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216.入院

「奈々ちゃんに瑛太くん、いらっしゃい!」


 今日は、私と陽翔の誕生日だ。


 お昼12時頃に始まる予定で、1時間前に、奈々ちゃんと瑛太くんが家に来てくれた。


「あれ?詩季と春乃は、まだか?てっきり、1番近い詩季が一番乗りしていると思ったけど」


 これは、私達も予想外だったのだ。


 私たちは、詩季が1番乗りして陽菜と遊んで待っていると思っていた。


  陽菜も今日は、詩季と遊べると思っていたので残念そうにしている。


 私の誕生日なのに、詩季と遊べるとテンション上がっていたのは、少々のショックではある。


「ソファか椅子の好きな方に座って」


 2人は、椅子に座った。


 奈々ちゃんが陽菜と遊ぼうとしてくれたが、人見知りした陽菜は、陽翔の後ろに隠れてしまった。


 奈々ちゃんは、残念そうな表情になった。


 多分、詩季が居れば、陽菜も詩季を中心に和が出来ていたのだろう。






「遅いね」


 時計の針は、12時を超えた。


 誕生日会の開始の時間に合わせて料理を作っていたので、既に、テーブルの上に料理は並んでいる。


 詩季と春乃ちゃんは、未だに、来ない。


 連絡もないので、何かあったのでは無いかと心配になる。


「1番近い、詩季が集合時間に遅刻……ていうか、あいつは遅刻する奴じゃねぇよな」


 瑛太くんの言葉は、皆、納得する事だ。


「ご飯冷めちゃうし、先に食べる?」

「もう少し、待ちたい」


 お母さんがそう提案してくれたが、もう少し待ちたいと思った。


 ピンポーン♪


 そこから、30分程待ったタイミングで、インターフォンが鳴って、お母さんが対応した。


 私は、このインターフォンで詩季と羽衣ちゃんと春乃ちゃんが来てくれたと思った。


 だけど、お母さんが家に迎え入れてくれたのは、春乃ちゃんだけだった。


「皆、遅れてごめん。ちょっと、お家の事でドタバタしてさ。渡すもの渡して、伝言伝えたら直ぐに出ないと行けないんだよ」


 春乃ちゃんは、走って来たのだろう。


 真冬なのに汗だくで、上着の中に来ている白色のシャツは透けてキャミソールの紐が見えている。


「春乃ちゃん、詩季は?」

「……まずは、渡すものから渡すね」


 春乃ちゃんは聞こえていないのか、私の質問を跳ね除けてカバンからプレゼント包装された物を4つ取り出して、私と陽翔に2つずつ手渡した。


「こ、これは?」

「私と詩季くんからの2人への誕生日プレゼント」

「詩季のも?」


 春乃ちゃんが、詩季の誕生日プレゼントを持ってきた。


「さっきの質問の返答だけど……」


 どうやら、質問は聞こえていたようだ。


「詩季くんは、来れなくなった」

「来れなくなった?」


 用事とかで急に来られなくなるなら仕方が無いと思う。だけど、連絡が無い事が不可解だ。


「詩季から連絡が無いんだけど。お母さんから、静子さんに連絡していたみたいだけど、反応無いみたいだし……」


 ブー♪


 すると、春乃ちゃんのスマホにメッセージが受信したようで、内容を確認した春乃ちゃんは、ホッとしたようだ。


「良かった。一大事ではないね」

「ねぇ、何かあるの?」

「今朝ね、詩季くんがお家で倒れた――うわぁ、ストップ!」


 詩季が倒れたと聞いて、私は春乃ちゃんの肩を掴んでいた。


 何か不測の事態が起きたのか、詩季の容態が心配になった。


「陽葵落ち着け。春乃が、話せない」


 陽翔に、宥められて、私は、春乃ちゃんの肩から手を離した。


「診断結果は、インフルエンザA型。気管支炎を併発している。今は、病院で点滴打って治療中。詩季並びにその家族と連絡が付かなかったのは、てんわやんわだったから」


 ストン。


 倒れたと聞いて、詩季の命の危機を感じていた私は、ホッとして床に座り込んだ。


「命に別状はないの?」

「ない。ただ、詩季くんの身体がかなりの疲労を抱えていたみたいで、免疫力が低下しているから、回復には時間を要するだろうって。とりあえず、今日1日は、入院になる」

「それで、春乃は、なんで詩季の病院とか知っているんだ?黒宮関係?」


 詩季の状態を把握出来た、陽翔が別の事を聞き出した。


「……あっ、昨日、しきやんに病院教えていたよね?」

「うん。詩季くんは、そこの病院に行った。黒宮家もよく利用するから医術も日本のトップレベルを誇るからね」


 春乃ちゃんが、詩季に病院を紹介したのだから付き添いをするのも仕方がないのだろう。


「ちなみに、陽翔くんの質問の答えだけど……」


 春乃ちゃんは、陽翔の質問に答えようとしている。


「詩季くんの体調面は、本家も気にしている所。1週間、本邸で生活して羽衣ちゃんの面倒も見てきたから見えない所でのストレスも抱えていただろうから、注意するようにと言われていたから」

「サッカーの応援に駆けつけてくれた時に、詩季くん、やつれたように見えたけど……」


 春乃ちゃんに母さんが、問いかけていた。


「多分、本人が感じていなかっただけで相当なストレスを抱えていたようだと思いますよ」

「そっか」


 お母さんは、それだけを聞くと納得して後ろに下がっていた。


「ねぇ、今からお見舞いに行きたいんだけど」


 詩季のお見舞いに行きたい。


 私の誕生日とかは、どうでもいい。


 好きな人が体調不良で苦しんでいるのだから、近くでお見舞いしたい。


「病院は、事故の件で入院した病院」

「わかった」


  私は、自分の部屋に行ってお見舞いの準備をしてから病院に向かおうとした。


「陽葵ちゃん。ストップ」

「なに?」


 春乃ちゃんに止められた。急いでお見舞いに行きたい


「静子様からの伝言で、病気が病気だから入院期間中のお見舞いは断るって」

「そ、そうなんだ……」


 お見舞いはダメだったようだ。


「それと、詩季くんからの伝言」


 詩季からの伝言。


「誕生日会に来れなくなってごめん。嫌いにならないで……だって」


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