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202.交渉開始

 今の時刻は、8時30分を過ぎた辺りだ。


 スワングループの方が来るのは、10時過ぎだ。


 10時までは、自由に時間を潰しても良いと言われた。


「ちょっと、髪直してくる」


 寝坊して軽くしかセット出来ていない髪を直しにお手洗いに移動する。


 トイレには、先客が居た。


 私のお母さんだ。


「琴葉、ごめんね。私達の事情に巻き込んで……」

「うぅん。大丈夫」

「……会社の事もだけど……詩季くんの事も」

「??」


 会社の事なら解るけど、詩季の事?


 お母さんの言っている意味が解らなかった。


「しずかが、うちの会社を辞めたのは、私達が詩季くんが入院する事になった理由をちょろまかして教えていたからなの」

「……それさぁ、私には、何も教えてくれなかったよね」

「……言い訳にしか聞こえないと思うけどね、私はお父さん経由で詩季くんの事は聞いていたの。おかしいなっていう所はあったけど、しずかと聡が居ない日本の会社を回すので低一杯になって、詳しく考える事を止めていたの」


 中学3年の時に、詩季が長期間学校に来なかった事があった。


 詩季から入院する事になったと聞いた時には、何か事情を知っているであろうと思ったお母さんに聞いたら、「入院していない」と返事が来たので、私はそれを信じたんだ。


「……あの時の入院していないは、お父さん情報なの?」

「……そう。言い訳に聞こえると思うけど、そうだよ」


 お母さんは、何かしらの罪悪感を感じているようだ。


 自分の行いで、私の恋を潰してしまったという罪悪感を感じているようだ。


「私も悪いし……自分で情報の精査しなかった訳だし……」

「私もね……高等部のクラス発表の際に、詩季くんの状態を見てどうしたらいいのか混乱して……琴葉に話したら嫌われると思ったから話さなかったの」


 私も悪いんだ。


 身内からの情報を信じて、当時の恋人である詩季の言葉に耳を傾けなかった事は、自分の責任でもあるのだ。


「……しずかさんは、これが原因で辞めたの?」

「うん。あの時の、しずかの目は、今でも忘れない。子どもを都合の良い様に使われた事に対する強い【怒り】と【殺意】に満ちていた」


 しずかさんは、お淑やかで優しい女性のイメージだった。


 そのしずかさんが、【怒り】と【殺意】の目をしたと事が、想像出来ない。


「とりあえず、戻りましょうか」

「……お母さん」


 私は、お母さんに昨日あった事を話そうと思った。


「なに?」

「実はね、昨日の帰り道に、詩季と会ったの」

「そうなの?」


 お母さんは、詩季と会社の事の繋がりに関して希望の光を見つけたような感じだった。


 詩季との繋がきりを見つけることが出来たという。


「それでね、帰り際に、また明日って言われた」

「……つまりは、今日?」

「うん」

「学校行事とかあった?」


 普通は、そう考えるだろう。だが、学校行事は全くない。だから、私は不思議なのだ。


「うぅん。ない。だから、今日、詩季と会う事なんて無いと思うけど、その事が気になってるの」


 お母さんも考え出した。


「……考えても埒が明かないわぁ。とりあえず、戻りましょう」


 お母さんは、今は、スワングループとの話し合いに集中しないといけないと、さっきの事に関しては、考えるのを一旦止めたようだ。


 会議室に戻ると、まだ1時間前だと言うのに、皆が緊張しているようだった。






 9時45分過ぎ。


 会議室の内線が鳴った。


「はい、はい。第1会議室にご案内してください」


 どうやら、スワングループの代表者が来たようだ。


 内線が会ってから10分後には、会議室の扉がノックされて、受付の人がスワングループの代表者を連れてきた。


「失礼します」

「どうぞ、お入りください。そちらの方に、お座りください」


 この状態を見るだけで、お父さん達の立場が下だと言うのがわかる。


「本日は、お忙しい中お越し頂きありがとうございます!」

「さて、話し合いの開始の前に……」


 スワングループの代表者は、再度、立ち上がった。


 何か、大事な話があるようだ。


「わかりやすく説明致しますと、私共の会社は、子会社なんですよ。上には、大きな会社が居ます」

「う、嘘でしょ?スワングループさんだってかなりの大きな会社じゃないですか?」


 大海くんのお父さんは、何とか好印象を持ってもらうべく行動を取っているように思える。


「お世辞でも嬉しいですね」

「お世辞では、ありません!」

「話は戻すとして……貴社との取引や資金援助に関して、弊社は、中継点の役割を果たしておりました」

「ちゅ、中継点?」


 大海くんのお父さんは、混乱しているようだ。私の両親や莉緒ちゃんや大海くんのお母さんも物事の判断が出来ていないようだ。


「実質的には、私どもの親会社と取引及び設立資金援助を受けていたという事です」

「つ、つまりは……」


 大海くんのお父さんの言うことに、スワングループの代表者は、呆れ気味だ。


「親会社が、貴社との取引等々を止めると判断したのです」

「そ、それなら、親会社の代表者とお話がしたいです。連絡先を教えてください」

「それなら、大丈夫です。既に、到着されたようです」

「そ、それは、受付から連絡あったか?」

「い、いえ。ないよ」


 訪問者が居れば、受付から連絡があるはずだ。だけど、それが無い事にお父さん達は、さらに混乱しているようだ。


「セキュリティシステムは、どうなっているのかな?」


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― 新着の感想 ―
 台詞で「私」が続く所が多い為、どの人物か判別し難いかもしれません。   文脈から判断するしか無いのですが、読むテンポが崩れますので、母の台詞は「私は……」→「母さんはね……」等で区別した方が分かり易…
大事な取引先の企業情報を把握しない経営者とか本当にいるのでしょうか。 どこが親会社くらい把握しないのは一時とはいえ海外展開をした会社の経営者としてはあり得ないと思いますし、そんな浅はかな経営者に対して…
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