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303.放課後のお家

「いやぁ~~怒られたねぇ~~」

「だねぇ~~」

「……こっちは、笑いを堪えるので必死だったよ?」

「ねぇねぇ、陽翔くんも面白かったぁ~~?」

「詩季、どうにかしてくれ!」


 守谷先生からの呼び出しから解放されると、教室で待ってくれていた陽葵と陽翔くんと一緒に下校している。


「陽翔、春乃ちゃんに振られた?」

「振られてない!お仕事があるから一緒に帰れないって……その割に、詩季は余裕そうだが?」


 陽翔くんが、僕たちと一緒に下校して羽衣の餌食になっているのは、春乃さんがお仕事で急いで下校しているからだ。


「今回のお仕事というか従者間の食事会だからね。主人は参加不可なんだよ」


 春乃さんは、従者間の食事会があるので、早めに帰宅したようだ。


「それで、今日は午前で終了だしぃ~~2人は実家行くの?」


 羽衣からの問い合わせに、僕と陽葵はピクッとした。


「……その反応は、行くつもりだったなぁ~~」

「実家って、元々、住んでいた家なんだよな」

「そうだよぉ~~お母さんからホテル代わりに使ってもいいって言われてんの」

「……2人ともや――」

「そんなにしてないよ!」


 3月に実家のリフォーム後を見に行った時にした。


 それは、否定できない。


 だけど、それ以降はしていないのだ。


 だからこそ、陽葵が陽翔くんに強く否定した。


「ぜ、前回、してから期間空いたから……」

「んん~~陽葵ちゃんかわいい!」


 羽衣が、陽葵の頭を撫でていた。


 確かに、今の陽葵は可愛かった。


「陽翔くんは、ヤバいもの見た顔ですね」

「……妹のそういう顔みたら気まずくなるだろ」

「確かにそうだ」


 陽翔くんの気持ちは解った。


「……ていうか実家には行かないよ。今日、母さんお休みじゃん」

「確かにそうだ!」


 基本的に実家をお借りするのは、母さんがお仕事で家を空けるタイミングだ。


「お家で待っているじゃん」

「そうだった!」


 入学式に参列していた事からも、母さんはお休みなのだ。


「そろそろ、お家だね」

「今日も送ってくれてありがとうございます」

「またねぇ〜〜」


 陽葵と陽翔くんと別れて、羽衣が家の鍵をあけてお家に入る。


「ただいまぁ〜〜」

「おかえりぃ〜〜」


 母さんと祖父母が出迎えてくれた。


「2人とも入学式最高!」


 母さんは、親指を立てて褒めたたえてきた。


「先生に怒られたけどねぇ〜〜」

「そりゃ、怒るでしょ。式典で兄妹喧嘩したんだから」


 母さんは楽しそうだ。


「だって、先に、羽衣が喧嘩吹っかけて来たんだから僕は仕方がない!」

「あぁ〜〜逃げたなぁ〜〜こんにゃろ〜〜」


 僕と羽衣の様子を遠目に見ている、母さんと祖父母は何処か安心している様子だ。


「1年掛かったね」

「……1年?」


 静ばぁの言葉に、僕は耳を傾けた。


 彼女が何を言いたいのか解らなかった。


「1年だよ。羽衣ちゃんや詩季の周りの人達のお陰で1年で済んだと思う」


 静ばぁの言うことに、母さんはしんみりと頷くだけだった。


「私の家に来てから、小学生の頃の明るい詩季に戻るまでに1年掛かったんだよね」

「1年ねぇ〜〜中等部の頃は1年が長く感じたけど、高等部に上がってからは早く感じたな」


 静ばぁからの1年と聞いて、これまでの1年を思い出したが、楽しい思い出が沢山残っている。


「だからさ、これからも詩季が穏やかに過ごして欲しいと思うのよね」


 静ばぁからは、何かを止めたい意図があるような言い方だ。


「止めはしないけど、深入りはしないでね」


 主語は出ていないが、父親との事を心配しているのだろう。


「大丈夫。もうすぐ、終わると思うよ」



〇〇〇



「どうだった?いい情報仕入れられた?」


 自室で、春乃さんに黒宮家支給のスマホで電話をしている。


『礼状を請求しての強制捜査を行う予定だってさ。ゴールデンウィーク前に動くみたい』

「従者の食事会って、かなり濃いめの情報流れんの?」

『この情報は、松本先輩が調べてくれたもの』

「納得」

『何か、貶されてない?』

「そんな事ないよぉ〜〜」


 春乃さんの機嫌も取っておかないと、大変な目にあうので、ギリギリのラインを攻める。


「松本先輩元気そうだった?」

『元気だったよ。従者として仕える相手が居ないからのんびり大学生活送るって』

「その割に、調査には協力してくれるんだね」

『そりゃ、一応は、詩季様の主人になる予定だったんだから』


 黒宮支給のスマホを使っての会話なので、名前の呼び方は様呼びだ。


「じゃ、そろそろ動きましょうか。高梨葉月と高梨琴葉が避難しているホテルで、最後の打ち合わせといきましょうか」

『かしこまりました。アポイントは、私が行います』

「よろしく〜〜」


 そう言って、通話を切った。


 それから数テンポおいてプライベート用のスマホが鳴った。


『それで、誰、呼ぶん?』


 先程とは変わって馴れ馴れしく話している。


 プライベート用のスマホなので、こういう話し方になる。


「高梨母娘と僕と羽衣と母さんでいいと思うよ」

『了解』


 誰を呼ぶかの打ち合わせは、プライベート用のスマホでした。


『盗聴されてんのかな?』

「盗聴とは言えないと思うよ。黒宮家からお仕事用のスマホとして支給されているんだから。どのように使用しているかの検閲する権利は向こうが持っていからね」

『まぁ、詩季くんに何か考えがあるんだもんね』

「そうでぇ〜す」



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