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55.文化祭!②

「あちゃ~~陽菜、もう来たかぁ~~」

「嫌なんですか?」

「嫌じゃないよ。ただ、詩季くんとの時間が取られるんだもん」


 陽葵さんは、軽口を叩きながら陽翔くんへのメッセージを返信していた。


「向かいましょうか?」

「いや、こっち来るって。人多い中移動しにくいだろうからって」

「あはは、何から何まで申し訳無いですね」


 西原さんの家族が、こっちに来るまでゆっくり待つとする。


 そう言えば、この情報は共有しておかないといけないと思う。


「おばさんとおじさんは、今日、僕の母親が来る事知らないよね」

「うん。私も、今朝、知ったから」


 おばさんは、何時かのタイミングで、僕の実の両親と話し合いたいと言っていた。帰国していない父親は、無理だとしても、今回、帰国してきている母親なら会えるかもしれない。


 ちなみに、日本で何かあったかは、4月のあの日に、羽衣を経由して両親は把握している。


「でも、会いたがると思う」

「解りました」


 この後に、おばさんに会ったら僕から確認してその意向を母親に伝えれば良いと思う。


 僕と陽葵さんは、陽菜ちゃん達が来るまで、のんびり話しながら待つことにする。


 すると、流れていた空気が乱れた。


 乱れた所を見たが、既に異様な雰囲気を出していたであろう人物は、通り過ぎていた。


 物凄い雰囲気だった。


 今は、人は少ないがこの付近に居た人は、皆、異様な雰囲気を感じ取りその方向に顔を向けていた。


 恐らく男の子で顔が良かったのだろう、女子生徒はメロメロになっていた。


 たった1人を除いては。


「ねぇ、詩季くん。どうしたん?」


 僕は、異様な雰囲気を放っていた恐らく男の人の顔を見られなかったが、空気が変わった事で存在は認識していた。


 しかし、陽葵さんは認識していないのか、僕を見続けてくれている。


「陽葵さんは、気が付かなかったのですか?」

「全然。詩季くんの事見てたらから」


 本当に、気が付かなかったようだ。理由が、僕を見ていたからは、恥ずかしいからここ以外では話さないでほしい。


「ねぇ、もしかして――」


 僕は、陽葵さんが指差した方向を見た。しかし、僕が見た人物の雰囲気では無かった。


 というか、陽葵さんが認識した人物は、僕も知っている人物だ。異様な雰囲気を放っていた人物は、会ったこともない人物だ。


「あの人ではないですよ」

「違うの?!」

「はい。違いますね」

「でも、石川くん。何か緊張してるね」


 僕にとって、母親に対しての評価というのが、少し上がった瞬間だった。


 陽葵さんが見つけたのは、幼馴染達とその家族達だ。


 しかし、母親の姿は無かった。


 既に、日本に帰国しているのだから、仲のいい幼馴染の親たちと行動を共にする事は出来ただろう。


 しかし、していなかった。


 色んな見方があるだろうが、家族第一に見ているようで少し安心した。


 だが、石川くんは、自身の父親を前にして少し怯えているように見える。


(変わってないな)


 幼馴染の集団を見てそう思った。


「ねぇ、詩季くんが、石川くんたちに多少なりとも情けを掛けていた理由は、あれなの?」

「一端にありますね。これは、人の中の優先順位の話になりますからね」


 彼らを甘やかしていたのは、僕だ。そこは、反省だが、彼らにも反省点は大いにある。


 僕に甘えているという自覚を持たずに、自分たちの能力だと自覚した事が、彼らの失態だ。


 僕が、彼らのグループから抜けた瞬間に今まで回っていたことが回らなくなった時点で、気が付くべきだったのだ。

 いや、僕が、メッセージアプリのグループを抜けた時点で、事態の収拾に動いていれば何とかなったかもしれない。

 けど、彼らは、「どんな事があっても詩季は俺たちのグループ」という考え方を捨てられなかったのだろう。


「何か、あるんだね」

「そうですね」


 僕と陽葵さんが話していると、幼馴染達は校舎に消えて行った。


「詩季にぃちゃん!」


 入れ違いに、陽菜ちゃんが僕を見つけて走って来た。


「走ると転びますよ?」

「大丈夫だもん!」


 陽菜ちゃんは、座っている僕に抱き着いて来た。そして、隣に座っている陽葵さんを押しのけて座って来た。


「むぅ~~やっぱり、詩季くんの隣取られたぁ~~」


 陽葵さんは、おばさん相手に拗ねていた。


「妹に、取られた位で拗ねないの」


 そして、おばさんに軽くあしらわれていた。


「じゃ、詩季にぃちゃん。一緒に、遊ぼ!」


 僕は、立ち上がって陽菜ちゃんが希望する所に行く事にする。


 陽菜ちゃんは、陽翔くんと手を繋いでいる。ここの気の使い方は、本当に、小学1年生かと疑いたくなる。


 そして、スルッと僕の隣に戻って来た陽葵さんは、本当に高校1年生かと疑いたくなる。


 焼きそばにりんご飴を食べて、クラス展示の中のミニゲームなどをして回った。


 陽菜ちゃんの嬉しそうで楽しそうな表情を見ていると自称精神年齢が30オーバーの僕が、ギリ20代になれている気がする。


 中庭に戻って来た。


 空いているベンチに腰かけて休憩する。


「詩季、水」

「ありがとうございます」

「ねぇ~~膝に座って良い?」

「良いですよ?」


 陽翔くんが、お水をくれた。


 陽菜ちゃんのご希望で、膝に座らせる。


 陽菜ちゃんは、ご機嫌だ。陽翔くんが、買って来たジュースを飲んでいる。


 ピクッ!


 何だろう。僕に対して何やら嫉妬を含んだ殺意に近い視線が向けられている気がする。


 これは、陽葵さんでは無い。


 視線の主は、遠い位置に居て……今、こっちに向かってきている。


「詩季にぃさんの浮気者~~」


 パチン♪


 そう言うと、僕の頬は、優しいビンタを喰らった。


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