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239.惚気?!

〈今日は、楽しかったです!〉

〈は、はい。私も楽し、楽しかったです〉


 ダブルデートも終わりに近付いた。


 最寄り駅に到着してからは、それぞれのペアに別れる事になった。


 陽葵は、ケニーくんと挨拶をした。


 僕は、ケニーくんとはまだ会う機会はある。陽葵は、あるか分からない。もしかしたら、初詣とかで会うかもしれない。


〈それでは!〉

〈今日は、ありがとうございました〉


 僕と陽葵は、羽衣とケニーくんと別れて近場を散歩する事にする。


 2人の時間も欲しいのだ。


「途中でズルしたでしょう?」

「な、何のことかな?」

「英会話の練習をしたいと言っていたのに、文明の利器を使ったら意味無いでしょう?」

「そうだけどさぁ〜〜詩季みたいに喋れなくて……逆に、どうやって話せるようになったのさ!」


 そう言えば、どう言った経緯で英語が話せるようになったっけ。


 英語を勉強しようと思ったのは、借り間違えた本が起因だった。


「確か、海外映画のテレビ放送だった気がします」


 母さんが、海外映画が好きでよく見ていた。


 母さんだけだと、字幕も無しで見ていたが、僕が興味を示すと字幕を付けてくれた。


 ただ、途中かは内容自体に飽きてしまったので、流れてくる英語と字幕を聞いて見て比べていた気がする。

 そして、偶然見た海外の映画が、僕が借り間違えた英語の本の映画だったのも影響したか。


「音声で流れてくる英語と字幕を眺めてたら自然と覚えた的な?」

「……ねぇ。サラッと凄いこと言うのやめて?」

「聞いてきたのは、そっちでしょう?」

「そうだけどさぁ!」


 先に僕を家に送ってもらってから陽葵は、自分の家に帰る。


 本当なら逆なのだが、僕たちの何時もの流れだ。


「ん、前方をトボトボと歩いている男の子は……」


 僕たちの前方には、疲れた表情でゆらりと歩いている見慣れた男の子の後ろ姿が見える。


「陽翔くん!」


 歩行スピードでは陽翔くんに、敵わないので呼び止める。


「……ひまりぃ~~」


 陽翔くんは、僕たちを見つけると陽葵の肩に手を置いた。


「陽翔?」

「何で、春乃に俺の変顔と寝顔の写真を送ったんだよぉ!」

「私じゃないよ?詩季に頼まれたから渡しただけ」

「だからってもっといい写真があっただろう!」

「だって、詩季に頼まれたのが、変顔だったもん」


 陽翔くんのターゲットは、陽葵から僕に変わったようだ。


「……どうしたのですか?」

「何で、俺の変顔を春乃に渡す必要があったんだ?」

「昼食の場所を教えてもらいたかったので」


 陽翔くんの頬はどんどん引き攣ってきている。


「何で変顔?」

「春乃さんが喜ぶかと」

「……」

「むしろ、春乃さんテンション上がっていませんでした?」

「……上がっていたよ。お陰で残りのお出掛けは、ひたすらイジられたよ!」

「良かったじゃないですか!」


 陽翔くんは、唇を噛みしめていた。



〇〇〇



「変顔写真消してくれませんか?寝顔は許すので……」

「ヤダ!」


 俺は、何とかして春乃が入手した変顔写真を消してもらいたかった。


 変顔写真は家族パーティのゲームで、陽菜からの命令でさせられた物だ。そして、陽葵かお母さんのどちらかに撮られていたのだろう。


「なんで?」

「私が入手したから」

「……そこを何とか」

「ヤダ!」


 春乃に写真を消して貰うのは、諦めた方が良いのかもしれない。


「それにしても、陽翔くん。こんな変顔出来るんだね」

「し、仕方ないだろ!妹に、命令されたんだから……」

「陽葵ちゃん?」

「陽菜だよ。解ってて言っているだろ!」


 普段、詩季の実家での従者として働いていると聞いていたが、納得できる。


 話の流れの主導権を掴みたいが、掴めない。


 隙があると思ってそこを突こうとしたらそれが罠だった。


「じゃ、これ以上の変顔を撮らしてくれるならいいよ?」

「こ、これ以上は……」


 春乃の提示してきた条件は、かなりの無理難題だ。


 あれ以上の変顔なんて出来る訳ない。


 そして、人前で変顔は羞恥心的な部分でしたくない……


「解ったよ」


 俺は、折れる事にした。



〇〇〇



「それが初めで、そこから俺が隙を見せたら変顔でいじられたんだよぉ~~」

「嬉しかったのでしょう?」

「そ、それはそうだけどもさぁ~~」

「なら役得では?」


 陽翔くんは、デードで春乃さんからイジられた内容をこと細かく教えてくれた。

 イジられた被害を伝えられているつもりなのだが、惚気にしか聞こえないのだ。


「それにしても、陽翔くんがここまで惚気けるとは……陽葵、もっといい写真あったら――」

「頼むから、これ以上は止めてくれぇ〜〜」


 流石に、陽翔くんのHPが持ちそうにないからやめておこうか。


 その後、僕は2人に家まで送って貰った。


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