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200.缶詰状態

 金曜日の学校帰り、私達幼馴染3人は、親達が経営する会社 『株式会社 未来創造』の会議室に呼ばれた。


 ここ最近、お父さんとお母さんの帰りが遅い。だから、私と莉緒ちゃんは、大海くんのお家に行って3人で夕ご飯を食べる事が多くなっていた。


 詩季に振られて、長くなった。どうやら、西原陽葵さんと正式にお付き合いを始めたとも聞く。


 会社内において、私達は顔パスだ。


 受付に行けば、両親たちが事前に通達していれば、指定の部屋まで案内される。


「すまない、会議が長引いてな」


 大海くんのお父さんを先頭に、親達が入ってきた。


「聡さん。お久しぶりです」

「あぁ、琴葉くん。久しぶりだね」


 詩季のお父さんである、聡さんが帰国していた。帰国後はじめて対面したので挨拶をしておく。


「ところで、息子との仲はどうなんだい?」


 あぁ、そうか。


 聡さんは、知らないのか。


 私が、詩季に振られた事を。私の無自覚な行いのせいで、関係が壊れてしまったことを。


 確か、聡さんは、しずかさんから家を追い出されて、詩季と羽衣ちゃんと仲直りせよと言われているみたいだ。


 もしかしたら、私に橋渡し役を頼みたいのかもしれない。


 どう答えよう。


「すみません」


 私が答えに悩んでいると、大海くんが話し出した。


「大海くん。なんだね?」

「琴葉と詩季は、既に、破局しています。そして、詩季は、僕達とも必要最低限以外の関わりを絶っています」

「…………という事は」

「縁を切られた……という事だと思います」


 聡さんは、落胆の表情になっている。


「聡、しずかと連絡は……」

「無理だよ。告げられた条件が子ども達との仲直りなんだよ。詩季と羽衣に接触出来ないんじゃ意味がない」

「あ、あの、学校からの帰宅時等を狙ってはいかがでしょうか?」


 学校からの帰宅なら、私達から情報を提供すれば可能だ。ただ、お父さん達がここまで、慌てている理由が思いつかない。


「それは、無理だ。強引な接触を禁じられている」


 つまりは、聡さんが詩季達と接触する術を失ったという事か。


「それでも、お父さん。何で、こんなに慌ててるの?」


 私は、今の状況を整理したいと思いお父さんに聞いた。


「会社の取引の半分以上をしていた会社から契約期間満了をもっての取引停止を告げられた。そこからは、設立資金も援助してもらっていて、その返済の猶予も取り消される。そして、その会社とのパイプ役がしずかだったんだ」


 会社経営に関して、素人同然の私達にとってもヤバいというのは伝わってくる。


 お父さんに詳しく聞いたら、しずかさんが退職後に主要取引先が取引停止を告げてきた。

 つまりは、しずかさんを呼び戻さないと、話し合いが始まらないと言うことか。


「それで、何で、私たちが呼ばれたの?」


 それでも、私達が呼ばれた理由がわからない。


「明日、アポが取れたんだよ。スワングループの取引担当の方と話せるんだ。しずかを呼び戻せる算段が経たない今では、他の方法を考えるしかない」

「それで、私達に役目があるの?」

「琴葉達をダシにして申し訳ないが、交渉材料に使わせてくれ。従業員の生活を守らないといけないんだ」


 お父さんたちは、スワングループの担当者に対して、私たちの生活もあるので取引延長と返済期間の猶予をそのままにして欲しいという事だ。


「なぁ、聡。しずかとは連絡取れないのか?」

「メッセージを送っても既読無視だよ。子ども達に関して怒らせたから何とか2人と仲直りしないとどうにもならないよ」


 聡さんは、お父さんと話し込んでいた。


「琴葉。詩季くんに振られたと聞いたが、あれから詩季くんの動向はどうなんだ?」


 お父さんは、酷な事を言ってくる。


「……同級生とお付き合いしたみたい。確証は無いけど。私たちから離れてから新しい友人との関係を深めているみたい」


 お父さんは、私からの言葉を聞いて難しそうに考えている。


 会社の経営が、傾いているという事なのだろうか。いや、契約期間満了での取引停止なら契約期間によって猶予はあるのかもしれない。


「とにかく明日だ。明日、スワングループに俺たちの訴えを聞いてもらうしかない。ただでさえ、イギリス支社の失敗でこれ以上の損失は許されない」


 しずかさんが、会社を辞めた時点で、イギリス支社は失敗になったと大海くんのお父さんは告げた。


 だけど、私は思う。


 しずかさん1人が、抜けただけでプロジェクトが崩壊するなら、どれだけの杜撰な計画だったのだろうか。


「とにかく、3人には明日会社に来てくれ。俺たちは、明日に向けて今日も泊りで会議だ」


 私たちは会社から後にして、帰宅していった。


 私たちの自宅が近くなると、大海くんと莉緒ちゃんはモヤモヤとしながら、何かを告げたそうな様子だ。


 この時の2人が考えている事は、今晩、2人で運動会をしたいから夕ご飯は、別々というのを私に察して欲しい時だ。


「私、今日は一人でご飯を食べるから」

「お、おう!」

「また明日ね!」


 2人と私は別れた。


 2人はこれまでは、親の目を盗んで運動会をしていたが、親たちが会社に缶詰気味になってから頻度が増えている様に思う。いくら、性欲に盛んな時期と言っても大丈夫かと心配になる。


 ただでさえ、元生徒会長が男女交際トラブルで謹慎処分を受けて自主退学の道を選んだことがあったから心配になる。


 帰宅の道すがら、詩季の家の前を通った。


「あれ、高梨さん?」


 私の存在に声を掛けてきた人物がいた。


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