257.聞かない方が悪い
「この場で何か反論はありますか?」
後夜祭の廃止においてのスライドでの説明を終えてから質疑を確認するが無さそうだった。
「最後に僕から……後夜祭の廃止……は、生徒会が一括にしましたが、告白祭りは先生方の間でも廃止にするべきかもしれないという議論がされていました。遠からず、こういう話は出てきていたでしょう」
生徒会主導だが、近いうちに教師主導でこの話が上がってきていてもおかしくなかった事を告げる。
「まぁ、このまま、生徒会だけで強行しても納得しないでしょうから、今日の放課後に投票をして頂きます」
生徒の投票結果を後夜祭廃止の有無の判断材料にさせてもらう。
「そうだ!投票実施は、当然だ!」
「そうだよな」
「そうだな!」
1人の生徒の同意に沢山の生徒が賛同する。
怖い生徒指導の先生が何も動かない事で安心したのだろう。
「それでは投票結果が、過半数を超えることかつ――」
「おっしゃ〜〜皆、反対に投票しような!過半数を超えれば廃止阻止だ」
最後まで聞けよなと思う。
まぁ、発言を続ける。
この後は聞こえないだろうが知らない。聞かない人達が悪いのだ。
「投票結果が過半数を超える事かつ40%以上の大差がついた際には、後夜祭の廃止はなしにしましょう」
生徒達は、後夜祭の廃止を阻止するぞ勢力の声色が凄いこともあり後半部分の条件に関しては耳に入っていないようだった。
まぁ、それも仕方がないよね。
聞かない人達が悪いのだから。
僕は述べたのだ。
「それでは、放課後に各教室で投票を行ってください」
〇〇〇
「そりゃ、過半数は超えますよね」
放課後に、後夜祭の廃止に関する生徒投票の結果を集計した。
「反対が過半数を超えましたね」
「そうだねぇ〜〜だけど……」
投票結果は、反対が過半数を超えた。
最終的な結果は……
賛成 41%
反対 59%
だった。
「後夜祭の廃止は確定ですね」
「そうですね。会長の述べた後半部分の条件を満たしておりません」
「新聞部には投票結果だけ伝えようか。一気に伝えても意味が無いだけ。少し、時が経ってから廃止を公表しましょう」
生徒会活動を終えて、帰路につく最中に新聞部から取材を受けた。
「投票結果は、出たのでしょうか?」
「出ましたね」
「結果は?」
「賛成41%反対59%ですね」
「では、今後の動きは?」
「生徒総会で言った通りに動くことになるでしょう」
新聞部の報道の仕方を見ものだと思う。
校門前に移動すると、陽翔くんが待っていた。
「あら、今日は待っていてくれたんですか?」
「まぁな。生徒総会のあの雰囲気を見たら心配にもなる」
「愛しの春乃さんが?」
「……2人ともだよ!」
「そんなに、怒らなくてもいいのにねぇ〜〜ねっ?春乃さん?」
「あはは、2人とも仲良いね」
漫才みたいなやり取りをする僕たちを春乃さんは、微笑ましく見ている。
「では、僕達は3人で帰ります」
星川先輩と奈々さんと別れて3人で帰る。
春乃さんとは、駅で別れて陽翔くんと2人で帰る。
「陽葵は、どうですか?」
学校でも陽葵とは、距離を取っている。
僕自身もキツく言ってしまった所があるので、お互いに頭を冷やす期間だ。
「何と言うか、前向きになったよ」
「そうですか。良かったです」
「そんなに怒ってはいないんだな?」
「怒ってはいましたよ。だけど、信頼です。陽葵なら解ってくれると。キツく言っちゃったのは、反省ですけどね」
陽葵が前を向けているのなら安心だ。
陽翔くんだけでなくおばさんも手助けしてくれたのだう。
「喧嘩した日は、部屋に引きこもったからな。母さんも心配していたよ」
「おばさんに、ごめんって言っといて?」
「大丈夫。大丈夫。母さんも怒ってないから」
「なら、安心ですね」
見方を変えたら娘さんを泣かせた最低な彼氏になりかねない。もし、仲直りした後の交際関係に影響が出かねないので怒っていないは朗報だ。
教室での陽葵の様子は、何か覚悟を持った表情だった。
「詩季は、頭冷えたか?」
「……色々と考えることがありましたけど、考えは纏まっていますよ」
「そうか」
陽翔くんは、何か考えている様子だった。
「明日は何か用事あるか?」
「……明日は、午後から出かける予定があります」
「そうか」




