267.計算通り
「全ては計算通りでしたか?」
「うん。色々と助言は貰ったけど」
生徒会からの帰り道。
春乃さんと一緒に帰宅している。
「あの場で詩季くんがあの事を話していれば、テレビで大きく大々的に報じられると言っていたけど、本当なの?」
「本当だよ。その筋の人から情報得たから」
「この前、電話していた人?」
「そそ。その人曰く、今は、情報を温めている時。爆弾の導火線に火をつける出来事が起こるのを待っている段階だってね」
生徒総会で僕が話せば、体育館内が殺伐とした様相になるのは、以前の奈々さんの事で明らかだ。
殺伐となれば、それを見ていた一部の生徒から情報が伝わっていくだろう。
それに、藤宮高校には及ばないが、まぁまぁの名門校だうちは。
それなりの職業の子どもも通っている。
それとなく情報は得るだろう。
「やっぱり、楽しいわ」
「それ、陽翔くん。がっかりしない?」
「いやぁ〜〜陽翔くんも楽しんでいる節はあるよ。デートの時でも、次、詩季くんが何をするかで盛り上がってんもん」
「どんな話題ですか……」
僕自身少々のドン引きを見せる。
「でもさぁ〜〜壇上だと面白いよね」
「何が?」
「今回とかは無いけど、居眠りしている人とかよく見える!」
「確かに。よく見えるよね。クビをカクカクしているのとか。見ていて、笑いそうになるよ」
先生が教卓から教室を見た時に、内職や居眠りが良くわかると言う意味が解った。
「それに、体操座りするから女の子スカートの中とかね。主に、短パン――イダァい!」
春乃さんから思い切り強い手刀をお見舞いされた。
「主人に手刀するとは、如何なものか!」
「女の子に対してそういう事言うんじゃありません!私みたいに、短パン履いていない子もいるんだよ!」
「確かに、何人か――すみません。もう、言いません」
春乃さんから物凄い殺気が伝わってきたのでこれ以上は言わないでおく。
「そんな下品なことしてたの?」
「してないよ。ただ、ガードが甘いなぁ〜〜と思ってただけ」
「そっか」
「信じるの早くない?」
「詩季くんの人柄で、そういう事はしないだろうなって。今のお話も私を和ませたくてでしょ?そこは、下手だけど」
「よく解ってらっしゃる!」
何だか、いつもの春乃さんではなかったので、いつも通りに戻ってもらうべく捨て身をしたが、戻ったか。
「別に、本当に楽しかったからこうなっていただけだからね!」
「わかった!」
春乃さんは電車通学だが一緒に帰る際には、家まで送ることになっている。
「ねぇ、本命チョコってどうやって渡したらいいかな?」
「春樹さんに?」
「お父さんにはあ母さんが渡すから!……陽翔くんにね」
「本命って言って渡したらいいんじゃないの?」
「乙女心解らない?」
「緊張するってだけでしょ?」
指摘がドンピシャだったのだろう。
春乃さんは、返答に困っていた。
「き、緊張するじゃんか。本命だって渡すんだから……」
「もし、僕との婚約話が進んでいても同じだった?」
「……同じではないと思う。むしろ、緊張しないで作業的になったかも」
「なら、本気で陽翔くんの事好きなんですね。だったら、本命チョコ渡すついでに告白しちゃえば?」
「簡単に言わないでよぉ〜〜それに、告白されたいなぁ〜〜と思うのが女の子の夢なんだから」
春乃さんは、見たことがないような女の子の表情をしている。
「何か、女の子みたいな表情。僕に誤ってスカートの中見せた時以来に見る――すみません……」
春乃さんが手刀の構えをしたので、僕は黙る。
恐らくは、羽衣から聞いているのだろう。僕の対処法を。
「それで、何か相談なんですか?」
「どうやったら、関係性前に進めるかな?」
「干渉はしませんよ?アドバイスするだけですよ?」
「うん。恋愛は自分で動かないと意味が無いから」
僕自身本人外で空気を作るなりして付き合わせるのには反対だが、本人が動く前提ならサポートはしてあげたい。
「なら、明日僕のお家で会議しましょうか。奈々さんと陽葵呼んで」
「う、うん。瑛太くんは?」
「こういうのは、女の子に聞くべきでしょ?それに、瑛太くんは明日陽翔くんと遊ぶ約束していましたし」
「そ、そっか」
僕と春乃さんは、お互いにスマホで明日、僕のお家に来れないかをメッセージで送信した。
元々、従者として鍛えていた春乃さんと春乃さんを真似て鍛えた僕なのでアポ取りは素早い。
「陽葵、OKだって 」
「奈々ちゃんは、詩季くんの基準大丈夫って?」
「あぁ、その問題ありましたね」
直近の問題だ。
僕は、奈々さんに電話した。
『しきやん?』
「はい」
『はるのんからメッセージ来たけど大丈夫なの?』
「はい。他者が2人の関係に干渉するのはダメですが、本人が動く意思があるなら相談に乗ってあげたいじゃないですか。今回、僕が怒ったのはいじらしいからこっちから作用させようとしたからです。本人に作用させる意思があるなら別です」
『そっか。明日、行くね』




