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314.提案

「さて、最後の仕上げと行きましょうか」


 僕は、残った人たちに会議室内で座るように促した。


 本来、集まった目的は会社間の取引なのだ。


 ちょ〜と、途中で警察が来ることが予め解っていただけどね。


「し、仕上げと言うのは?」

「我々と未来創造の取引に関してです」

「は、はい」


 石川くんの父親は、かなり疲弊しているようだ。


 彼の顔からは悲壮感が漂っている。


「先程、提案した内容から選択して頂けるのでしょうか?」

「どれも選択に値しませんね。予定通り契約期間満了で終了です」

「な、何とか、ならないのですか。社員たちの生活を守らないといけないんです」


 社長としての覚悟は持っているようだ。


 だが、家で子どもたちの事は目に入っていないようだが。


「……今回の一件で有能な社員は自主的に退職するのではないでしょうか?」


 社長としての覚悟は持っているが、状況を読む力は無いようだ。


「自主的に辞める……?」

「警察が令状を持って来ての強制捜査をしたんです。有能な社員ならこの会社にはコン先が無いと判断するんじゃないですか」

「直ぐに……一斉に辞めてしまうのですか?」

「直ぐにとはいかないと思いますけどね。転職活動しながらこの会社から給与は受け取るでしょうね」


 逆を言えば、転職活動期間中こそが残ってもらうための交渉期間ともいえる。


「そ、そうですか……新入社員を募集しないと……」

「簡単には入らないでしょうね」


 テレビに報道されるのかは、現時点ではテレビ局の気まぐれになるだろう。


 だが、黒宮家に目を付けられれば別になるだろう。


 目を付けられれば一斉に、未来創造を袋叩きにするだろう。


「そこで提案ですけど……」


 簡単に潰してしまえばいいのかもしれない。


 だけど、そうすると石川くんと岡さん両親の子どもが大変な目に遭うのかもしれない。


 それに、社長としての覚悟を見せてくれた事と誠さんに激怒してくれたお礼も込めて微力だが力を貸してあげたいと思う。


 会社の経営を続けさせる事は出来ないが、存続させることはできるかもしれない。


「会社の経営権を黒宮家に譲るつもりはありますか?」

「経営権を……?」

「はい。買収されてスワングループ傘下に入りませんか?」

「それは、つまりはスワングループの傘下に入れば今まで通りのお付き合いは――」

「それは無理な相談ですね」


 傘下に入れば今まで通りの経営を約束するものではない。


「スワングループの傘下に入ったとして今まで通りなのは社員たちだけです。貴方達、経営陣は未来創造から去って貰うしかありません」

「そ、そんな……」

「当たり前ですよね。あれだけの不祥事を起こした責任を取らずに買収されても能々と会社の上層部に居座るなんて社員達からの求心力は0を超えますよ」


 当たり前だろう。


 今回の上層部の不祥事は隠せない。


 それからのスワングループから買収されるとなれば、誰もが不祥事が原因だと推測するだろう。


 その上で、経営陣が留任となれば社員達の不安は取れない。


「選んでください。自分達が経営陣に残って茨の道を進むのか。それとも、黒宮のブランドを借りて会社を残す代わりに自分達が経営陣から退くのか。どちらの可能性が高いかはあなた達が決めたらいいと思いますよ」


 会社としてのやり取りはここまででいいだろう。


「そこは、後々、返事を貰うとして。一旦、自分達のお子さんとの時間を大事にしてみてはいかがですか?」


 ここからは、少しばかりのお節介だ。


「返事は聞きません。今日の所は失礼します」


 それだけを言い残して、会議室を後にする。


 会社の前には、春樹さんの部下と思われる黒服さんが車を会社の玄関口に停めていた。


「詩季様。どうぞ」

「ありがとう」


 春樹さんが運転する方に、僕・羽衣・春乃さん・琴葉さんが乗り込みもう1台の方に、親たちが乗り込んだ。


「出してください」

「かしこまりました」


 未来創造の入るビルから車が発進した。


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