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233.自分の幸せ

〈お昼は、機内で食べたんだよね?〉

〈はい〉

〈じゃ、ケーキ買っているしお茶してから軽くこの辺を観光しようか〉


 母さんは、リビングからケーキの入った箱を取り出した後に、紅茶の準備をしに行った。


〈好きなのを選んでください。羽衣は、ステイ〉

〈私は、犬か!〉

〈言うこと聞かない、駄犬〉

〈うぅ〜〜〉


 ケニー一家に好きなケーキを選んでもらう。羽衣が、興味津々そうだったので、ステイを掛けたら抗議されたので、反撃しておいた。


 ケニー一家が、好きなケーキを選んで、お皿に乗せたので、僕と羽衣で選ぶことにする。


 残っていた中で、羽衣がチョコレートケーキ。僕が、ショートケーキを選んだ。


〈お待たせ、紅茶を持ってきたよ。イギリスみたいじゃなくて、日本方式だけどね〉

〈日本方式にも興味あります!〉


 紅茶の本場に住んでいるケニー一家には、日本の紅茶の味は合うのだろうか。


〈美味しですね〉

〈うん。日本の紅茶も負けてないよ〉

〈詩季くんは、ミルクティー派なんだ〉


 ケニー母は母さんが入れた紅茶に、砂糖とミルクを入れている僕を見てそう思ったようだ。


〈ストレートは、あまり好みませんね〉

〈苦いのが苦手なのよ。だから、ストレートティーも得意じゃないみたい〉

〈そういう事です〉


 ケニー両親は、改めて僕の事をぱちくりと見ている。


〈本当に、詩季くんは英語を流暢に話すよね。羽衣ちゃんは来たばっかりの頃は辿たどしい所もあったのに〉

〈気が付いたら覚えていたんですよ。羽衣に英語を教えようとしたら、先に詩季から教わってて……おかげで、英会話教室のお金は浮きましたけど〉


 小さい頃、お留守番していた時に羽衣が昼寝を始めて暇を持て余した僕は、学校の図書室で間違えて借りてしまった英語の本を読むべくして独学で翻訳をし始めたのが覚えるキッカケだったと思う。


〈ケニーくんは日本というか兵庫県で行ってみたい所ある?〉

〈そ、そうですね。日本のアニメ文化が好きですので、兵庫県内のアニメのお店に行ってみたいです。後は、お2人の思い出の場所とか〉


 アニメに関しては電車を使って移動しないといけないので、ダブルデートの時にするか。


〈じゃ、羽衣。明日、3人で出掛ける時に、思い出の所行こっか〉

〈うん。ダブルデートに、アニメは回すね、ケニー?〉

〈はい。あの、詩季さんの彼女さんはどんな人なんですか?〉


 ケニーくんは、陽葵の事を尋ねてきた。


〈陽葵は、渡さないよ?〉

〈そ、そんな、僕には羽衣が居ますから!羽衣から、脱線するつもりはありませんから〉


 焦って弁明するケニーを見て、羽衣はお腹を抱えて笑っている。


〈う、羽衣、どうしたの?〉

〈いやぁ〜〜ケニーが面白くてね〉

〈?!?!〉


 羽衣の言動にケニーくんは、さらに混乱していた。


〈ケニー、詩季にぃさんにからかわれただけだよ〉

〈そ、そうなんですか?〉

〈そうだけど。半年会えなかったけど、一途に想ってたんだからね。まぁ、陽葵は僕のだけど〉

〈詩季さん。陽葵さんという方が、大切なんですね〉

〈そりゃ〜ねぇ〜羽衣と同じぐらい大切。同格なのは、家族か家族じゃないかの違い〉

〈そこは、似ていますね〉


 恋人も大事だが、家族も大事。


 結婚するまでは、家族を優先する。


 これは、僕と羽衣の共通的な価値観だ。だから、羽衣は日本に帰ってきてくれたのだ。


〈陽葵はねぇ。性格は羽衣に似ているよ。僕が辛かった時に、ずっと傍で支えてくれた。ずっと、隣に居て欲しいと思うよ〉

〈解ります。僕も羽衣と一緒に居たいですし……〉

〈まぁ、簡単に嫁には出さないけどね?〉

〈はい。日本に居る間に、詩季さんに認めてもらえるように、頑張ります!〉


 簡単に嫁に出さないとは言ってみたが、羽衣が選んだ人を反対するつもりはない。

 ただ、残り少ない時間ではあるが、羽衣と家族としての時間を大事に過ごしたいのだ。


〈あぁ~~陽葵の英語は単語伝いになるからね。解りにくい所あれば通訳するから。逆もそう〉

〈解りました〉「日本語の、れ、練習、頑張ります!」


 陽葵は英語の練習、ケニーくんは日本語の練習のダブルデートになりそうだ。


〈詩季さんのお部屋は、2階にあるのですか?〉

〈あぁ〜〜ケニーくん。詩季は、ここには住んでない。詩季は、夕方位になったら、祖父母のお家に帰る事になる〉

〈そうなんですか?〉

〈お家の事情だから踏み込まないでくれると助かるよ〉


 母さんが、助け舟を入れてくれた。


 頭をコクッとして感謝を伝えておいた。


〈私も帰るよ。今はあっちに住んでいるし〉

〈羽衣も帰っちゃうの……〉


 ケニーくんは、日本に居る間は部屋は別にしても羽衣と一緒に居られると思っていたようだ。まぁ、僕が陽葵とお泊りする時はこっちに泊まるから一緒に居られるだろうが。


〈うん。詩季にぃさんの生活のサポートもしないといけない――〉

〈羽衣。ケニーくんが日本に居る間は、ここに泊まりな〉

〈で、でも、詩季にぃさんのサポート……〉

〈いつも助かっているよ。だけど、僕のサポートだけに時間を割いてもダメ。自分の幸せにも時間を割きなさい〉

「でも、詩季にぃとの時間も大事」


 英語で話すのが大変と思ったのか、ケニーくんに聞かれたくないと思ったからなのか、途中から日本語でになった。


「羽衣。ケニーくんとは簡単には会えないんだよ。お金も沢山かけて会いに来てくれているんだよ。今、ケニーくんとの時間大事にしないと後悔するよ。それにケニーくん一家に失礼だよ」

「……」


 羽衣の家族大事の価値観は、共感する。


 だけど、遠距離で会えない時間が多いんだから会える時位、そっちを優先してほしい。


「それに、羽衣が帰国するまでは、3人で暮らしていたんだし、今は、母さんも居るんだよ。羽衣も自分の幸せを求めなさい」

「……うん!」


 僕は、羽衣の頭を撫でた。


〈どうなったんですか?〉


 ケニーくんが、結果を聞いてきた。


〈羽衣もここに泊まるよ〉


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