表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
284/326

284.委ねる

「どうだった?新しいお家は」

「エレベーターの維持費用がどれぐらい掛かるか心配だね」

「えらい。現実的だね……そこら辺は、お家を譲る際に定期点検とかの方法とかも教えるから」

「そこはよろしく!」


 母親曰く、エレベーター購入の際に、定期点検等々で費用が掛からない契約にしているとの事。


 また、エレベーターでの不調があった際には、契約の範囲内なら無償で修理してくれる契約だそうだ。


「私が出来たのはここまでだったな。詩季には、維持に関する負担は出ちゃうけど、金銭的な負担は出ないようにするから」

「……ありがとう」


 今回の改修の1番の目玉であるエレベーターに関して、かなりのお金を使っていそうだ。


 そして、黒宮家の人脈も。


「一応、決めたことだけど」

「うん」

「父親との一件が落ち着いたら祖父母のお家からこっちに戻ろうと思う」


 言ったことがあるのかないのか覚えてはいない。


 だけど、この家を見た上で、改めて決めた。


「うん。嬉しいなぁ。また、詩季と羽衣と一緒に暮らせる」


 母さんは、涙目になっていた。


 母さんがこの1年色々と頑張っていたのは見ていたら解る。


 毎週土曜日の面会の日に、僕と羽衣から1週間の出来事を聞く際の母さんの表情は、とても幸せそうだった。


 僕は、気恥しい所もあって素っ気なく話しても幸せそうだった。


 幸の字から上の1本の横線を抜くと辛いになる。


 母さんにとっての1本の横線が僕達だったのだろうと思わされた。


「でも、戻ってもいいの?陽葵ちゃんのお迎えが無くなるんでしょ?家の距離的に」

「まだ、陽葵とは結婚してない。家族でないんだもん。家族第一だよ。それに、陽葵と結婚したら毎日一緒に居られる訳じゃん。なら、今は家族との時間を大事にしないと、将来、絶対に後悔すると思うから」


 家族第一。


 陽葵とは恋人になったが、まだ、結婚して家族になった訳では無い。


 だからこそ、今は、家族との時間を大事にだ。


「それで、聡との決着は何処でつけるの?」

「母さんは、どうしたいかあるの?」

「一度は、愛した人間だからね。情がないと言ったら嘘になる。ただ、2人の事を軽視した事は許せない」


 母さんは母さんなりの複雑な気持ちを持っているようだ。


「……僕の見立てでは、今年中に、未来創造は独立した経営が不可能になると思っています。それは、スワングループもとい黒宮家との関わりが無くなる前。会社単体で」


 未来創造は、そう長くは続かない。


 警察の捜査協力を拒否した事により、警察はさらに本腰を入れて捜査するだろう。


「誠は逮捕されるのかな?」

「されるでしょ。しかも、証拠を隠そうとした悪質性もあります。今は、捜査の協力依頼をしていないと聞きます」

「ってことは……」


 母さんは、1つの道筋を察した。


 ここにおいては、2つの分岐がある。


 1つは、自分たちの罪が無かったと警察が判断した事で、捜査の協力依頼が無くなった事。


 2つ目は……


「多分、アイツらの事だからもう警察は来ないと思い込んで黒宮家との関係改善の作戦会議してそうだけどね」

「でしょうね。警察が本気を出すなら裁判所に令状取って妨害すれば逮捕出来るようにすると言うのに」


 再三の捜査協力を拒否したのだ。


 証拠隠滅の恐れありと判断して、更なる捜査をした上で、裁判所に捜索令状を取る。


「まぁ、証拠を隠そうにも物的証拠は琴葉さんが避難する際に、持ち出したみたいですからね」

「となると?」

「恐らく、警察が先手を打っているでしょう」


 ちょっとばかし話が逸れてしまった。


「それで、母さんは何を目的としているの?」

「詩季の判断に委ねてもいい?」

「僕の判断?」

「母親として情けない事を言っているのは解っている。だけどね、どうしても情が入っちゃうんだ。本当なら弁護士を入れないといけない状況なのに、弁護士を雇っていない。本当なら葉月がするようにしないといけないのに」


 蟠りがあったであろう母さんと葉月さんが、直ぐに打ち解けていた内側には、こう言った事情があったのだろう。


 母さんだって1人の人だ。


「解った。その代わりに、弁護士の先生とはお話しといてね」

「解った」


 母さんの頼みを受け入れる事にする。


 僕が父親の事に関して動いているので、最初から、実質的に僕が判断する権利を有しているとも言える。


 それが、表面化したということだ。


「詩季にぃは、何か悩んでいる事でもあるでしょ?」

「……羽衣?」

「そうだなぁ〜〜多分、陽葵ちゃんとの喧嘩でしょ?」


 羽衣には、隠し事が出来ないかもしれない。


「バレてた?」

「そりゃ〜〜ねぇ〜〜陽葵ちゃんと2人の時は、楽しさが勝っているけど、別れた時に今まで以上に寂しそうじゃん?」

「まぁ、そうだね。ちょっと、自分の【過ち】に関して、どうしたものかと悩んでる」


 陽葵に対してしてしまった過ち。


 それは、親が子どもを躾をする際によく使われる言葉を自分がしてしまったからだ。


「今、相談に乗ろうか?」


 羽衣から願い出は心強い。


 だけど、僕としても過去とぶつかる時でもあると思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ