227.環境
「ごめんね。待った?」
「待ってないよ」
私は、陽翔くんとデートの約束を昨日した。
詩季くんのインフルエンザの入院も体調が悪化することもなく1日で終了した。
まぁ、その後に体調が悪化しかねない無理をしていたのだけど。
陽翔くんの誕生日に関しても詩季くんの事で私も参加出来なかったので、その埋め合わせもある。
本当は、詩季くんからはプレゼントを預かった後にそのまま陽翔くんと陽葵ちゃんの誕生日会に参加しても言いと言われていたのだけど、黒宮家の病院を使うように言っていた手前、私が手続きをしないといけないと思った。
「じゃ、行こ!」
私は、予約していたお店に向かう。
こう言う時は、黒宮家の人に仕えるメリットを感じる。
値段も手頃で穴場なご飯屋さんの情報とかが入ってくるのだ。
「ここ、ピザが美味しんだよ」
「おぉ!」
陽翔くんが好きなピザのお店を探したのだ。
メニューを見る陽翔くんの瞳は、キラキラとビックリを繰り返していた。
「どうしたの、陽翔くん。目の動きが激しいよ?」
「いや、どのピザも美味しそうなのに、値段がお手頃過ぎないか?」
「でしょ?穴場なんだよ」
私はすぐに決まったが、目移りを繰り返した陽翔くんは、30分後位に決まった。
「ごめんな、時間掛かって」
「仕方ないよ。好きな食べ物だもんね」
運ばれてきたピザを頬張る陽翔くんは、美味しいからゆっくり食べたいけど、ペースがどんどん早くなってしまう事に抗えていない。
ご飯を食べ終えた後は、どちらがお支払いするかの押し問答をしたが、陽翔くんの誕生日のお祝いなので私に払わせて欲しいと私が譲らなかった事で、陽翔くんが折れた。
「詩季の体調は大分良くなったみたいだね」
「うん」
「陽葵が昨日のお見舞いから帰って来たら事細かく報告されたよ」
「あはは、陽葵ちゃんならしそうだよね」
「まぁ、春乃もお疲れ」
「ありがと」
目的地まで移動しながら陽翔くんには、雑談をした。
陽翔くんも詩季くんの体調面を心配していたようで、入院期間中の彼の様子を尋ねられた。
クールだが、根はやさしい男の子。
そこに惹かれる。
「1日の入院中は、看護師さんがお世話したけど、基本的に寝ていたみたい。まぁ、一時父方の実家に住んでいた時は、睡眠不足気味だったからいいとは思うけど……まぁ、弱っている身体の回復に体力使っているからね」
「そうだな。早く回復してくれないと、陽葵が寂しがって被害が俺に来るからなぁ~~」
詩季くんの体調不良の間は、陽葵ちゃんは心配だったようで退院までは睡眠不足に悩まされたようだ。
「春乃は、大丈夫か?」
「別でインフルエンザの検査をして陰性だったよ」
「そうじゃないよ。疲労とか」
「楽だよ。詩季くんは実家に居なければ友人付き合い許してもらっているから。ただ、常にあっちに居る訳じゃないから、詩季くんが黒宮家の公式行事に出席とかしたらその後は、物凄い疲労だろうなと思う」
真司郎様の従者の雪さんとは今も連絡を取っている。
雪さんの主人の真司郎様は体調面に不安があるので薬の管理とかが大変以外は、いい主人みたいだ。しかし、常に黒宮家にいる雪さんは、常にその重い空気の下で生活していることは、慣れたと言えどしんどい部分があるようだ。
「そっか。その時は、ゆっくり休まないとな」
「だったら、ご褒美として陽翔くん。一緒に出掛けようよ」
「……え、いいのか?」
陽翔くんは、嬉しそうだが驚いた表情になっていた。
「うん。陽翔くんとのお出掛け楽しいし」
私なりのアピールなのだが、陽翔くんには響いているのだろうか。
「あっ、そうだ。私からのプレゼントどうだった?」
「ぶっゴホッゴホッ!」
「大丈夫?!」
「い、いや。今、思い出したらダメな事を思い出してしまってね……」
プレゼントの話をしたら陽翔くんが突然咳き込んでしまった。
咳き込んだ理由を尋ねても、これ以上は話さないというか話せない雰囲気なので追求はしない方がいいか。
私は陽翔くんの誕生日プレゼント2ペンケースを選んだ。
彼が使っているペンケースは、かなりの年季が入っている物だったので、ペンケースを選んだ。
「うん。気に入ったよ。丁度、買い換えないといけないと思ってたから嬉しいよ」
「良かった!」
プレゼントに満足してくれたようで、私は満足だ。
「来年の2月だよな。春乃の誕生日」
「うん」
陽翔くんが、私の誕生日を覚えていてくれた事が嬉しかった。
これは、脈アリのサインと見ても良いのでは無いかと思う。
「俺もプレゼント用意するから楽しみにしてくれよな」
「うん。ありがと!」
私は、サプライズで用意したが、予め、予告されるのも嬉しいと思った。




