298.下校道
『 (白村詩季) 羽衣~~あなたにお客さん来るから家に居て欲しいんだけど?』
『 (羽衣さま(笑)) 私に?誰さぁ?』
琴葉さんを家に招待するにしても張本人の羽衣の許可を取っていなかった。
終わりのホームルームを終えてから琴葉さんの帰る準備が整うのを待っている。
何時も通り、家のまでは陽葵も一緒に下校してくれる。
『 (白村詩季) 琴葉さん。羽衣とお話したいんだって』
『 (羽衣さま(笑)) ……そっか。会うよ。』
『 (白村詩季) 大丈夫?』
『 (羽衣さま(笑)) 1度も話さずに嫌うのは違うかなって』
『 (白村詩季) わかった』
羽衣の許可ももらえたので、琴葉さんを家に連れて行く。
「ごめん。待ったよね」
「大丈夫。この時間で、羽衣にアポ取りしたから。会ってくれるって」
「……そっか。よかった」
3人で学校を後にした。
「羽衣ちゃん……なんて言ってた?」
「1度も話さずに嫌うのは違うって」
「羽衣ちゃんらしいなぁ~~しっかりと話さないとな」
琴葉さんにとって、羽衣と姉妹のように仲が良かった時の事を思い出していそうだ。
交際していた時は、羽衣ちゃんが義妹になった時の事をよく考えていたっけ。
「陽葵ちゃんとは仲良いの?」
「……いい意味で性格が似ているので波長が合うんでしょう。物凄く仲がいいです」
スマホを操作して、羽衣と陽葵のツーショットを後方で付いてきている琴葉さんに見せた。
「仲良さそう」
「……お陰様で手綱を握らないといけない人物が増えましたけどね」
「うふふ。詩季と羽衣ちゃんは、変わらないんだね。それに、陽葵ちゃんも詩季の事が大好きなんだなぁ~~って」
「……琴葉さん。痛かったのでナイスアシストです」
「手綱を握らないといけない人物が増え――」辺りで、陽葵から脇腹を抓られていた。
嫉妬なのか僕の言い方が悪かったのか、何時もより強かったと思う。
陽葵は頬を赤らめながら僕の左手を取って手を繋いだ。
「仲良しだねぇ~~ナチュラルに手を繋いでぇ~~」
「うぅ~~」
陽葵は琴葉さんからの攻めに押され続けている。
「ねぇ、琴葉さん押しが強いんだけど!!」
押しに負けた陽葵が、僕に助けを求めてきた。
だけど、助けずに放置しようと思う。
「いやぁ~~琴葉さんの素はこれだよ。中等部の時におかしくなったけどね」
「そうなのぉ~~」
「だから我慢して?」
「よろしくね?陽葵ちゃん!」
琴葉さんは自分の素をさらけ出すことにしたようだ。
「こっちの道……懐かしい」
琴葉さんは、僕の家までの道のりに懐かしさを感じている。
「この前通ったでしょ?」
「あの時はさぁ。周りを見ている余裕がなかったからさ」
「あの時……」
「お風呂も入らずに探してたからさ。制服も汚れてたよね」
綺麗好きな琴葉さんが、1日でもお風呂に入っていないような感じで汚れていた事に驚いた。
だからこそ、緊急性の高い事案だと思った。
「まさか、インフルエンザで体調最悪のタイミングで来るとは思いませんでしたけど」
「そ、それは、ごめんて……」
「あはは。解ってるって。離れていたんだしこっちの状況は解らないよね」
少しばかり、琴葉さんをいじってみた。
比較的仲の良かった中等部時代のように接する事が出来ているのは、いい傾向だと思う。
「……大分、歩くスピード早くなったよね?」
「琴葉ちゃんもそう思う?」
「う、うん。前回は、1年の時の調べ学習の時だったし……その時に比べると格段に早くなったと思う」
琴葉さんてきには、僕に尋ねたつもりなのだろうが、陽葵が食い付いて来た事に驚いているようだ。
「ずっと一緒に居てね、段々と下校に掛かる時間は減っているなぁ〜〜とは思っていたけど、別の人からの感想を貰えると詩季が回復しているんだなぁ〜〜って」
「……何気に惚気けてない?」
「そこも可愛いでしょ?」
「彼氏も彼氏か!」
琴葉さんは、ニコニコとしている。
何だか嬉しそうだ。
「ねぇ、私からも琴葉ちゃんに1つだけ聞いてもいい?」
「うん。何でも聞いて」
「今も詩季の事好きなの?」
「好き」
琴葉さんは、即答したり
陽葵から問い掛けている手前、現時点で怒ったりはしていない。
「勘違いして欲しくないから付け足し。昔は、陽葵ちゃんと同様に異性として好きだった。だけど、今は1人の人間として尊敬の念を抱いているかな。だから、昔の私も今の私も、好きな人が幸せになって良かったなぁって思う」
年齢的な未熟さが本来あるべき人の特性を消してしまう事は思春期の僕たちには起こり得る可能性だ。
琴葉さんは、本来は物分りのいい女の子だった。
だけど、中等部はそれを失っていた。
今は、戻っているとも言える。
「そっか。仲良く出来そう」
「改めて、よろしく」
陽葵にとっても、引っかかっていた問題を解決出来たようで、一安心な様子だ。
「琴葉さん。着きましたよ」
「う、うん」
「詩季、また明日」
「はい」
琴葉さんから物凄い緊張感を感じる。
「じゃ、インターフォン鳴らすね」
「う、うん」
ピンポーン♪
「おかえりぃ〜〜って」
「お久しぶりです」




