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74.シャツ直し

「本校の生徒らしく、人に迷惑を掛けない――」


 体育館で、1学期の終業式学生行わていて、高等部の校長先生による長い挨拶が行われている。


 僕は、体育館で先生方が並んでいる場所でパイプ椅子に座らせてもらっている。

 陽葵さんは、クラスの方に行っている。


 私立高校でお金があるのか、体育館内は、空調がしっかりと効いている。

 しかし、長い時間の体操座りは、しんどいのだろう、男女問わずに、表情を曇らせている人もいる。


「では、終業式を終了します」


 終業式が終了し、3年生から順番に、体育館を後にしていく。


 最後に、1年生の番になり、陽葵さんが、僕の近くに来た。


「じゃ、西原陽葵頼んだぞ」


 守谷先生は、僕が座っていたパイプ椅子を持って体育館を後にした。


 僕は、体育館の出入口の人の流れが、落ち着いたタイミングで出るようにしている。

 先に出た所で、後から、出てくる人達の邪魔になるだけなので、1番最後が丁度いい。


「いつも、ありがとうございます」

「いいよォ〜〜」


 僕は、お礼を言うことを忘れないようにしている。

 最初は、陽翔くんとローテーションを組もうとしていたみたいだが、陽葵さんが譲らなかったみたいだ。


 最後に、退場する1年生の人が少なくなったので、僕と陽葵さんも移動しようとする。


「あっ、詩季くん。ちょっと待って。シャツ直したい」


 陽葵さんは、スカートの中に手を入れてシャツを直しだした。


「陽葵さん。男の前で――」

「詩季くんの前か、女の子しかいない時にしか、しないって」


 何だろう、この男として見られていない感じは。


 水本さんは、気にする必要が無いとは言っていた気がするが、大丈夫なのか?


「ありがとう。じゃ、行こ!」


 スカートから手を出して、降りたスカートをパタパタとしてから一緒に、移動する。


 既に、ほとんどの生徒は、教室まで移動しているのだろう。


「陽葵さん、シャツ直し、僕の前ならするんですか?」


 陽葵さんの言う通り、僕以外の男子がいる時にしているのは、見た事がない。


「だって、詩季くんは、安心出来るだもん。それに、体操ズボンは、あくまでガードだからね。体操ズボン履いてるからって、男子にスカートの中見られて、平気なわけ無いよ」

「僕なら平気だと?」

「うん!詩季くんが、望むならそれ以上までOKだよ!」


 パンツを見せてと言ったら本当に、見せてきそうな言動で、少し怖い。


 羽衣なら問答無用で、手刀攻撃で黙らせる所だが、陽葵さんだと無理だ。


「……あなたは、特殊性癖でもお持ちですか?」

「そんなん無いよ。誤解しないでよ!」

「陽葵さん。暴走だけは、しないでくださいね」

「してないよ!通常運転だよ!」


 奈々さんも、僕たちグループでいる時に、先程の陽葵さんと同じ行為をする時がある。


 最初は、瑛太くんに注意されていたが、「別に、体操ズボンぐらい見られて平気だし、皆は、友人だし」と、返されて納得していた。


 同じ女の子でも価値観が違うなぁ〜〜と思った。


 僕だって性欲のある男の子なのだ。


 だから、女の子……特に、身近な女の子が、シャツを直すためと言えど、スカートを捲っていたら見てしまうものだ。


「陽葵さん。僕も、男ですよ?」

「うん、わかってるよ?」


 あぁ、これは、警告しても効果が無いパターンだ。


 僕が、しっかりと我慢しないといけないパターンだな。


「まぁ、お手柔らかにお願いします」

「????」


 陽葵さんは、何を?と言わんばかりに、頭を傾けていた。






 皆から遅れること数分、僕たちは、教室に着いた。


 僕と陽葵さんを待つ間に、成績表を渡していたようで、席に座る前に取りに来るように言われた。


 1学期の成績表が入ったファイルを受け取ると、1枚の付箋が貼ってあった。


―― 放課後、交流会館の高等部生徒会室へ ――


 放課後に、生徒会室に行くようにとのお達しだった。


 どうやら、陽葵さんも同じ付箋が貼ってあったみたいです、僕に、見せてきた。

 僕も付箋を見せた。


 終わりのホームルームが終わり、僕と陽葵さんは生徒会室に呼び出された事を伝えながら付箋を見せた。


 すると、皆から返事が返ってきた。


春乃さん:呼ばれた

瑛太くん:呼ばれた

奈々さん:呼ばれてない

陽翔くん:呼ばれたけど、付箋を守谷先生に返して拒否した


 奈々さんが、自分だけ呼ばれなかった事を嘆いていたが、陽翔くんは、呼ばれたのに話を聞かずに拒否するとは……


 結果的に、僕・陽葵さん・春乃さん・瑛太くんの4人が生徒会室に行く事になり、陽翔くんは、帰宅、奈々さんは、先に部活動に行くことにしたそうだ。


「ちょっと、待ってくれないか」


 僕たちは、呼び止められた。


 呼び止めた人物を見て、陽翔くんと瑛太くんは、臨戦態勢に入ったように、僕の前に出た。


「何か、用か」

「喧嘩しに来たんじゃねぇ。ただ、詩季に謝りたくってよ……」


 僕たちの前に来たのは、石川くんだった。


 岡さんと高梨さんは、自分の席からこちらを見ている。


「2人ともどいてください」


 僕の発言で、陽翔くんと瑛太くんは、僕の前からどいて、石川くんと対峙させてくれた。


「なんでしょうか」

「そ、その……すまなかった」


 石川くんは、頭を深々と下げてきた。


「なんの事に対しての謝罪でしょうか?」

「そ、その……中等部時代から、色んな事を押し付けてきた……それに対して何の労いをして来なかった事に対して……だ」


 余程、自信が無いのか。それとも、父親にこっぴどく叱られたのか。


 同じ日に、僕が会社への就職を拒否したり、母さんが辞職したりと、きつく叱られる材料は、揃っている。


「その事に、対しての謝罪は、受け入れましょう」

「じゃ……」

「ですが、先日も言いましたが、君たちとは、もう行動を共にしません」


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