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301.羽衣入学

 生徒会は入学式の間は、校長先生や教師たちが着席している席に座ることになっている。


「新入生が入場します」


 アナウンスがあったので、体育館の入り口が開いて新入生が入ってくる。


 羽衣が所属している1組から入場してきた。


 入口付近を見てみると祖父母と母さんが居た。


 新入生代表の挨拶を務める羽衣は、着席後に移動がしやすいように出席番号を無視して先頭に立っている。


 担任の女性教師の後ろを凛々しく歩いている羽衣。


 僕が座っている席は、1年1組の先頭が座る席だ。


 羽衣が自分の座る席に向かって歩いて来る。


 僕の顔を見つけた羽衣は、嬉しそうにニコッと笑った。


 僕は拍手をしながら顔をプイとして「真面目にしろ」と伝える。


「1組着席」


 どんどんとクラスが入場して着席していく。


 僕の発破が聞いたのか羽衣は、真面目に入学式を受けていた。


 ただ、退屈すではあるが。


「新入生代表の挨拶。新入生代表、白村羽衣さん」

「はい!」


 名前を呼ばれた羽衣が立ち上がり、壇上に移動を開始した。


「白村って……生徒会長と同姓だよな?」

「生徒会長って、妹居たっけ?」


 在校生が少しざわついている。


「ご静粛に」


 司会の先生が、騒めいている生徒を止めた。


 壇上に上がる前に生徒会と教師陣が座っている席に一礼してから上った。


 壇上に登ると全校生徒に向かって式辞の紙を開いた。


 保護者席を見ると母さんがカメラを構えていた。


 昨年の僕の手前、カメラ撮影は遠慮するつもりだったようだが、僕自身も羽衣の挨拶の姿を残して起きたい(家庭に)と思ったので、撮影をお願いした。


「新入生代表挨拶。新入生代表白村羽衣――」


 羽衣は、最初に名乗った。


 基本的に最後に持ってくる物を最初に持ってくる辺り何かしらのしたい演出があるのだろう。


 羽衣は、そこからは新入生代表挨拶の定型文を感情を込めて読んでいった。


 名乗りを最初にするイレギュラー以外は、通常通りに進んでいる。


 在校生徒からは、


「あんなに可愛い子中等部に居たか?」

「高等部入学組じゃね?」


 とヒソヒソ話が聞こえていた。


 羽衣は、昨年の2学期からの転入なので実質的には高等部入学組に近いだろう。


 だが、実際は中等部からのエスカレーター進学組だ。


 まぁ、残念な事にアタックしたところで振られるのは目に見えている。


 既に、彼氏の席は埋まっているのだから。


「――さて、挨拶の最後になりますが――」


 羽衣の挨拶は最後の締めに入るようだ。


「――昨年度の最後に、我が兄が高等部でおもし……ゴホン。ゴホン。我が兄であり生徒会長の白村詩季が、お世話になっております――」


 バカ妹め。


 最後にこれを仕込んでやがったな。


 しかも、うっかりなのかわざとなのか素で話そうとしやがった。


「――私も尊敬出来る兄の背中を追って高等部生活を邁進して行きたいと思います。ご清聴ありがとうございます」


 羽衣の新入生代表挨拶が終わると、体育館中に拍手が響き渡った。


 僕としては、妹から喧嘩を売られた気分だ。


 自分の席に戻っている羽衣が、僕の方を向いてニコッと笑った。


 これで、確信を持った。


「続きまして、在校生代表の挨拶。生徒会長白村詩季」

「はい」


 僕が呼ばれた。


 僕の脚の事があるので、例年なら学校長が座る1番端に座っていたので、すんなりと立ち上がる。


 僕の移動のサポートは、同じ生徒会の春乃さんだ。


 昨年は、事前に舞台袖に待機しいたが、今回は呼ばれてからの移動にした。


 ただ、移動ルートは、壇上への階段の段差が緩やかな舞台袖を使う。


 全校生徒の前に立つと、舞台袖に待機していた女性の先生が、マイクと吹奏楽部が使う譜面台を持ってきてくれた。


 春乃さんに、挨拶の内容を書いた紙を譜面台に置いてもらって挨拶を開始する。


「新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。在校生代表の挨拶を行わせて頂きます生徒会長の白村詩季です――」


 喧嘩を売られたら買うまでだ、壇上での兄妹喧嘩といこうではないか。


 羽衣が、最初に波を起こして最後に回収したのであれば、同じ手を使うまでだ。


 元々の予定の文章からは、大分変わってしまうが、まぁいい。


 後々、式辞文を確認する先生方が頭を抱えるだろうが。


「――先程、私の妹が新入生代表の挨拶の際に、偉大な!私の背中を追うとの事ですので、兄として頑張らないといけないと思う次第であります――」


 確実に、守谷先生と羽衣の担任の先生は、頭を抱える案件になってしまった。


 後ろの方では、母さんがお腹を抱えて笑っているのが見える。


「――ので、妹には、生徒会の雑務係として働いてもらおうかと思っております。あぁ、ついでに妹にアタックしようかと考えている人達。妹には想い人居るから諦めな。これで、代表挨拶を終わります」


 僕は、挨拶を終えて舞台から降りる。


 生徒会担当の守谷先生は、席の後方で頭を抱えていた。


 1年1組の羽衣は、苦渋を味わっていた。


「続きまして、校歌の斉唱――」


 そこから、式典が進み出した。


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