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223.呼び出し

『 (琴葉) お母さん。詩季のお家に来て』


 娘から呼び出しを受けた。


 今朝、家に帰ると、静かだったので自室で寝ているのかと思ったが、居なかった。


 とりあえず、荷物を寝室に置こうと思って入ったら、2日程着続けたであろうシワがある制服のままで琴葉が寝ていた。


 綺麗好きな琴葉が服が汚れても着続けている事に違和感を覚えて、起こした。


 すると、琴葉は、何かを思い出したかのように、カバンを持って家を飛び出して行った。


 あまりの速さに、家を飛び出した琴葉をすぐに見失ってしまった。


 琴葉が家を飛び出した後に、リビングの机を確認すると、一昨日のご飯代がそのまま置いてあった。


 つまりは、一昨日からご飯を食べていない。ご飯も食べず、制服から着替えずに何かしていたと言うことだ。

 恐らく、何かしていた最中で、飛び出したのだろう。


 本当に、娘には悪い事をしていると思う。


 仕事にかまけて琴葉との時間を蔑ろにしている自覚はある。それに、私達の行いのせいで、詩季くんとの仲を引き裂いてしまって、詩季くんは別の女の子とのお付き合いを始めたそうだ。


 普通なら娘に寄り添ってあげないといけない状況なのは痛いほどわかる。


 だけど、会社の経営が危機的状況で手が離せない。


 会社が潰れてしまえば、琴葉を育てるお金だって無くなる。

 誠が事故で廃車になった自家用車だって買い替えたいのに、それが出来なくなる。


 とりあえず、ご飯を食べたいない琴葉が家に帰ってきた時に、ご飯を食べられるように準備をする。


 それと並行して溜まっている家事も消化していく。綺麗好きな琴葉が、帰っきたらすぐにお風呂に入れるようにお風呂を洗っておく。


 2時間程で家事を終えて、料理も完成したので、あとは温めるだけの状態にして待っているとさっきのメッセージが琴葉から送られてきた。


 私は急いで、詩季くんのお家に向かった。


 家自体は、そんなに遠くないのですぐに着いた。


「し、しずか」


 家の前には、しずかが居た。


 もしかしたら、会社関連で呼び出されたのかもしれない。という事は、琴葉は、家の中?


 色々な考えを巡らせていると、先に口を開いたのはしずかだった。


「多分、私達は子供達に呼び出されたよ」



〇〇〇



『(住吉春乃) しずか様。詩季様より、ご自宅に来て欲しいとの事です。羽衣様は、お連れにならないようにお願いします』


 春乃ちゃんからメッセージが送られてきた。


 彼女との連絡先は、彼女の黒宮支給のスマホにしかないので、大分、丁寧な文面だ。


 詩季より、呼び出しを受けた。


「ちょっと、出てくるよ」

「どこ行くの?」

「詩季に呼び出されたから家まで」

「私も行く」

「羽衣は、お留守番。詩季からのお達し」


 当然のように、羽衣も着いて来たがったが、大好きな兄の言葉だと分かると素直に頷いた。


 母親の家を出て、家に着いて呼び出した本人の到着を待っている。


「し、しずか」


 すると、先程、家に突撃してきた高梨琴葉の母親であり、元親友の葉月がここにやって来た。


 私は、この時点での呼び出しの理由を察した。


 多分、お互いの子供たちの手によって呼び出されたのだ。


 葉月は、状況を整理する事が出来ていないようであたふたしていた。


「多分、私達は子供達に呼び出されたよ」

「え?」

 

 私の説明に少し戸惑いながらも、辻褄があって来たのか、葉月は冷静さを取り戻した。


「とりあえず、家に入って」


 私は、葉月を家にあげる。そして、マスクを手渡した。


「マ、マスク?」

「うん。詩季、インフルエンザだから。移らないための予防」

「う、うん」

「それと、今日琴葉くんが、家に尋ねてきた。ボロボロな制服姿でね」

「ご、ごめんなさい。大変な時に押し掛けてしまって」


 葉月は、私が話した状況を整理すると頭を下げてきた。


「いいよ。詩季が、話してみたいってそのままドライブに行っちゃったからね。一応、琴葉くんに、インフルエンザが移っても文句言わないでね?」

「もちろんだよ。押し掛けたのは、琴葉なんだし」


 葉月は、何処か緊張しているようだ。


 そりゃそうか。


 本格的に相対した場面は、私が未来創造を辞めると宣言した時だったからな。話し合いの場では、殆ど相対しなかったからな。


「そう言えば、琴葉くん。大分、服が汚れてたけど……」

「解らないんだ。私、仕事で家空けてて」

「そっか」


 すると、車が家の前に止まる音がしたので、私は家の駐車場に案内する。


 車から降りてきた4人を家のリビングに案内する。


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