253.大喧嘩
「では、また明日」
「またな」
俺は、詩季を家まで送り届けて別れた。
春乃も詩季の事を心配した着いてきた。
静子さんは、陽葵でなく俺と帰ってきた事に違和感を覚えたようだが深入りはしなかった。
「春乃は、お家のこともあって着いてきた?」
「半々だね。友人としても心配。実家の方からは、普段の様子とかも報告するように言われてるから」
「そっか」
俺としても予想外。
多分、高校で詩季を中心として仲良くなったグループの皆が、予想外だろう。
複雑な迷路の果てに交際を開始したカップルの大喧嘩。
しかも、破局の可能性を示唆しての大喧嘩だ。
冬休みに、仲良し方面の一線を超えたばかりのカップルが起こした大喧嘩だ。
「生徒会として後夜祭を廃止にするとは聞いていたけど。早速、動いたな」
「うん。詩季くんは来季もやるために保身的な生徒会運営はしないって」
「らしいな。だけど、今回ばかりは、あいつもしんどいだろう。いや、また、しんどい道に踏み込んだが正しいか」
以前、インフルエンザで倒れた事があるのは知っていた。
陽葵から無理をした結果疲労が溜まった事で、かなり重症化したそうだ。
「今度は、俺らもしっかり見てやんないとな。あいつは、見てないところで頑張るからな」
「生徒会は、私が監視するけどね」
そこから、春乃を駅まで送り届けてから俺は家に帰った。
「ただいま」
「おかえり、ちょっといい?」
家に帰ると母さんに両親の寝室に呼ばれた。
「どうしたの?」
「陽葵……何か、あった?帰ってくるなり、部屋に籠っちゃったんだけど」
どうやら、陽葵は家に帰ってすぐに自室に籠ったようだ。
母さんが、何かあったのかを聞こうと試みるが、反応がないとの事だ。
「帰りに、詩季と大喧嘩したんだよ。陽葵が詩季を怒らせる形で」
「け、喧嘩?!」
母さんも驚いていた。
「え、ほんと?冬休みにお泊まりでさらに仲良くなったのに?」
「本当だよ。俺たちだってあそこまで喧嘩するとは思わなかった」
「何が原因なの?」
「詩季が陽菜を助けてくれる前の出来事は聞いたよな」
「……うん」
「そこの細部がな……」
僕たち一家にとっても複雑な問題でもある。
あの時、詩季が高梨たちと喧嘩しなければ、陽菜は車に轢かれてしまっていたかもしれない。
結果として、俺たち西原家にとっては、陽菜の命が守られたことで+に働いた。
だけど、詩季にとっては、幼馴染たちとの関係の断絶に脚が不自由になってしまう-の側面が大きい。
「幼馴染たちに、元カノと付き合うように空気を作られて付き合ったが上手くいかずに、あの日に喧嘩したんだって」
「うん」
「……俺が春乃との恋においてじれったかったんだろう。友人たちと共謀して、付き合わせようとした。奇しくも、それが詩季にとっての失敗のスイッチを踏み抜いたんだよ」
「うん」
「それで、詩季が怒った。陽葵に、「そんな事をするなら別れる」とまで言ったんだよ」
母さんは、考え込んでいる。
「それは、陽葵が悪いね。知っていて、こんな事したなら尚更悪い。自分だって、詩季とじれったい恋愛したのにね」
母さんの分析は、俺もそう思っていた。
「ありがと」
俺は母さんの寝室から出て、自室に移動する。
『(陽翔) 落ち着いたか?』
『(白村詩季) 陽翔くんから連絡来るとは珍しいですね』
『(陽翔) ちょっと気になってな』
『(白村詩季) 何が?』
俺は、詩季にメッセージを送った。
『(陽翔) ん〜〜彼女と喧嘩して落ち込んでないかなぁ〜〜と』
『(白村詩季) 少しは落ち込んでいますよ?』
『(陽翔) まぁ、あれだ。詩季が怒る理由も解る』
『(白村詩季) 理由?』
『(陽翔) まずは、俺から謝らせてくれ。詩季の過去を踏みにじった事を。陽葵に変わって。だから、陽葵を完全には拒絶しないで欲しい』
陽葵は、相当こたえている。
自分の行いを自覚して後悔しているだろう。
そして、詩季への想いが本物なら謝りに行くだろう。まぁ、謝りに行くまでは背中を押してやるか。
そのために、詩季のもんを閉ざさないで欲しいのだ。
『(白村詩季) 拒絶はしませんよ。ただ、人様の恋愛は静観する分にはいいです。だけど、干渉はいけません。それに、これで離れるならその程度って事ですし』
詩季は、現実主義的な側面がある。
この言動もそうだろう。
この喧嘩が原因で別れるならその程度。
今回は、はっきりと陽葵が悪い。
それを指摘されて、陽葵が詩季から離れる決断をするならその程度だと言うことだ。
『(陽翔) それは、そうとして……詩季。また、大変なことしようとしてんな』
『(白村詩季) いやぁ〜〜生徒会長は大変ですよ! (*´ `*)』
本当に、大変なのだろうかと思えてしまうような、顔文字が語尾に付いている。
だが、詩季が心を許してくれている事も解る。
『(陽翔) 何か、協力出来る事はあるか?』
『(白村詩季) では、陽葵の様子をよく見ておいてください。こっちは、春乃さんに協力してもらいます』
『(陽翔) 解った』




