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43.ご褒美!?ご褒美だ!!

「お邪魔しまぁ~~す」


 陽葵さんが、家に来た。


 陽葵さんと1つ屋根の下に、2人きりで居るのは、初めてなのでソワソワしてしまう。


 祖父母には、さっき、陽葵さんが家に来る事をメッセージで伝えておいた。


 ブー♪ブー♪


 スマホの通知音が、2回、鳴った。つまりは、メッセージが2通来たのだろう。


『 (静ばぁ) まぁ、まぁ、私達が居ないことをいい事にぃ〜〜今日は、お友達のお家にお泊まりしようかしらぁ〜〜』


『 (健じぃ) 陽葵ちゃんは、女の子だぞ。ワシらの部屋のタンスの引き出しに、一応、買ってあるから』


 祖父母は、何を考えているのだろうか。


 静ばぁは、まぁ、百歩譲ってもいい。だけど、健じぃに、関しては、明日、しっかり話をせねばいけない。


『 (白村詩季) そんな、冗談はいいから。帰ってきな!』


 祖父母に、メッセージを送り返して、家に上がる。


 とりあえず、 陽葵さんには、リビングにいてもらって、僕は、荷物を部屋に置こうと思った。


「何で、陽葵さんまで、着いてきたのですか。リビングで、待っていればいいじゃないですか」

「えぇ〜〜、首席のご褒美は、詩季くんが横になれる所じゃないとねぇ〜〜」


 今からでも、陽翔くんを呼ぼうかと思ってしまった。


 僕の貞操の危機だと、何処かしらから警告音が聞こえてくる。


「とりあえず、飲み物取ってきますね」

「全然、いいよ。水筒、まだ、残ってるから」


 すると、陽葵さんは、スカートの中に、履いている体操ズボンを脱ぎ出した。


 あっ、やばい、本当の貞操の危機だ。陽翔くんを呼んでいれば、良かったと思った。


 陽葵さんは、体操ズボンだけを脱ぐと、僕のベットに座った。


 すると、自分の膝をスカート越しに、ポンポンと叩いている。


「どうしたんですか?」

「膝枕。詩季くん、頭、なでなでをご所望でしょ?いつもみたいにしても、ご褒美にならないし――なら、膝枕!」


 とりあえず、貞操の危機は、去ったと思っていいのだろうか。


「早く!」


 固まって考えていると、陽葵さんから早く来るように言われたので、仕方なく――本当に、仕方なく?陽葵さんの膝に頭を置く。


 すぐさま、陽葵さんは、頭を撫でてくる。


「詩季くん、顔、上向けて」


 陽葵さんに、背を向ける形で寝ていたが、天井を見る体制に変えられた。


 この体制だと、陽葵さんの胸の膨らみを視認してしまうのだ。


「詩季くん、目瞑らなくていいよ?詩季くんになら、見られてもいいから。――まだ、直接は、恥ずかしいけど」


 この人は、一言多い事が多い気がするのは、気の所為ではたいだろう。


 まぁ、でも、陽葵さんが嫌じゃないというなら目を開けさせて貰おう。

 あくまで、陽葵さんのイタズラ防止のためだ。


 やっぱり、陽葵さんのなでなでは、最高だ。


 猫氏の気持ちが、よくわかる。しかも、膝枕というサービス付きだ。


「詩季くん、気持ちいい?」

「はい。気持ちいいです」

「そりゃ〜〜うら若き、今年、16歳の女の子の膝の上ですからねぇ〜〜」


 陽葵さんの調子に乗るメーターが、そろそろ、振り切れそうだが、この気持ちよさももっと味わいたい。


「――膝枕するにしても、ズボン脱ぐ必要無くないですか?」

「えぇ〜〜だって、ズボン履いてない方が、私の膝の柔らかさ味わえるでじょ?」


 正直、スボンの有り無しなんてどうてもいい位には、緊張している。


 何かを話していないと、緊張で押しつぶされそうなのだ。


「んまぁ、私が、詩季くんの重さを、直接感じたいだけなんだけどね」


 幾分か前の言葉を訂正したい。


 やっぱり、貞操の危機なのかもしれない。


 ただ、なんだろう。瞼が、重くなっているのも感じる。


「詩季くん、眠いの?」

「わかんないです。でも、寝てしまったら身の危険が――」


 言葉の途中で、陽葵さんの手が、目の上に置かれた。


「大丈夫。ゆっくり、寝なよ。詩季くんが、嫌がる事は、絶対にしないから」


 何だかんだ、祖父母以外で、1番一緒に居て落ち着く存在なので、そのまま、眠りについた。






「ゆっくり、寝てるわねぇ〜〜」

「うむ、うむ。詩季に、帰って来いと言われて帰ってみれば、良いものを見れたぞい」


 何だか、聞きなれた声がしたので、瞼を開けて見る。


 すると、陽葵さんが、僕の顔を覗き込んできた。


「詩季くん、おはよ。よく寝れた?」

「陽葵さん、おはようございます」


 何だろう、部屋には、もう2人程の視線を感じる。


「詩季、陽葵ちゃんの膝枕気持ちよさそうやのぉ〜〜」


 声の方向に顔を向けてみたら、祖父母が、ニマニマしながら、見ていた。


「――もう帰って来たのですか?」

「もうって、時間」


 静ばぁは、スマホの時計を見せてくる。


 19:36


 時刻を見て、頭の整理に、1分程必要になった。


 家に着いたのが、17時30分頃。そして、膝枕をしてもらって話していて18時は、回っていた。


 つまりは、陽葵さんの膝枕で1時間以上熟睡して、その間に、祖父母が帰宅して、この光景を見られたという事だ。


 穴が、あったら入りたい。


 恥ずか死ぬ自信がある。


 僕は、起き上がり、陽葵さんの隣に、座った。


「ふむふむ、体操ズボンだけ脱がして何もしないとは。何たる、チキンな孫じゃ」

「健じぃ、何言っているのですか!陽葵さんが、居るんですよ!」


 メッセージの時からそうだが、健じぃは、テンションがおかしい気がする。


 そして、陽葵さんは、何故か、健じぃに、同調しているように見える。


「じぃさん。何言ってんの!まぁ、後は、若い2人でぇ〜〜」

「静ばぁもですか!」


 2人は、ニヤニヤしながら部屋を出て行った。


「陽葵さん、ごめんなさい。こんな時間まで、寝てしまいました」


 陽葵さんに、謝る。


 僕の身体では、陽葵さんを自宅まで、送り届ける事が、出来ない。


 陽葵さんのお家までなら、一緒に行けるが、1人の帰り道が問題なのだ。


「全然、いいよ。詩季くん、頑張りすぎて疲れてたんだよ」

「僕、身体的にお家まで、送れないから、健じぃとかに頼みます」

「あぁ〜〜それなら大丈夫!」


 すると、陽葵さんは、スマホのトーク画面を見せてきた。


『 (西原母) 静子さんから、聞いたよぉ〜〜良かったやんか!今日は、そっちに泊まって行き!明日の用意とかは、陽翔に持たせるから』


 どうやら、現場を目撃した静ばぁから、西原母に、伝わってたらしく両家間で、陽葵さんのお泊まりが決定していたみたいだ。


 そして、その流れ弾を食う形で、陽翔くんが、良いように使われている。


 今度、ジュースの1本でもご馳走しないと、バチが当たるだろう。


 ブー♪ブー♪


 僕のスマホが、メッセージを受信した。


 送り主は、静ばぁだった。


『 (静ばぁ) 詩季にとっては、ご褒美かな』


 何の事を言っているのかと思い、添付されている写真を見る。


 添付されていた写真は、陽葵さんに膝枕されて熟睡する僕が、写った写真だ。僕だけが、陽葵さんの膝枕で寝ているだけなら、即刻削除していただろう。


 しかし、僕は、その写真を保存した。


 そこには、膝枕で、僕を寝かせながら、自分も夢の世界に旅立っていた陽葵さんが写っていたのだ。


(全く、男の子が居るのに、油断し過ぎだって……)




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