235.思い出巡り
〈おはようございます〉
〈おはよう、ケニーくん。よく寝れました?〉
〈はい!〉
翌朝、ケニーくんが、僕が過ごしている家に羽衣とやって来た。
親同士は、親同士で今日は観光をするそうだ。
〈まずは、何処から回ろうか?〉
〈小学校前とかでいいんじゃないかな?桜宮より近いし〉
〈だね〉
ケニーくんの要望で、僕と羽衣の思い出の地を巡ることになっている。もう1つの要望である、アニメ関連は、明日のダブルデートで行くことになっている。
ケニーくんがアニメに興味を持った理由は、確実に羽衣だろう。
〈じゃ、行きましょうか〉
準備が完了したので、家から出発した。
まずは、通っていた小学校に向かう。
〈小さい頃の羽衣は、どんな感じだったんですか?〉
〈人見知り。今と変わんないよ〉
〈人見知りなんですか?!〉
イギリスでの羽衣の生活の様子も気になる。
ケニーくんの驚き具合を見ると、人見知りだと思っていなかったようだ。
〈人見知りだよ。基本的に、親しいと思った人以外とは壁を作って接するからね〉
〈そ、そうなんですね〉
〈多分だけど、向こうに行って、困っている時にケニーくんに助けてもらったから、君にはハードルが下がったんだろうね〉
羽衣の事になると真剣に話を聞いている。
〈詩季さんは、どんな感じだったんですか?〉
〈僕ですか?〉
〈詩季にぃさんはね。集団においての潤滑油的存在だったからね。色々と大変な思いをつい最近までしていたよ〉
僕の事に関しては、羽衣が話し出した。
〈過去形ですか?〉
〈今は、彼女もそうだけど親しい友人を持っているんだよね〉
〈そうなんだね〉
僕の事に関しても真剣に聞いている。
〈今は、物静かだけど明るいけど……昔は、私以外だったらロボットのような人間だったね〉
通っていた小学校の前で、昔話に花を咲かせる。
〈じゃ、今通っている学校に行きましょうか〉
〈え、中学校には行かないんですか?〉
〈僕と羽衣が通っているのは、中高一貫校ですよ〉
〈そ、そうなんですね〉
桜宮に向かいながら、羽衣に日本語で話す。
「血筋に関して言わなくてもいいの?」
「……言った方がいいかな?」
「先延ばしにすればするほど、話しにくくなると思うよ」
黒宮家というのは、日本だけじゃなく外国にも顔が広い。
〈何のお話しているんですか?〉
日本語で話されて内容が理解できないケニーくんが尋ねてきた。
〈父方の実家の話〉
〈どんな家なのですか?〉
〈羽衣が話すと決めた時に、知れると思うよ。まぁ、父方の実家は、ケニーくんも知っていると思いますけどね〉
ケニーくんは、頭を傾けていた。
〈私たちの父方の実家はね……黒宮家なんだよ〉
羽衣は、話すことにしたようだ。
〈く、黒宮家……あの、黒宮家〉
〈そうだよ。まぁ、実家が黒宮だと知ったのが、今年の夏なので隠していたとかではないのは事実です〉
ケニーくんは、驚いている様子だ。
多分だけど、ケニー両親には母さんが話しているのだろう。
〈驚きましたか?〉
〈は、はい〉
〈安心してください。羽衣に、婚約者を用意されるなんて展開はないので〉
〈そ、そうですか〉
ケニーくんは安心した様子になっていた。
〈まぁ、暗い話は止めにしましょう〉
そこから、歩いて20分位で、桜宮に到着した。
〈大きい学校ですね〉
〈そうだね。兵庫県内でNo.2の学校だからね。歴史や学力レベルは〉
〈す、凄いですね〉
〈羽衣とケニーくんが通っていた学校もイギリスでの名門校でしょう。それと同じですよ〉
今日のケニーくんは、僕と羽衣の幼少期についてを楽しそうに聞いている。
〈ちなみに、詩季にぃさんは生徒会長務めているんだよ〉
〈……!凄いですね〉
〈凄いかどうかは分からないけど、まぁ、大変だよね〉
羽衣が、校舎の説明をしている。
私服な事もあるが、訪問するとアポイントを撮っていないので、外から眺めている。
そもそも、年末年始という事もあって学校自体お休みなのだ。
〈次は、公園にでも行きましょうか〉
祖父母の家の近くの公園に移動した。
〈ここは、僕と羽衣が祖父母の家に遊びに行った時によく遊んだ公園ですね〉
〈質素ですね〉
ここの公園には、鉄棒と小さめの滑り台があるだけの大きいとは言えない公園だ。
ここでは、静ばぁに買って貰ったおもちゃとかを使って遊んでいた。
〈遊具が無いからこそ、おもちゃを使ってよく遊んでいましたよ。羽衣は、人形遊びが好きでしたね〉
〈ちょっと、言わないでよ!〉
昔の事を話そうとすると、羽衣から頬を引っ張られた。
〈と、ご覧の通りに、恥ずかしてると頬を引っ張られるでご注意を〉
〈い、痛くないんですか?〉
〈痛いけどね。妹にされているなら良いかなと思う〉
〈なに?!効いていないだと?!〉
羽衣は、さらに引っ張る力を強くしてきたので、流石に、ギブアップしておいた。
ギブアップを引き出せた事で、羽衣は満足したようだ。
〈赤いですよ……大丈夫ですか?〉
〈まぁ、大丈夫!〉
ケニーくんは、心配そうに僕の事を見てきている。
〈痛かったねぇ〜〜〉
羽衣は、ハンカチを取り出して引っ張った頬を撫でてきている。
〈労るなら引っ張らないでよね〉
〈いやぁ〜〜顔を傷つけたら陽葵ちゃんに怒られるからね〉




