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248.激論②

「それが出来ない人も居るんですよ。それに、グループ内でも序列って出来上がる場合もあるんですよ」


 僕たちのグループにはボケ役ツッコミ役などの役割はあるが、序列はない。


 今は、そのグループに居るのと奈々さんの性格的にグループ内でも主役的な立ち位置に居るから感じてこなかったのだろう。


「序列?」

「はい。例えば、空気を敏感に感じ取る人とかはどうですか?これまで、沢山の人と関わって来た奈々さんなら心当たりがあるのではないでしょうか?グループ内に置いて周囲の人の顔色を伺って中立的に動いて揉め事が起これば仲裁に入っている人」


 僕が述べた具体的な人物像に奈々さんは心当たりがあるらしく、資料と睨めっこしている。


 このグループ内の序列というのが、告白祭りの負の側面が出てきてしまうのだ。


 同じグループ内に居るという事は、接している時間も長くなるという事だ。


「同じグループに居て接する時間も長い。これはいい感じ。告白すれば行ける。文化祭が近いな。あっ告白祭りで告れば思い出になる。そこで告白するか!……では、奈々さん。この事の裏側を答えてください」

「う、裏側……?」

「同じグループに居て接する時間も長い。これはいい感じ。告白すれば行ける。文化祭が近いな。あっ告白祭りで告れば周りも後押ししてくれるから成功率も高くなる。そこで告白するか!……ですよ。思い出という名の多数の圧力を利用しているだけではないでしょうか?」


 思い出という名の多数の圧力。


 少しばかり強い言葉を使ったと思う。


 紅白祭りまでの流れにおいての建前と裏側は、こんな感じだろう。


 建前は序列が上の人が感じて、裏側は序列が下の人が感じる事だろう。


「そ、その事の何がいけないの?告白ってのは、物凄く勇気が居るんだよ。ひまりんに告白するのは軽いものだったの?」

「違います」

「だからこそ、勇気を振り絞るためにいろんな人から背中を押してもらうのも大事じゃん」

「それは、お互いがお互いを想っている場合に成立するでしょう」


 陽葵への告白は軽いものでは無い。


 僕の言いたい事は、告白の重さでは無い。


 告白までの過程の話だ。


「それに僕が言いたいのは、告白の仕方であり過程です。想いあっているなら告白して付き合えばいい。だけど、そこに外から絡むのは違うと思います」

「詩季くん。次の資料見せたら?このままだと」

「そうですね」


 春乃さんの指摘はご最もだ。


 このままでは、平行線を辿るだけだ。


「では、僕が何故告白祭りの廃止の意向。その理由であるグループ内の序列に関するデータを提示したいと思います。資料の1ーBを見てください」


 僕は新たな資料を見るようにお願いした。


 その資料は、告白祭りで成立したカップルが男女交際の関係において生徒会並びに先生方に相談した例を記している。


 内容はと言うと……


・彼氏と別れたいけど別れにくいです。

・彼氏からの要望に断りたいけど断れないです。

・彼女の束縛に耐えきれません。皆の前で付き合う事になったので簡単に別れる事が出来ません


「この資料は、この10年間で生徒会及び先生方に寄せられた相談の一部です。告白祭りにおいてこう言った事も起こっているのです。これらの人に共通するのが、空気に流されやすい人であり空気に敏感な人なのです」


 この資料も用意した中では一部に過ぎない。


 だけど、これだけでもかなりのインパクトはあるだろう。


「ここには、別れたいけど告白の経緯から別れにくいと言った意見が沢山出ています。全て、生徒会主催のイベントで起きた出来事です」

「でもさぁ、言えない人も悪くない?」

「確かにそうかもしれませんね。ですが、そう言う告白をするなら自分たちでしろって話です。生徒会が助長するような事は止めるべきだと思います」

「だけどさ」


 奈々さんは、まだ、食い下がってくる。


 これは、陽翔くんと春乃さんも告白祭りでくっ付ける算段を立てているのかもしれない。


「友人間で友人皆が賛成しているなら勝手にやってどうぞ。そこで、起きた事に生徒会は責任を負いません。だけど、生徒会主催イベントならそうもいきません」


 生徒会と言っても未成年の生徒だ。実質的に責任を取らないといけないのは、教師陣だ。


 ちなみに、教師陣も昨今の社会の風潮的な事も踏まえて近い将来告白祭りだけでも廃止にしようと言う話が職員会議に実際に上がっていると聞く。


 つまりは、近い将来生徒会にそう言った話が来る事は確実だったのだ。


 次の世代にハズレくじを引かせるぐらいなら僕達の代で買ってに引けば良い。


 むしろ、SNS時代の今でもこう言った告白祭りをしてこれている事自体凄いことだ。


 だけど、もう限界だろう。


「次の資料、2ーBをご覧ください」


 この資料を見るように告げる。


 春乃さんは、表情を引き締めた。


 星川先輩は、口元を抑えた。守谷先生は、生徒会室に置いてある防災用のバケツを星川先輩に渡した。だけど、星川先輩は我慢したようだ。


「な、なに、これ……」


 奈々さんは、口をパクパクさせていた。


 僕がみせた資料。


 それは、告白祭りが原因で起こった2つの事例。そして、教師陣で告白祭りの廃止の議論のきっかけとなった事例だ。


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