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229.それぞれ

「たっだいまぁ~~」


 羽衣が帰って来た。


 僕と陽葵は、顔を離した。


「ひ、陽葵……ごめん。胸、触っちゃて……」

「ううん。嫌じゃないから。むしろ、嬉しかったから」


 お互いに、頬を赤めている。


 特大なお預けを喰らってしまった気分だ。


「2人とも、昼ご飯何にする……あれ、もしかして、帰ってくるタイミング間違えた?」


 僕の部屋に昼食のリクエストを求めて、羽衣がやって来た。


 羽衣は、僕と陽葵の空気を察したようだ。


「陽葵、何食べたい?」

「え、えっと、詩季は?」

「生姜焼きとかかな?」

「OK!昼食出来たら呼びに来るからぁ~~」


 羽衣は嵐のように、リビングに向かっていった。


「羽衣ちゃんにバレたかな?」

「どうだろ。微妙な空気感は感じたんじゃないかな?」

「そうだよね」


 お預けを喰らったので、ある種のモヤモヤした空気が漂っている。


 こういう時は、別の話題を振るしかない。


「陽葵、プレゼント……」


 僕は、プレゼントを渡した。


 体調が回復してから僕から渡して欲しいと返されていたプレゼントを渡す。


「お誕生日おめでと」

「ありがと!開けるね」


 陽葵はプレゼント包装を丁寧に剝がしていく。


 羽衣は、ビリビリと破いて開けていたので、愛おしさを感じる。


「はぁ~くしょん!」


 リビングで、羽衣がくしゃみをした音がここまで聞こえてきた。


「羽衣ちゃん。凄いくしゃみだね。うふふ」


 陽葵は、苦笑いを浮かべている。


「人前ではお淑やかにするんですよね。家族の前では、気を許しているんでしょう」

「私は?」


 確かに、家族という括りなら、陽葵はまだ家族ではない。


「陽葵にも心許しているだと思いますよ。ああいう言動を取るので勘違いされがちですが、元々は人見知りするので」


 羽衣の本質は、人見知りだ。


 その反動もあるのだろう。気を許した相手には、素の自分を見せるしふざけるのだ。


「それで、プレゼントはどうですか?」


 話がそらてしまったので、陽葵は包装を剥がす途中で止まってしまっていた。


 陽葵は、プレゼント包装を剥がし終えて箱から中身を取り出した。


「手鏡!」

「はい。羽衣にアドバイス貰って買いました。女の子には、手鏡が必要アイテムだと強く押して来ましたので」

「ありがと!」


 陽葵は、嬉しそうに抱きついてきた。


「手鏡欲しかったんだ。だけど、どれ買うかずっと悩んでて……好きな人から貰ったのが1番だよ!」


 素直に嬉しほうに、感想を述べてくれる。


 まるで、ご飯を貰えた犬のようだ。


「喜んでくれて良かったです」

「うん!」


 陽葵は、プレゼント包装していた紙も家に持って帰るようだ。それごと、鞄に入れて、リビングに移動する。


 昼食を食べ終えると、陽葵はお家に帰って行った。


「部屋に戻りますね」

「私も行くぅ〜〜!」


 羽衣も部屋に着いてきた。


「なんの用?」

「わぁ〜〜私が何かしでかす前提じゃん」

「……ノーコメント」


 ここで、変な事を言ってしまえば羽衣に顎骨のターゲットにされかねない。


「それで、私達がいない間に陽葵ちゃんといい雰囲気だったでしょ?」

「やっぱり、それ聞いてきましたか」

「だって、普通にキスだけじゃあの空気は出ないでしょ」


 やはり、羽衣はあの時に僕と陽葵の空気を察していたようだ。


「待って待て!からかいに来たんじゃないよ!」


 何時もの羽衣ならここでからかってくるので、それを阻止しようと手刀の構えを見せたら、急いで否定してきた。


「どういうつもりで来たの?」

「この家に2人きりの時間作ろうと思えば作れるけど、協力しようか?」

「それって……」

「もちろん、お泊まり。静ばぁ達は、お友達と旅行。私は、お母さん所に泊まる。もちろん、お泊まりだから陽葵ちゃんの本人やお家の人の許可があってだけど」

「それって、静ばぁは?」

「同意してるし、詩季にぃが望むなら西原さんにアポイント取ってくれるって」


 恋人になった、僕と陽葵を2人きりでのお泊まりを認めるという事は、そういう事をする事を容認するとも捉えられる。


「あぁ、静ばぁからお泊まりしたいなら詩季にぃから誘いなって」


 正直な重いを言うと、陽葵とお泊まりをしたい。


 もちろん、2人きりとなるとそう言う事をしたい。だけど、妹にその協力を仰ぐのはどうかとも思う。


「詩季にぃ。正直になりなよ。私が帰ってくるまでの間、いい雰囲気だったんでしょ?胸触ってたでしょ?」

「な、なんで、それを?!」


 胸を触っていた所を見られた?


 いや、羽衣が部屋に来る前には、陽葵とは離れていたので見られた可能性は0だ。


「簡単だよ。陽葵ちゃんから甘々な空気が漂ってたのと、陽葵ちゃんの服の胸部分がシワになってたからね」


 流石は、僕の妹と評価した方がいいだろう。


 凄い観察力だと思う。実際に、そうなのだが。


「それでぇ〜〜陽葵ちゃんの胸の感触――これ以上は、本気で手刀だからやめとこ」


 羽衣の暴走を止めた。


「……同じ女としての意見だけどね……陽葵ちゃん。嫌がってないよ。むしろ、詩季にぃともっと深い仲になりたいと思ってるよ。まぁ、お泊まりの日が女の子の日とかなら仕方ないけど……求められたら受け入れてくれるよ。だって、ケニーに誘った時の私と同じだったし」


 正直な所、心配な所なのだ。


 陽葵とそういう事をしたい。


 だけど、求めた事で嫌われるのが怖い側面もある。


 そういえば、羽衣は日本に帰る前に、ケニーくんとHをしたいと誘ったそうだ。


 遠距離になる前に、少しでも関係を発展させたいと思ったようだ。そして、ケニーくんは、我慢したそうだ。


「もしかして、私達に遠慮してたりする?」

「……どうだろ」

「私達に遠慮は要らないよ。ケニーの場合は、距離が問題あったからね。もしもの場合にすぐに両家間で問題解決出来ないし。主に、時差的問題でね」


 避妊をしても完璧じゃない。


 避妊をしていたとしても、妊娠してしまう可能性はある。


 ケニーくんは、そうなった場合のやり取りが日本とイギリス間では迅速に出来ずに羽衣の身体に負担になる事を懸念して羽衣を説得してくれたようだ。


 そう言うと、羽衣は抱きついてきた。


 しかも、胸に僕の顔を埋める形だ。まぁ、柔らかい以外には感じないのだけど。


「それぞれのカップルだよ。詩季にぃは陽葵ちゃんとの道を進んでね」

「――では、ご協力お願い」


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