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201.豹変

「あれ、高梨さん?」


 私に声を掛けてきたのは、住吉さんだ。


「住吉さんが、何で詩季の家の前に居るの?」


 詩季のお家の前に、住吉さんが居る理由がわからない。


「私は、詩季くんと羽衣さんのお供で来ていますから。そろそろ、2人とも用事を終えて出てきますけど、どうします?」


 住吉さんからの問いかけは、2人が話すかはわからないけど、話すなら待つと問いかけられているようだ。


「私は、帰る――」

「あれ、高梨さんではないですか。春乃さん、どうしたんですか?」

「詩季くん。偶然、通りかかったみたいですよ」

「そうですか」


 詩季は、私に対してただのクラスメイトという感覚で接している。羽衣ちゃんは、明らかに私に対しての警戒心をむき出しにしている。


「羽衣、そんなに警戒心を表立てるんじゃありません」


 詩季の注意で少しばかり、羽衣ちゃんの警戒心は和らいだように思える。


「偶然、通りかかったんですか?」

「うん。お父さん達の会社で話し合いがあって」

「確か、主要取引先に取引停止を言い渡されたんでしたよね」

「な、何で、そのこと知ってんの?」


 詩季は話し合いの場に居なかった。


 なのに、今日の話題の事を知っているのは驚きだ。一体、何処から情報を得ているのか。


「ねぇ、その情報……誰から聞いたの?」

「近いうちにわかりますよ。その反応を見るに、会社に呼ばれたという事は、高梨さん石川くん岡さんも巻き込まれると言った形でしょうか?」



 答えをはぐらかされた。


 本来ならそこを突っ込んで問いただしたい所だけど、それ以上に気になる部分がある。


 あくまで、詩季の予想だと思う。だけど、さっきの話し合いを聞いていたかのように言い当ててきている。


 私たちと一緒にいた頃と比べると180度変わっている。


「答えないけど――」

「まぁ、その返答が答えなんですけどね」

「ねぇ、私達と一緒にいた頃は、そんな感じじゃなかったよね?」

「こんな感じでしたよ?皆は、僕を見ようとしませんでしたから気が付かなかったでしょうけど」


 詩季の言葉には、突き刺さるものがある。


 私達への恨みもあるのだろうか。彼を見向きをせずに、自分たちにとって都合のいいように扱っていた事に対して。


「4人の中では、石川くんが色々とやろうとしてましたよね。その際には、裏で色々と動いていましたから。だから、君達には目に入らなかったのかも知れませんね」


 詩季の言葉に返せずにいると、車が停まった。


「詩季様、到着しました」


 住吉さんの詩季に対する呼び方が変わった。くん呼びから様呼び。


 その理由を聞くまでもなく詩季は、車に乗り込んでしまった。


 そして、車が出る直前に窓が開いた。


「では、高梨さん。また明日」


 詩季がそう言うと、車は走り去っていった。


 私は、この場に踏みとどまっても意味が無いので、家に帰った。


 家に入ると、制服のスカートだけを脱ぎ下は、元々履いていた体操ズボンだけになりベットに転がった。


 好きだった人……いや、まだ好きで引きずっている人が、変わったように見えたショックが抜けない。


 あれ?


 私は、不思議に思った。


 詩季が、別れ際に言った言葉。


『では、高梨さん。また明日』


 また明日?


 明日は、土曜日で学校がない日だ。


 今の私と詩季の関係では、学校以外で会う機会はない。


 ただの言い間違い?


 多分、以前までの私なら言い間違いだと片付けていただろう。


 だけど、最近の詩季なら何かしらの杭を打ち込んでいるのかもしれない。


 あぁ、ダメだ。


 考え込んでしまう。


 この洞察力を詩季とお付き合いしている時に、発揮できていれば、こんな結果にならなかったのかもしれない。


 私の自業自得なのだ。


 詩季と交際しているという噂のある西原陽葵さんは、それが出来たのだろう。


 今頃、大海くんと莉緒ちゃんは、運動会の真っ最中だろうか。


 私も道を間違えていなければ……


 考えるのをやめよう。


 お風呂も明日朝早くに起きればいい。


 私は、そのまま夢の世界に行った。






「珍しいじゃん、琴葉が寝坊するなんて」

「ごめん!」


 翌朝。


 何時もより早く起きて、お風呂等々身支度をしようと思ったが、いつも通りの時間に起きてしまい、お風呂はギリギリ入ったが、その他の準備が中途半端になってしまった。


 今日は、会社に到着しないといけない時間を押せないので、妥協して来た。


 服装は、制服の指定だった。


 ポロシャツは、かろうじて洗濯のがあって良かったと思う。


 というか、昨日、運動会を開催したであろう2人が元気そうなのが凄いと思う。


「じゃ、会社に向かうか」


 家から電車を乗り継ぎ会社に到着した。


 本来、土曜は会社が休みなので受付に人は居ないはずだが、今日は、大事なお客様が来られるとの事で、受付に1人だけ出勤していたようだ。


「おはようございます」

「おはようございます。お話は伺っております。第1会議室へ」

「わかりました」


 受付の方に案内されて、第1会議室まで行くと、お父さんたちが待っていた。


「来たよ」

「よく、来てくれた!後ろの席に座ってくれ」


 私たちは後ろに座って、大海くんのお父さんが、今日の流れを説明してくれた。


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