279.ホワイトデーのお返し
「バレンタインありがとうぅ〜〜お返し!」
「わぁ〜〜ありがとう」
3月14日。
ホワイトデーだ。
バレンタインにチョコをもらった男子達がくれた女子にタイミングを見計らって、お返しの品を手渡している。
中には、カップルが成立している組もある。
「なぁ〜〜どうやって、渡したら喜んで貰えかなぁ〜〜」
お昼休み、陽翔くんが僕と瑛太くんを食堂に拉致してきた。
「そんなの、ありがとうって渡せばいいんじゃね?」
「簡単に言うなよぉ〜〜」
陽翔くんは、一生懸命お返しの品を選んで買うまでは完了している。
ただ、買った品がかっこつけ過ぎていないかだとか、どうやって渡すべきかを決めきれずに、僕達に相談してきている。
「瑛太くん。陽翔くんは、春乃さんから本命チョコと言われたので、どう返したらいいかを悩んでいるのだと思います」
「……んなもん、嫌なら嫌と言って渡せば良くない?」
「そう思うでしょ?だけど、陽翔と書いてへたれとも呼べる位ですよ」
「だな」
瑛太くんと共感した。
まぁ、告白する勇気が中々湧いて来ないと言うか怖いと思う気持ちは痛いほどわかる。
「本命チョコ貰ったんだから。友人のままがいいならそう伝えらたいいと思います。ただ、これは振ると同義に聞こえるかもしれないので、言い方にはご注意ください」
「う、うん」
「ただ、陽翔くんとしては、気持ちは固まっているのでしょ?」
「うん」
気持ちが固まっているなら、後は動くだけだ。
「別に、完璧に告白する必要はないと思いますよ。失敗しようが、それがいい思い出になるんですよ。お互いに想い合っていたら」
今思うと、僕が陽葵に告白したのは、体育祭が終わって陽葵のパンツを見た後だった。
「そ、そうなのかな」
「そうですよ。僕が陽葵に告白したのって体育祭終わった後に僕の家でこちょこちょ遊びして陽葵のスポーツ用パンツを見た後ですよ?」
「ぶっゴホッゴホッ」
お水を飲んでいた瑛太くんが吹いてしまった。
「瑛太くん。汚い」
「お前のせいだろうが!」
瑛太くんからの抗議は無視をして、僕は陽翔くんと瑛太くんに手を差し出した。
「「何だ??」」
2人とも頭を傾けて見てきている。
「バレンタインデーに、羽衣からチョコ貰ったでしょ?そのお返しを今貰います」
「「何で??」」
「いや、羽衣から回収するように言われててさ」
2人は目を見合せて、笑っていた。
「やっぱり、羽衣ちゃんの性格的に言うと思ったよ!」
「陽翔のアドバイス通り用意しといて良かった」
陽翔くんと瑛太くんは、チョコを手渡してきた。
「ありがと。わざわざ、準備してくれて」
「いや、あの子の性格なら有り得そうかなぁ〜〜と。陽葵もお返し要求してたからな」
「確かに」
「2人は性格も近いですからね」
3人で女性陣の話になった。
「でも、陽翔も大変だよな。陽葵に羽衣ちゃんから遊ばれるなんて」
「俺も何故そうなったかわかんねぇよ」
「羽衣曰く、僕をイジる場合、やり過ぎると手刀が来るけど、陽翔くんだとそれが無いから安心らしいですよ?」
「んだよ、それ」
「あと、面白い人という認識みたいですよ?」
「何処が面白いんだよ!」
陽翔くんは、羽衣に苦手意識があるようだ。
逆に、羽衣からは面白い人扱い受けているが。
「そうそう。陽翔くん。これを陽菜ちゃんに」
僕は陽翔くんに、陽菜ちゃんから貰ったチョコのお礼を手渡した。
元々、陽菜ちゃんが陽翔くんに託していたがうっかり忘れたのを陽葵に託していたのだ。
陽翔くんの面目を保つためにも、陽翔くん経由で陽菜ちゃんに渡す方がいいだろう。
「陽菜ちゃんは詩季とは仲良いのか?」
「仲良いもなにも、大好きだよ。詩季のこと。自分の命を助けてくれた人だからな」
陽菜ちゃんの好きは、異性としての好きではないだろう。
陽葵とお付き合いを始めた事を陽菜ちゃんに報告すると歓迎されたし。
〇〇〇
1日の学校生活が終わった。
「春乃さん。帰るまでに、バレンタインのお返しです。奈々さんも」
「ありがとぉ〜〜」
春乃さんと奈々さんに、バレンタインの友チョコのお返しをする。
「じゃ、陽葵帰ろ」
「うん!」
陽葵と2人で帰る。
「今日も疲れたね」
「色々とねぇ〜〜生徒会は、あとは文化祭をのらりくらりして終わりだからねぇ〜〜」
陽葵と一緒に帰って、僕の家が近くなったタイミングで、紙袋から綺麗に包装した箱を渡す。
「陽葵。バレンタインのお返し」
「わぁ~~ありがとう……って、めっちゃ手こんでない?」
「羽衣とかにも手伝ってもらいましたから。オランジェットです」
「私も知っているけど……大変じゃない?」
立てない分は大変だったが、作る分には楽しかった。
「1人で料理は出来ないので、家族に手伝ってもらいましたから……楽しかったですよ」
「そっか!」
陽葵は嬉しそうな表情になっている。
「嬉しそうな表情をしてくれると嬉しいです」
「本当に嬉しいんだもん♪」
僕が家に着くまで陽葵はご機嫌だった。




