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280.ハプニング

「春乃。一緒に帰れる?」


 突然のアポイントを取る。


 帰る準備をしていた春乃は、ビックリしていた。


「……何か用事でもあったか?」


 春乃からの返事がなかったので、用事が入っていると思った。


 彼女の実家は、詩季の実家との大きな付き合いもある。


 だから、直前のアポ取りは受けてもらえない可能性はある。


 事前に黒宮家関係の予定があれば、そちらが優先になってしまう。


「無いよ」

「じゃ、一緒に帰ろうか」

「うん」


 春乃の帰宅の準備が終了するのを待って、一緒に帰ることにする。


「学年末テストどうだった?」

「いつも通りだったよ」


 学年末テストは、5位だった。


「春乃は安定の2位だったな」

「んぅ~~1位の人が強敵過ぎるんだよぉ~~」


 1年生の全てのテストにおいて詩季は首席を維持した。


 1回だけ2位との点数差がギリギリになったが、それ以外は2位との点数差も大きく離していた。


「……でも、藤宮だと詩季でもトップから数えても真ん中辺りだって言うからな」


 兵庫県内の私立において、桜宮は2番手扱いだ。


 1番手は藤宮だ。


「だよね。藤宮はどんなに怖い所なんだろう」

「怖いというか……かなりの実力主義だとも言うしな」


 藤宮に関しての噂話程度にしか聞いてこない。


「藤宮の生徒会とは生徒会で交流あるけど……雰囲気はヤバいよ。生徒会長は不在だったんだけどね」


 春乃の話を聞くに、藤宮の生徒会も生徒会長を選挙で選んでその他の役員は会長の任命らしい。


 まぁ、この桜宮の生徒会の方式は藤宮の方式をパクっただけだ。


「……そっか。怖いのか」

「怖いよ。生徒会長選挙も自分の内申のために特定の候補を応援するのにも熱が入るみたいだよ。まるで、実際の選挙の裏側が学校内で行われているみたいだって」


 実際問題、政治家の中には藤宮高校 → 藤ノ宮大学 の学歴の兵庫県選出の県議・市議・国会議員もいる。


「その中で、柏木会長は詩季くんと同様に1年生から生徒会長を務めていて現在2期目。すごいよね」

「……俺は会ってことないけど、すごい人なんだよな」

「すごいよ。私としては……これは、勘違いされるな。私の仕事的に気になる人でもある。これは、詩季くんも同様かな」


 俺が勘違いしないように言い返してくれた。


 春乃と詩季は、柏木倖白の事を黒宮家として気になっているようだ。


 それは、いい。


 もうすぐ、学校近くの最寄り駅に着いてしまう。


「は、春乃。少し、いいか」

「どうしたの?」

「か、カラオケ……行かない?」

「いいよ?」


 ただ、ホワイトデーのお返しのチョコを渡して、告白をしようと思っていただけだ。


 駅前で手渡して気持ちを伝えてその日は退散という選択肢もあった。


 けど、思い出には残らないと思った。


 そして、その代案として思いついたのがカラオケだ。


 咄嗟に思いついたと言えど、カラオケで告白は大丈夫なのかと考える。


 しかし、ここで思い出すのは詩季が言っていたことだ。


「久しぶりのカラオケだぁ〜〜先、歌う?」


 ブースに入ると、春乃は2つあるマイクを片方を俺に渡して残り1つを自分で持った。


「お先、どうぞ」


 そこから、お互いに交互に歌っていく。


 それと同時にどうやってお返しを渡そうかと考える。


 詩季にアドバイスを貰おうかとも考えたが、「ここまできてひよりますか?」と言われるだけだと思った。


 それに、「後は、ぶつかるだけじゃありませんか?」とも言われるだろう。


「――しゃぁ〜〜いい点数!次、陽翔くんね」

「は、春乃!」


 俺は、春乃を呼んだ。


 カラオケに入ったのだから、きざにラブソングを歌いながら告白をするのも1つだと思った。


 だけど、緊張していたし、俺のキャラには合わない思った。


「は、春乃――」


 カラン♪コロン♪


「きゃぁ!」

「ご、ごめん!」


 俺は、勢い余って飲み物をこぼしてしまった。


 溢れた飲み物は、春乃のスカートを濡らしてしまった。


「ご、ごめん!」

「大丈夫!ちょっと、手提げ袋取ってくれる?」

「う、うん」


 俺は、近くに置いてあった手提げ袋を春乃に手渡した。


「タオル、タオル〜〜あった!」


 春乃は、タオルを取り出してスカートを吹き出した。


 スカートを吹き終えると、スカートの中まで吹き出した。


「は、春乃。俺が居る」

「スパッツの上からタイツ履いているから平気だよ?」

「で、でも〜〜」

「それに、スパッツなら詩季くんに見られたことあるし……陽翔くんなら平気だよ?」

「そ、そうだけどぉ〜〜」


 無警戒に俺がいる前で、スカートを捲っている春乃にジュースをこぼしてしまった罪悪感は、消えてドキドキが勝っている。


「う〜ん。気持ち悪いなぁ〜〜下長ジャージ履いて上にジャージ羽織ればいいか」

「お、俺は外に出てるから――」

「こっち見てドアのガラス部分にたってくれない?」


 部屋の外でも良いのでないかと思うが、春乃の行動にパニックになっている俺は、素直に従って、ドアのガラス部分にたって、スカートを脱いで長ジャージを履く春乃を見るのだった。


「ふぅ〜〜陽翔くん。ありがとう」

「い、いや、元はと言えば、俺が悪いんだし……」

「気にしない!気にしない!それに、私の着替えシーン見れたのはラッキースケベでしょ?」

「そ、そんな事は――」

「本当は?」

「……嬉しいです」


 何だろ。


 春乃から陽葵のような……いや、羽衣ちゃんみたいな雰囲気を感じる。


「それにしても、陽葵ちゃんは告白される時に、パンツ見られて、私は着替えか。うふふ」


 春乃は何だか楽しそうだ。


「ねぇ、陽翔くん。さっきの……聞いてもいい?」


 あぁ、やっぱり詩季をサポートしている女の子だ。


 俺が何をしようとしているのかを察してくれたのだ。


 俺があまりにも緊張している物だから、1つのハプニングを上手に利用して緊張を解してくれたのだろう。


「こ、これ、バレンタインのお返し。そ、それと、春乃の事が好きです。お付き合いしてください」

「喜んで!」


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