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321.また明日

「落ちる所まで落ちたと言ってもいいのかな?」


 時は進み梅雨明けが待ち遠しい6月下旬。


 生徒会室に入ってから本日のお仕事として書類整理をしようと思ったら2通の書類が目に入った。


 一通目は、『石川大海の警告累積による退学処分決定』だった。


 一応、生徒の代表という事で生徒会長の僕のサインを必要になる。


 警告の累積による退学者は、実に50年以上ぶりだそうだ。


 二通目は、『岡莉緒の自主退学申し出』だった。


 石川くんの場合は、警告の累積のためだったので具体的な理由は書いていなかったが、岡さんの場合は、自主退学のため書いていた。


 自主退学に関してはまれにある。


 家の引越しの際にとかが一例だ。


 僕はサインのために理由に目を通した。


「はぁ。2人はその中毒性にやられましたか」

「詩季にぃどうしたん?」


 ありったけの雑務をこなしている羽衣が、質問してきた。


「羽衣は経験ないから……まだ、解らないけどね?」

「セックス?」

「……そうだけど。随分、正直に言うね」


 羽衣が隠さずに「セックス」という単語を出したことに驚いた。


「だってさ、交際歴が私より短いのに詩季にぃが先輩面するのは、セックスぐらいじゃない?」

「……はい。確かにそうだと思います」


 羽衣に言いくるめられた。


 僕は羽衣に説明するのだった。


「……セックスってそんなに良いものなの?」

「恋人としたらお互いの愛情を確かめ合えて良いものですよ。キスの延長だと思う」

「そっか」

「ただ、それは中毒性があるんだよ。2人はその中毒性に呑まれた行きの果てのまだましな方に行き付いたって感じかな?」

「その中毒性ってヤバいの?」


 羽衣が尋ねてきた。


 会話をしながらも仕事を進めている辺り優秀なのだろう。


「ヤバいよ。愛情を感じられるからもっと感じたくなる。特に、喧嘩の後だったり何かを成し遂げた後とかだとヤバいよ。だって、セがつく友達を作ったりする人もいる位だよ」

「そのセがつく友達で愛情確かめてんの?」

「それは知らないよ。まぁ、多分愛情を快楽に変換しているんだろうと思うよ」


 妹に何を説明しているのだと思う。


 だけど、羽衣の将来のためになると思えばと思う。


「……それで、2人はその中毒に吞み込まれたの?」

「そう。岡莉緒が妊娠した。本人が出産の意向だから学校生活を送っている余裕がないので自主退学。多分、石川大海も退学処分を受けた後に働きに出るんじゃないかな?」

「……うわぁ~~」


 内情は知らない。


 ただ、琴葉さんから以前に聞いていた事だが、お互いの両親が仕事で家を空ける事が多くなっていた。


 それをいい事に、2人の性行為の頻度が日に日に多くなっていたと聞く。


「両親が全く家に居ない。それと、警告累積の謹慎期間が重なって性欲に溺れた生活を送っていて避妊具がなくて安易な考えでひにんせずにしてそれが……」

「……詩季にぃの見立て通りじゃない?」


 謹慎中に2人でホテル街に出歩いていた。


 これは、僕からの報告で後をつけた先生方が2人を指導した結果を聞かされていた。


「そうだろうね」


 まだ、1つの可能性は消えた訳ではない。


 だけど、その可能性は羽衣には言わなくていい事だ。



〇〇〇



「2人とも退学なんでしょ?」


 帰り道に琴葉さんからそう問われた。


 陽葵と陽翔くんとは途中で別れて家が同じ方向の琴葉さんが付いてきている。


「情報早いじゃん」

「2人がゲロった。退学どうにかならないかぁ〜〜って」


 どうやら、警告累積での退学処分に対する不服申立てが無かったのは彼の両親が止めたのかもしれない。


 琴葉さんに懇願しているため、石川くんは何とか学校に残る道を模索していたに違いない。


「じゃ、手遅れだったんだねぇ〜〜」


 2人の両親は、自分たちの子どもとの時間を作ることにした。


 そのため、未来創造はスワングループに買収される事になった。


 自分達が留まるよりも会社を残す事を選択したようだ。


 ただ、その時には時既に遅しだった。


 岡莉緒の妊娠が発覚し相手は、石川大海という事になるだろう。


 岡莉緒が出産の意向なのだから彼氏である石川大海も責任を負わないといけない。


「……これから、どう歩むかだよね」

「あの2人がどうなるかはもう知らないよ」

「難しいお話やめて楽しいお話しよ〜〜」

「だね」


 残りの帰り道を昔を思い出しつつ新しい関係性に羽衣が楽しみながら帰宅していく。


「じゃ、また明日」

「またねぇ〜〜」


 お家に到着したので鍵を開けて家に入る。


「ただいまぁ〜〜」

「2人ともおかえり!」


 家にあるエレベーターで2階のリビングに移動すると母さんが料理を作って待っていてくれた。


 この6月から、僕と羽衣は元いたお家に戻って母さんと暮らし初めた。


 トントン拍子に話を進めたので祖父母は寂しそうにしていた。


 それが影響してか毎週土曜日には会いに来るのだ。


「今日の学校はどうだった?」

「ぼちぼちだね」


 夕ご飯を食べて就寝準備を終えて布団に入った頃に、スマホの着信音が鳴った。


「どうした?」

『ん〜〜詩季の声が聞きたくてさ』

「そっか」

『実家での生活どう?』

「元々住んでた家だからね。もう慣れたよ」

『そっか!』


 電話越しの陽葵は、どこか嬉しそうだ。


『でも、お迎えが出来なくなったのは残念だな?』

「家の距離的にもダメ。お迎えとなると今まで以上に早く起きないとダメになるじゃん?」

『ぶぅ〜〜そうだけどさぁ〜〜』


 恐らく、頬をプクーと膨らませているのだろう。


『また、明日、何時もの所で集合ね?』

「わかった」

『おやすみ』

「おやすみ」


 電話を切り就寝する。


 また、いい明日が訪れる事を願い。




                      ―完―

本編は、ここで終了となります。

ここからは、後日談的なエピソードを数話投稿していく予定です( *´艸`)

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― 新着の感想 ―
 ただ、それは中毒性があるんだよ。2人はその中毒性に呑まれた「行きの果て」のまだましな方に行き付いたって感じかな?  行きの果て   → たぶん、「行く果て」か「成れの果て」のどちらかでしょうか? …
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