表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/326

219.掴みどころ

 柏木さんは何の目的をもって、僕の病室に来たのだろうか。


「柏木さん。何で、アイドルになったんですか?」

「ん~~内緒」

「生徒会長とアイドルの兼務は平気ですか?」

「内緒かな」


 柏木さんは、僕の質問を「秘密」という言葉でのらりくらりと交わしてくる。


 本当ならもっと突っ込みたくなるが、この人のカリスマ性がそれをさせない。線引きしている以上の事は聞いてくれるなと雰囲気で語っている。


「まともに答える気がないのは、わかりました。ですが、これだけは答えて欲しいです?」

「何?」

「何故、僕に会いに来たんですか?」

「会長補佐の望月柚葉と副会長の有隅桃花から君の評判を聞いていてね。僕の担当の看護師が君の担当に再度なったと聞いたから会わせろと我儘言った」

「それ、看護師さん怒ってません?」

「大丈夫♪大丈夫♪」


 柏木さんは、能天気なのか計算で動いているのか測り兼ねる人だ。

 だからこそ、この人を知りたい欲を狩り立たれる。


「君には、興味があった。何せ、僕が信頼している2人が面白いと言ったから。だから、実際に会ってみてどんな人か測りたかった」

「そうですか。それで、お目に叶いましたか?」

「合格も合格。大合格だよ。脚がその調子じゃ無ければ、僕のアイドルグループにでもスカウトしたい位のルックスしているしねぇ〜〜」


 この調子なら、もう1つ気になっている事も聞けるかもしれない。


「あの、柏木さんの目なんですけど……」

「僕の目?」

「はい、オッドアイなのは見て分かりますが、目のハートのハイライトは――」

「へぇ〜〜君には、僕の目がオッドアイに見えるのか」


 柏木さんは瞳のハイライトではなく、僕が彼の目がオッドアイに見える事に、驚いていた。


「皆には、オッドアイだと見えていないんですか?」

「一部の人はオッドアイって認識してる。君みたいに。でも、殆どの人は認識してない。担当の看護師さんだって、綺麗な黒色の瞳って言うよ」


 思わる所で、関心を引いてしまったようだ。


 ただ、僕が気になるのは瞳のハートのハイライトだ。


「柏木さん。貴方の瞳にはハートハイライトが見えます。そのハイライトは、何かしらの条件下で僕にも出るようです」

「へぇ〜〜君には、これも見えてるのかぁ〜〜」


 ハートのハイライトが入っている瞳を見たのは、清孝さんと真司郎くんに剣くんの3人。とその両親の片方(清孝さんの子ども)だけだ。


 僕の推測する条件が正しければ、この人も黒宮家の血を引いている人物の可能性はある。


「あぁ〜〜君に、興味を持ったキッカケあったわ!確か、今年の文化祭で可愛い女の子とベンチでイチャイチャしてたのを一目見た時だったね!」


 そう言えば、文化祭のタイミングでオーラのある人物に気を取られた事があったが、話題を変えられまいと、無理矢理戻すしかない。


「あなたは、黒宮家の一員ですか?」


 遠回しに質問してもはぐらかされるだけだ。だったら、直球真ん中勝負で質問すればいい。


 この質問の弱点は、僕自身が黒宮家に関する人物だと打ち明けているに等しい事だ。


「わかんない。僕、実の親に捨てられたからさぁ〜〜」

「――!すみません、野暮な事を聞いてしまって……」

「いいよぉ〜〜人の家の事情なんて初対面で知る訳ないからね」


 柏木さんにとって、実家関係はタブー的な要素が強い部分なのだろう。


 実の両親の事を話す時はいつもの口調だけど、目のハイライトが少しばかり黒くなっている。


「あぁ、それと。白村くんが、黒宮家に関する人だと言うのは黙っとくから安心してね」

「ありがとうございます」


 この人なら、僕が黒宮家に関する人だと言うことは黙っていてくれるだろう。


「それで、君には彼女が居るんだね?」

「はい」

「好きって感情はどんな感じなのかな?」


 予想外の質問だった。


 アイドルをしていて沢山のファンが居るであろう柏木さんの事だから、好きに関しては、人一倍知っていると思った。


「何か、以外そうな顔しているけど、アイドル全員が好きって言う感情を理解していると思わないでよ?君の好きの定義を知りたいの」

「僕にとっての好きは、この人を手離したくない。取られたくないと思うことだと思います」


 体育祭の陽葵の活躍を見て、僕は強くそう思ったのだ。


 この女の子は、誰か別の男に取られたくないと。僕の傍にずっと居て欲しいと思ったのだ。


「なるほど、君にとっての好きは、そういう事か」


 柏木さんは僕からその話を聞くと、少しばかり考え事を始めた。


 コン♪コン♪コン♪


「倖白くん。そろそろ、帰ろうか。インフルエンザが移る可能性あるし」

「……わかりましたぁ〜〜じゃ、またね。いつか会う日までぇ〜〜」


 そう言うと、柏木さんは、風のごとく僕の病室から去っていった。


「彼、面白いでしょ?」

「あはは、そうですね。何と言うか、自分を持っているって感じでした」

「そうだね……流石は、貴方と同じ黒宮家の人間だわ」

「……え?」


 看護師さんから柏木さんも黒宮家の人間だと言われた。それも驚きだが、僕が黒宮の人間だと知っている。


 さっきまでの話を外で聞いていたのか。


「何で知ってんの?って顔だけど、ここの病院は誰から紹介されたかな?そして、君の実家の影響力は侮らない方がいいよ」


 看護師さんの言葉に、改めて、黒宮家の凄さを認識させられたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ