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259.その手の人

「では、行ってきます」


 予定の時間になり、春樹さんが迎えに来てくれた。


 僕だけが車に乗り込み、黒宮本邸に向かう。


 陽葵と羽衣がお見送りをしてくれる。


「行ってらっしゃい」

「気おつけてね」


 車は、黒宮本邸に向かって進み出した。


 車内は、春樹さんに春乃さんと僕の3人だ。


「詩季くん。仲直り出来たんだね」

「はい。ところで、今日は陽翔くんと出掛ける予定とかは立ててなかったのですか?」

「うん。先々週遊んだから」

「順調そうで何より」

「うっさい!」


 隣に座っている春乃さんに、グーで軽く叩かれた。


「所で、後夜祭の廃止は予定通りに進めるの?大分、反感買うと思うけど」

「そんなの、しっかり話を聞かないのが悪いんじゃん?僕は、しっかりと条件を伝えたからね」

「そうだけど」

「まぁ、後は、先生方がどう動くかですよ」

「確かにそうだ」


 春乃さんは、何処か楽しそうだ。


「何で、楽しそうなんですか?」

「いやぁ〜〜詩季くんの従者になるって決断しなかったらこんなに面白い事に参加出来なかったなぁ〜〜って」

「いい事あります?陽翔くんとのデートの予定とかもキャンセルになったでしょう?」

「まぁ~ねぇ~」


 想い人とのデートがダメになっているのに、あまり僕に怒っていない様子だ。


「それで、あの資料の情報提供者は誰なのさ?」


 告白祭りが影響の不登校と自殺未遂の情報源を知りたいようだ。


「春乃さんなら情報筋の見当ついていないのですか?」

「ついてないよ。清孝様はそう言ったセンシティブな情報を自分からは話さないですから。自分から話すとしても余程の事が無ければ話さないよ」


 春乃さんの情報筋の中には、このルートが無かったようだ。


 そう言えばそうか。


 僕がインフルエンザで入院していた時に、お話した人が1人居ることは知らなかったのだろう。


「春乃さん」

「なに?」

「清孝様のご子息は、父親・新さん・まといさんの他に……もう1人居るんですよね?」

「うん。苗字は……なんだったけなぁ……名前も……こ、こよ……だっけな……」


 僕よりも長く黒宮家と関わりを持っている春乃さんがこれだけうろ覚えなのは、清孝さんが情報統制をしているのだろうか。


黒宮(くろみや)小夜(さよ)。結婚しているから苗字は変わっているかもしれない。私も情報はこれだけしかない」


 運転席の春樹さんから情報を得た。


 これだけでも清孝さんが黒宮家内でこの人に関しての情報を統制している事が解る。


「まぁ、今から情報提供者さんと電話しますねぇ〜〜」


 僕はプライベート用のスマホを取り出して、電話をかける。


 コール音が2回目に入る直前に、相手は電話に出た。


『はぁ〜い』

「今日も病院ですか?」

『今日は、東京から電話に出てるよぉ〜ん。今、ホテル!』

「東京ですか!」


 電話相手は、今日は東京に居るようだ。


 病院に居たり東京に居たり。


 忙しい人だなぁ思った。


 そう言えば、昨日の夜のバライティの生放送特番に出演していたっけ。


『そそ。この後、またお仕事だよ』

「凄いですね」

『それで、何の用かな?白村詩季くん』


 僕が電話をした相手は、柏木さんだ。


「柏木さんの言っていた通りになりましたよ。後夜祭の廃止の件」

『やっぱりねぇ〜〜』


 僕は、後夜祭の廃止に関してを柏木さんに相談していた。


「新聞部に情報をリークした上で、生徒の反応を見る。そして、投票させる」

『そうすれば、なんの責任も持たない生徒達は勝手に盛り上がって大事な部分を聞き逃す。正直な所、大人になっても、ほとんど同じ手法は通用するんじゃない?』

「何ですか、僕が政治家にでもなると?」

『向いているんじゃない?』


 柏木さんに教えて貰った手法を取った。


 そしたら、面白いように事が進んだ。


 何の責任を持たない一般生徒は、「嫌だ」「嫌だ」と言うだけで代替案を出さない。

 そして、僕ら側が「投票する」と言う譲歩とも捉えられる事を言うと勝手に盛り上がって、詳しい詳細を聞かない。


 柏木さんは、そこをつけと言ったのだ。


『この手の人達はね。譲歩を引き出せたと思ったらそれで勝ちなんだよ。だから、それ以外の事は聞かない。その後は、自分の思い通りに事が進むと思い込む』

「だから、それを利用する。その手の人達は、勝ったと思っているから、再度、形成が逆転したとしても打つ手を用意している可能性は少ない」

『まぁ、100人に1人位は、本当の天才なんだろうね。打つ手を用意している人も居るけど』

「なるほど。天才同士のやり取りは、多岐に分岐した打つ手の応酬なんですね」

『そそ!』


 1年しか産まれるのが変わらないだけで、こんなにも変わるのだろうか。


 もしくは、天才を自称している僕とは違って本当の天才なのかもしれない。


「とりあえず、感謝と報告まで」

『んじゃ、また連絡待っているよぉ〜〜』


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