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47.空気そして決壊

 皆さんは、トップダウン方式において大事な事は何だと思いますか。


 いざ、聞かれると答えが見つからない問題だ。


 トップダウン方式だったり、ボトムアップ方式など、組織体制においての善し悪しが囁かれる今現代。

 学校のクラスという組織も同じ流れに、入っているのではないのか。


 人の前に立つ以上、能力がある事は、大前提になる。


 進学クラスに、所属している時点で学内の同学年の中では能力がある事は、証明されているので大丈夫だろう。


 ただ、能力がある人間が人前に立って、トップダウン方式が成立するなら、能力があると自負する人間は、そうするだろう。


 だけど、していない。






 現在、文化祭の準備を真っ最中だ。


 中間テストが終わった翌週から準備が始まり、1週間の授業のコマの中の2コマ用意されている、総合AとHRの授業時間を使って進めている。


 そして、文化祭が近くなれば、午後の授業が丸々、準備時間にあてられる事になる。


 今は、今週2コマ目、総合Aでの文化祭準備の時間だ。


 僕達は、石川くんから指定された箇所を調べ終えて、次の指示を待っている最中だ。


 所々のグループでも、指定された所を調べ終えて、指示を待っている人達が出てきている。


 石川くんからの指示が来ない以上、準備が進められないとの事で、僕に聞きに来る事もあったが、「クラス展示の最高責任者は、石川くんですので、彼に聞いてください」と言っている。


 そして、石川くんの相方的な、岡さんは、典型的な、石川くんに対するイエスマン状態だ。


 では何故、クラスメイトは、僕に指示を仰いでいるかと言うと、中等部時代がそうだったからだ。


 見切り発車で、物事を進める石川くんに対して、裏で、彼のプライドを傷つけないように軌道修正し続けていた。


 その名残だ。


 だけど、今回はそのサポートが無い事で、彼は、キャパオーバーを起こしているのだろう。


 次から次へと、指示を貰いに来るクラスメイトに対応出来ていないでいる。


「あぁ〜〜もう、少しは、自分で考えて動いてくれよ。こことか、修正してくれ」


 ダメだな。


 石川くんが、トップダウン的な組織体制を築いている以上、1番、言ってはいけない事だ。


 言われた人は、間違いなく不満を溜める。


 守谷先生は、静観を決め込んでいる。教室の後方で、僕の方を面白そうに、見ている。


「詩季、大丈夫か。あれ」


 瑛太くんが、僕に耳打ちしてきた。


「大丈夫じゃないでしょう」

「なら――」


 瑛太くんは、助け舟を出してやるべきだと言いたいのだろう。


 文化祭を良い物にするために、クラスの展示を良い物にするために、今、ここで助け船を出すべきだと言いたいのだろう。


 僕は、この文化祭において良い展示を作る必要は無いと思っている。最低限、見せられる物を作れば良い。


 完全なる文化祭の私物化なのかもしれない。


 だけど、幼馴染達が、こうも堕落してしまったのは、ある種、僕の責任な気がする。やり方は、最低かもしれないが、解らせるには、この機会が最適解だと思う。


 展示物を最低限見せられるものにするのは、文化祭のクラス展示を私物化するものに関しての最低限の報いだと思う。


「――静観でいいですよ」

「何も、しないのかよ」

「何もしない訳では無いですよ。必要な時には、協力をお願いしたいですね」


 瑛太くんも守谷先生と同じように、何かを感じているのか、それとも、ただ頬が緩んでいるのか、笑っている。


「詩季くん。何を考えているの?」

「春乃さんにもご迷惑をお掛けしますね」

「でもさぁ、私たち、詩季くん同好会!だからね」


 メッセージアプリのグループ名が、『詩季くん同好会!』の理由が垣間見られた気がする。そして、このグループ名を考案して、陽翔くんのアカウントでグループ名を編集した犯人は、陽葵さんだ。


 勝手に犯人扱いしてしまった、陽翔くんには、今度、謝っておこう。


 僕も羽衣に対しては、同じ様なものだから言えないかもしれないが、陽翔くんも大概、シスコンだと思う。






 そこから、石川くんの指示のもと文化祭の準備を進めて行っているが、相変わらずな彼のワンマン体制のままなので、今のクラスの雰囲気は最悪だ。


 そして、クラスのまとめ役の正副委員長である春乃さんと僕が、わざと静観を決め込んでいる事も拍車を掛けてクラスの雰囲気を悪くしている。


 6月に入り、中旬に控えている文化祭の準備のために、午後の授業コマが準備時間になるのは来週という時期にきている。


「予想以上にもったなぁ~~」

「詩季くん、悪い顔してる」


 今日は、週2コマが文化祭準備期間の最後の総合Aの時間だ。


 今日も今日とて、石川くんは、強い口調でクラスに指示を出している。ただ、クラスの雰囲気は、最悪を越えだしている。


(やっと……やっと、起こりますね)


「詩季くん」

「春乃さん。今日、このクラスは……崩壊します。そうなった時は、以前、話し合った時のように動いて下さい」

「うん。わかった」


 クラスに漂うこの空気は、もう少しで、クラス崩壊が起こる一歩手前。


(3……2……1)


 心の中でカウントダウンをした。


 すると……


「もう、やってらんねぇ~~」


 1人の男子生徒が、声を上げた。


 すると、クラス中に溜まっていた【不満】という空気という堤防が、決壊した。すると、クラス中から石川大海とそれにイエスマン状態の岡莉緒さんに対しての不満が……





 大爆発した。


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