242.長いお昼寝
「むぅ~~」
陽葵は、僕の隣で腕を掴んでいる。
頬をプクーと膨らませて、「嫉妬しています」と僕に対して主張しているのが解る。
「陽葵、機嫌直してくれませんか?」
「怒ってないよ……陽菜のキスは、友情の現れだと思うし」
「ごめんなさい。油断してました」
「ううん。私が嫉妬しているだけだから……」
陽葵にとっては複雑な心境のようだ。
「そう言えば、午前中に沢山家事をしてくれましたが……?」
「それはね……陽菜が帰った後に、詩季とイチャイチャする時間が欲しかったから」
「だったら、イチャイチャしましょう」
僕は、隣に座っている陽葵の頬にキスをする。
「むぅ~~キスしたら機嫌直ると思っているでしょ?」
「少しは良くなるかと……」
「なるけどさ!」
陽葵は、嬉しさと嫉妬心が入り交じったような複雑そうな表情を浮かべている。
「よしよし!」
「撫でたら機嫌が良くなるとでも?」
「なってるじゃん?」
「そうだけどさぁ!」
陽葵も無駄な抵抗はやめて、素直に甘えるようにしたようで、僕の胸に頭を寄せてきた。
もっと撫でろというお達しだろう。
僕は陽葵が納得するまで撫でてあげる事にした。
10分程撫でてあげると、陽葵は納得してくれたようで頭を僕の胸から離した。
「ご機嫌直りましたか?お姫様」
「うん」
陽葵は、少し恥ずかしそうにしている。
「す、少し、我儘言い過ぎた……かも……」
「可愛かったのであれは有りですね」
「もぉ〜〜からかわないでよ!」
仕方が無いではないか。
可愛い彼女に素直に可愛いと言って何が悪いのだ!
「それと、遅くなったけど……今日も綺麗だよ」
お家に来てすぐ、陽菜ちゃんが飛びついてきたので感想を伝えていなかった。
今日の陽葵は、スカートスタイルだ。
夏とは違って、流石に寒いからなのかタイツは履いてきている。
「ありがと。何か、照れる」
「正直に感想言っただけ」
「付き合った最初の頃は、全然言ってくれなかったのに」
「それは、ごめん。ただ、素直に伝えたいって思っただけ」
ここに来て、付き合った最初の頃に「可愛い」「綺麗」を照れ臭くて言わなかった弊害が来ている。
「何かしますか?」
「膝枕してあげる」
「なんで?」
「この前のダブルデートでして欲しそうにしてたから」
「なら、お言葉に甘えます」
陽葵に膝枕をして貰う。
膝に頭を乗せると陽葵は、頭なでなでもセットでしてくれた。
「私ね、2人でこうやってのんびり過ごすのも楽しいって思う」
「僕もです」
「そうだよね……」
何故なのか。
安心感を感じると睡魔が押し寄せてきた。
〇〇〇
「詩季!詩季!」
「ん……?おはよ?」
「おはよ」
陽葵に起こされてスマホで時間を確認する。
18時26分
ものすごく長い時間寝ていた事が伺える。
「ごめん。寝ちゃって……」
「私も寝てたから大丈夫」
どうやら、2人してお昼寝をしていたようだ。
「時間だから、夕ご飯の準備するね。今日は、チーズINハンバーグだよ」
「楽しみです」
僕は、椅子に腰掛けて陽葵が料理をする姿を眺める事にする。
僕は手伝っても足でまといになるので大人しくしておく。料理のお手伝いに関しては、僕よりも陽菜ちゃんの方が戦力になるのだ。
「どうしたの?」
ずっと眺めてくる事が気になったのだろう。
「いや、将来は、こんな光景になるのかなぁ〜〜と想像しました」
「どうなるんだろうね。お互いにどんな仕事に就くか解らないし。でも、お休みの日とかは、こうなりそうだよね」
恋人になった特権だろう。
彼女と結婚した事を想像する事は。
「お料理に関しては、ご迷惑をおかけします」
「迷惑とは思ってないよ」
僕と陽葵が結婚した場合は、料理全般は陽葵にお願いする事になるだろう。
座って野菜とかを切るにしても、包丁とまな板を運んでもらわないといけない。
30分程で、陽葵はチーズINハンバーグを作り上げた。朝の段階で、下準備をしていた事が長い時間お昼寝をしてしまったけど、19時にご飯を食べられる事になった。
「頂きます」
「どうぞ!」
陽葵が作ってくれたチーズINハンバーグを食べる。
ちなみに、量は、僕が頑張って食べられる量だ。お昼ご飯の時もそうだが、写真を撮っていた。
恐らく、静ばぁに送っているのだろう。
ただ、2人のお陰もあって徐々に食べられるようにはなっている。
「美味しい!」
「良かった!」
肉汁だけでなく、肉汁がチーズと絡みあった味が口内に広がる。そこに、白米を入れるとさらに食が進む気がする。
「チーズINハンバーグ難しく無いですか?」
僕も中学時代に作ろうとして失敗した経験がある。
焼いている最中に、チーズが漏れ出てくる事が殆どで、漏れ出なかった場合は生焼けだったのだ。
「お母さんが得意なの。よく、お母さんのお手伝いしてたからコツ覚えた感じ」
「そっか。こんなにも美味しいご飯を食べられた事に2人に感謝ですね」




