 熱い中、1人で出歩いて熱中症になる事が、心配なようだ。


 どうしても、僕が移動するとなると時間が掛かり、暑い中、外に居る時間が、他より長くなってしまう。そして、杖での生活を本格的に始めて、半年に差し掛かり、初の夏を迎える。


 慣れと言う部分もあるだろうが、僕自身のコンディションが安定していないのだ。


 日によっては、膝の疲労が余り取れなかったりする。


 祖父母は、僕の状態を見てこの判断になったようだ。


「夏休み、皆で、どこかに行けたらいいね」


 春乃さんが、僕たちに提案してきた。


「そうだね。詩季くん。夏休みの外出とかは、どんな感じ?」


 陽葵さんは、まだ知らない。


 祖父母に、夏休みの外出の条件を聞かされたのは、陽葵さんが来る前の朝食の場だったからだ。


「1人での外出は、禁止されていて、皆さんと外出する際は、何処に行くのかをしっかりと伝えるようにと言われています」


 複数人での外出は、認められている。その代わりに、何処に行くのか、帰宅予定時間も伝えるように言われている。

 もし、帰宅予定時間から30分以上遅れる場合は、連絡を入れる事を言われている。


 ちなみに、外出に関するルールは、退院してからある。


 夏休みに入る時に、再度確認された。


 一見すると過干渉に見えるが、僕が外出先で何かあったのかを測る物差しになっている。


「じゃ、皆で予定合わせてどこか行こ!」


 春乃さんは、ノリノリだ。


「直ぐに休憩を取れて、運動系はNGだよね。あと、詩季くんのおじいちゃんとおばあちゃんが直ぐに動ける場所がいいよね」

「気を遣ってもらってありがとうございます」

「当然じゃない?私たちお友達だよ」


 春乃さんは、気遣いも出来ていい子だ。


 グループの女子の中では、唯一、僕の前でも陽翔くんや瑛太くんの前でスカート捲ってのシャツ直しをしない。女の子同士の場合は、知らない。


「それにしても、春乃ちゃん可愛いよねぇ~~清楚系と言うかぁ~~シャツ直し、人前でしないよね?私は、女の子や詩季くんの前ならするけど」

「私はしないかな。私、体育がある日か、文化祭の準備みたいな時しか体操ズボン履いてこないし……」

「え、じゃぁ今……」


 陽葵さんと春乃さんは、僕が居ること忘れているのではないか。男の子が居る前でする話では無い気がする。


 と言うか、スカートの中に下着以外何を履いているかなんて、男の子の前で話す内容ではない。


「下着だけでは無いよ。スパッツ履いてる。ズボンだと汗がヤバくて。冬もタイツ履くからズボンとかは……」


 春乃さんは、陽葵さんに向けてだろうがスカート捲って見せていたが、僕も見てしまった。女の子同士の情報交換の一貫なのだろうけど、陽葵さんはともかく春乃さんが無警戒になるとは思わなかった。


 ある種のラッキースケベだ。


 そろそろ、2人……というか、春乃さんに状況を教えないと、彼女が恥ずか死ぬ可能性がある。


「春乃さん。僕も居るんですけど?……その、スパッツ……」

「……あわわぁ~~」


 まんまと春乃さんは、僕を男の子として見ていない節のある陽葵さんの術中にハマっていた。


 春乃さんは、顔を真っ赤にしていた。


 これが、歳の近い男の子にスカートの中見られてしまった時の素直な反応だろう。一方、陽葵さんはニンマリしているかと思ったが、ムッスーとした表情になっていた。


「私もスパッツなら……」


 何か、ヤバい予感を放ちながら、ヤバい言葉を発していた気がするが、聞かなかった事にしておこう。


「その、詩季くん。ごめんね?」

「大丈夫だよ、春乃ちゃん!詩季くんは、むっつりスケベだからねぇ~~内心、嬉しいって思っているんじゃない?」


 そう言いながら、陽葵さんは、僕の脇を抓って来た。


 一方の、春乃さんは、顔中が真っ赤になっていた。


 相当、恥ずかしかったのだろう。


「陽葵さん、春乃さんをイジメたらダメですよ?」

「むぅ~~ごめんね。春乃ちゃん。悪ふざけしちゃった」


 陽葵さんは、春乃さんの頭を撫でていた。


 陽葵さんの言う通り、春乃さんは純粋な女の子だと思う。


 陽葵さんの術中にハマっている姿は、陽葵さんには見られない姿で可愛いと思った。


 すると、陽葵さんが、僕の脇腹をさっきより強く抓って来た。


「陽葵さん。痛いです」

「ふ~んだ」


 何やら、機嫌を損ねてしまったか?


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