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「う〜ん。大分、良くなったなぁ〜〜」


 家に帰ってから2日程、自室で大人しく寝ていたら体調は回復したとも言えるだろう。


「おはようございます」

「おはよう。もう、大丈夫そうだね」

「うん。よく寝れたし、大丈夫だと思っていても疲労は溜まっているもんなんですね」


 リビングでは、静ばぁが朝食の準備をしていた。


「もう大丈夫という事は、食事量増やさないとね」

「ま、まだ、少なめをご希望したいのですが?」

「食べる事もスタミナ付ける一因なんだからね。詩季、ただでさえ細いんだから」

「は、はい……」


 体調不良で寝込んでいる間の食事量は、僕が食べ切れる量(余裕で)だったが、体調が戻ったので、食べ切れる量(頑張って)に戻ることになるみたいだ。


「おはようぅ〜〜。あっ詩季にぃおはよ!もう、大丈夫なんだ」

「はい。いつも通りの身体の軽さに戻りました。むしろ、軽い位ですね」

「そう感じるって事は、常に疲労抱えてたんだからね?」

「はい」


 静ばぁには食事量を、羽衣にはしっかり休むことに関して釘を刺された。

 釘を刺された事が主な原因で、体調を崩したと言っても過言では無いので、しっかりと聞かないといけない。


「まぁ、陽葵ちゃんも嬉しがるだろうねぇ〜〜」

「……また、変な事を言おうとしてま――」

「お見舞い来て帰るタイミングで、キス出来なくて欲求不満みたい――アダッ!復帰後、いきなり手刀ですか!」

「何となく、手刀お見舞いしといた方が良さそうな感じでしたし?」

「大義が無いぞ!大義もなく手刀したなぁ〜〜」


 今朝から羽衣の調子も絶好調だ。


 運ばれてきた朝食を食べ終えたタイミングで、陽葵が家にやって来た。


 病院から帰ってきてから、午前中は、お見舞いに来てくれたのだ。


「おはよ、陽葵」

「もう、大丈夫なの?」

「うん」

「良かった」


 羽衣は陽葵をリビングに案内した後に、僕を立たせて僕の部屋に行くように誘導した。


「詩季にぃ。私と静ばぁと健じぃは、ケニー出迎えのために買い出しに出るから、少なくとも午前中は陽葵ちゃんと2人きりだよぉ〜〜」


 手刀をお見舞いするか悩んだが悩んでいるうちに、羽衣は玄関の方に移動して祖父母と出掛けようとしていた。


「んじゃ、行って来るからぁ〜〜陽葵ちゃんとイチャイチャしときなぁ〜〜」


 羽衣は、祖父母と共に嵐のように出掛けて行った。


「羽衣ちゃん。元気だね」

「イギリスの彼氏が、年末年始日本に来るみたいなんですよ。だから、テンション高いんだと思います」

「そうなんだぁ〜〜遠距離だもんね。そりゃ、嬉しいよね」

「電話では話していたみたいですけど、時差もあるので長々とは話せていなかったようです」


 僕は、陽葵の隣に腰掛けた。


「体調不良で、色々とご迷惑をお掛けしました」

「ううん。良くなってよかったよ」


 陽葵はそう言うと、頭を撫でてきた。


 陽葵のなでなでは心地いいので、されるがままだ。


「昨日ね、陽翔。春乃ちゃんとデート行ったみたい。誕生日デート。楽しかったみたい」

「それなら良かったですね。2人の恋路が進むことを願うばかりです」


 もちろん、陽葵と誕生日デートに出掛けたいと思う。だけど、僕の脚の事もあり2人きりの駅を跨いでの外出は、祖父母より許可が降りていない。

 

 西原家では、学校の友人を家に呼んでの子どもの誕生日会はしないようだ。

 それを今年したのは、僕の脚に配慮してくれた結果だ。


「今度、おばさんに謝らないとですね。折角、準備してくれたのに」

「あぁ、その事だけどね。お母さん、怒ってないよ。感染したくて感染するようなものでも無いでしょ?」

「なら、良かったです」

「むしろ、もう義理の息子だと思っているみたいで、お見舞いから帰ったら結構聞かれるんだ」


 陽葵は、おばさんとのやり取りをニコニコしながら聞いてくれている。


「でね……陽葵の初めては、しっかり貰えと母から」

「…………どう返せば良いのでしょうか?」

「私に聞かれてもだよ!」


 突如の陽葵からの爆弾発言に、僕はどう返せばいいか分からなくなった。


 初めてとはそういう意味の初めてなのか。そして、それを陽葵の口から言うという事は、そういう事を期待されているのか。


 僕だって、陽葵とそういう事をしたいと思っている。


 お付き合いを開始してからよく夏休みのお泊りで、水着を着て一緒にお風呂に入ったことを思い出してしまうのだ。その時の夜は、お互いに理性の崩壊の瀬戸際に居たことを思い出す。


「陽葵……初めてはそういう意味?」


 女の子にみなまで聞くのは野暮かもしれない。


「そ、そうだよ……聞かないでよバカ……」


 陽葵は頬を赤らめながら腕を優しく叩いてきた。


「それに、寝込んでいた間にお預けだったじゃん……」


 陽葵は唇を人差し指で刺してきた。


 これだけで、陽葵が何を求めているのか解ったのでお互いに顔を近づけてキスをする。


「ぷはぁ~~長いよ」

「ごめん」

「ううん。もう一回」


 今度は、陽葵からキスをしてきた。


 お預けを食らったせいもあって陽葵も積極的だ。


 キスを繰り返していると、深い方のキスになっていった。それと、同時に僕の中でも何かのスイッチが入っていった。


 怒られるかもしれないが、陽葵の胸に手をもっていって触る。陽葵は、拒否をしないので少し揉む……


「たっだいまぁ~~」


 羽衣の元気な声に反応した僕と陽葵は急いで、身体を離した。


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