274.写真
翌朝。
僕はいつも通りの時間に目が覚めた。
学校がある日は、僕の同じ時間に目覚めているという陽葵。
だけど、土日とかのお休みは遅めまで寝るみたいだ。
ブー♪
『 (羽衣) 今日は、9時半には帰るから。後片付けとかはそれまでに済ませてね』
羽衣にはバレているのだろう。
と言うか、陽葵のお泊りに関しても羽衣や祖父母の協力があって出来ているので、僕と陽葵がお泊りをする=Hをすると思われているのだろう。
まぁ、実際にそうなんだから言い返せない。
羽衣にはスタンプだけ送った。
6時に起きた。
隣には産れたままの姿で寝ている陽葵が見える。
もうちょっと寝顔を見ていたい所だ。
後片付けに関しては、脱ぎ捨てた服以外は寝る前に終わらせているので問題はない。
だから、もうちょっと陽葵の寝顔を見ていたい。
だけど、裸体と言うのが問題だ。
その気になってしまえば、間違いなく9時半を超えてしまう。それに、昨晩で前回の残りを使い切り羽衣から返されたのを開封しているのだ。
スマホを取り出して、陽葵の寝顔を撮る。
陽葵の裸体が映らないように首から上だけを撮る。
陽葵の頬をツンツンとつつく。
「うん~~」
陽葵は眠そうに目を覚ました。
「陽葵、おはよ。起こしてごめん」
「うぅん」
陽葵は眠そうに目をこすりながら、僕の事を見てくれている。
隠すところは隠していないでいる辺り、僕の事を信頼してくれていると感じている。
「陽葵。ごめん」
「どうしたの?」
「陽葵の寝顔の写真欲しくて、撮った」
隠してはダメだと思ったので正直に自白する。
「別にいいけど……何で報告?」
陽葵的には報告しなくてもいいみたいだ。
だけど……
「そ、その……」
僕はスマホを操作して陽葵に撮った写真を見せた。
陽葵は怒るどころか頭を傾けていた。
「そ、その、首から上を撮ったけど……陽葵、裸だし。嫌だったら消すから」
「全然いいよ?配慮してくれてるし。なんなら、首から下も」
「そ、そういう事言わない!」
陽葵は笑いながらハグをして耳元で「詩季なら自分だけで見るでしょ?撮っていいよ」とつぶやいてきて、ハグをやめて僕に自分の――
〇〇〇
「よし!着替え完了!」
陽葵は、昨日学校に着て行った制服に着替えてスカートの中に手を入れてのシャツ直しを終えて僕の方を見た。
「……パンツでもするんだね」
「それ以上の見てるじゃん?」
「そうだけどさ――」
「何回も言うけど、詩季だから見られもいいの。他の男の子に前ではしないし」
ナチュラルに一緒の着替えた。
「朝ごはん作るね」
「羽衣達は9時半に帰ってくるから昼食は大丈夫」
「おぉ~~今回は早いね」
オムレツなどの洋風の朝食を手早く準備してくれた。
「多分さ。大詰めんでしょ?そろそろ」
陽葵は、僕がしている事に対して聞いてきた。
基本的に、僕が動いていることに陽葵は、気になっているようだが、聞いては来なかった。
「だね。大詰め。向こう側がどう動くかだよ。友人を取るのか。家族を取るのか」
人として何事にも順位がある。
僕と羽衣が恋人より家族優先のようにだ。
母さんが父親に怒っているのは、家族よりも友人を優先するような素振りをませたからだ。
「もしさ、詩季が辛いなぁ〜〜って時は抱え込まないでね。話してね」
「うん」
「私達が出来るのはこれぐらいだし。他人の家庭に首突っ込めないしね」
「ありがと」
陽葵は、僕が辛くなった時の逃げ道を用意してくれているように思える。
それと同時に抱え込まないように警告を出されているろうだ。
「詩季が私と一緒に居ることで落ち着けるなら一緒に居るから」
「うん。これからも一緒に居て欲しい」
「わかった」
朝食を食べ終えて食器の後片付けを陽葵がしてくれている。
「ただいまぁ〜〜」
9時半になる直前に羽衣と祖父母が帰ってきた。
「おかえり」
「陽葵ちゃん。おはよぉ〜〜」
「羽衣ちゃん。おはよ」
陽葵と羽衣は、おはようのハイタッチをしていた。
「昨晩はどうだったぁ〜〜?」
祖父母が自室に荷物を置きに階段を登って行ったのを確認して羽衣が、陽葵に尋ねていた。
「う、うん。楽しかったよ?」
陽葵は頬を真っ赤なしながら、答えていた。
陽葵の照れている姿は本当に可愛い。
カシャ♪
ミスった。
こっそりと照れている顔を撮るつもりがシャッター音を鳴らしてしまった。
「あぁ〜〜盗撮だぁ〜〜彼女が可愛いからって盗撮したぁ〜〜」
そして、これは羽衣にとっても格好の燃料だった。
羽衣からいいネタを見つけたワクワクした雰囲気が漂っている。
こうなった時の羽衣は、本当に面倒臭いのだ。
手刀では止められないのだ。
「良いじゃん。彼女の可愛い姿は保存しておきたいの」
例の写真は撮影後に、早急に別のファイルに移した事はいい判断だったと痛感させられる。
「羽衣ちゃん。私は嫌じゃないよ?」
「いやぁ〜〜それは別にいいの。詩季にぃをイジめるいいネタを見つけたからねぇ〜〜」
羽衣にこのまま好き放題させられる訳にはいかない。
僕はスマホを操作してとある連絡先にとある写真を送信した。
「羽衣。これ見てみなよ」
「なんだぁ〜い……んなぁ!!」
羽衣は、目を見開いていた。
そんな羽衣の表情を見て、僕は腹黒く笑くのであった。
「ちょっと、何て写真送ってくれてんのさぁ!見る前に取り消してよぉ〜〜」
「ヤダ!」
ケニーくんに、リビングのソファでヨダレを垂らしてオッサンのように眠る羽衣の写真を送ったのだった。
時差の関係で既読はつかないが……
仕返しには十分だろう。




