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199.フェチ

 父親の会社に話し合いに行く日は、土曜日の午前中になった。


 この日で一歩でも二歩でも前進すれば、静ばぁとの生活に戻れるだろう。


「母さん、静ばぁの家にはアレは来ているの?」

「今の所、来てないね」


 食堂で朝食を食べながら母さんに聞いた。


 母さんは、昨晩はここに泊まった。


 今の所、父親は動きを見せていない。もしかしたら、スワングループとの話し合いまで大人しくしているつもりか、もしくはその対策を練るのに時間を要しているのか。


 父親にとっては、自分たちの会社の盟友的なパートナー会社が黒宮系列の企業の末端企業だったのは、ショックだろう。


 しかも、このような取引状況な中で海外支社を作ろうとしたのだから上手く行くわけもない。


 イギリスに支社を作って営業活動をしていたらしいが、契約は一件も取れなかったようだ。


 そして、英語が堪能に話せる母さんが帰国して退職した事で、イギリス支社は潰れたそうだ。


「その情報は黒宮情報?」

「そそ。兵庫県内の情報は、基本的には黒宮の人間で知らない人物は居ないね。清孝さんは、ほとんど頭に入っているよ」

「だから、あんなに直ぐに物事の取捨選択が出来るんですね」


 朝食を食べ終えて学校に向かう準備を終えた、僕と羽衣は春乃さんと共に玄関まで移動すると、春樹さんが少し遅れてやって来て車を取りに行った。


「詩季~~私も乗せてもらう!」


 母さんも車に乗っていくようだ。


「でも、流石にキツイよね。距離があるから、こんな早朝に家を出ないといけないんだから」


 現在の時刻は、6時過ぎだ。


 黒宮本邸は、学校のある神戸市の市外にある。しかも、田舎の方にあるので、学校までは時間が掛かってしまうのだ。


「お車用意出来ました」


 僕達は、車に乗って学校に向けて出発した。


「しずか様も詩季様と羽衣様を送り届けた後に、会社まで送りますね」

「ありがとうございます。助かります」

「いえ、日頃からお世話になっていますから」

「いえいえ、こちらこそ今回は――」


 母さんは、この黒服さんが春乃さんの父親だと気が付いているのだろうか。


 多分、気が付いていないだろう。


 まぁ、見ていて面白いし放っておくか。


「ねぇ、ねぇ、詩季にぃさん!今日の私どう?」

「可愛いけど?」


 珍しく、羽衣が僕に可愛いをねだってきたので可愛いと伝えて頭を撫でて上げる。


 何時もならこれで、機嫌が良くなるのだが今日は違ったようだ。


「違うんだなぁ〜〜」

「何が?」

「私、今日からタイツにしたんだけど?詩季にぃさんが、大好きな黒タイ――グハァ!」

「何を言いたいのかな?」

「詩季にぃさん大好きな黒タイツにしたよぉ〜〜そそるだろ?」


 どうやら、僕がタイツフェチだと勘違いをしているようだ。恐らく、先日に陽葵にタイツの話をした事が影響しているのだろう。


「僕は、タイツフェチじゃないですよ?」

「え、違うの?タイツ破きたい――ちょ〜と、待とうか、詩季にぃ。手刀の構えをやめぃ!!」


 羽衣の手によってあらぬ性癖をでっち上げられそうになったのを何とか阻止した。


 気温も下がってきたので、春乃さんもタイツを履き出している。


「明日だねぇ〜〜」

「そうだねぇ〜〜」


 今日は、金曜日。


 つまりは、明日に父親たちの会社を訪れる事になっている。


「今日は、よく寝ないとね?詩季にぃさん」

「わかってるよ。羽衣」


 最近は、春乃さんの監視と羽衣が一緒に寝る際に、抱きついて来るので、羽衣が寝た後に、こっそり起きて何か出来なくなっている。

 そのため、一度布団に入った後は寝るしかする事が無いのだ。お陰で、ここ3日は7時間は睡眠を取れている。


「詩季様、羽衣様、今日は学校近くのスーパーで降ろしますね!」

「わかりました」


 予めの予告通り学校近くのスーパーで、僕と羽衣と春乃さんの学校メンバーは降りた。春樹さんは、母さんを会社まで送った後に、本邸に戻るだろう。


「この登下校も、もうすぐ終わりですかね?」

「春乃さんにとっては、嬉しいんじゃないですか?」

「なんで?」

「愛しの陽翔くんと登校出来るかも――すみませんが、手刀の構えは、止めて頂けますか?」


 陽翔くんの話題を出すと、最近は、手刀の構えを取って抑制しようとしてくるのだ。


「だって、陽翔くんとは通学路が途中からだし……」

「僕が言えた事では無いですけど、誘えばいいじゃないですか?」

「簡単に言わないでよぉ〜〜誘うだけでも、緊張するんだからぁ〜〜」


 今の春乃さんの表情を陽翔くんに見せれば、一発で惚れてしまうと思うのだが、それを言えば怒らせてしまうので黙っておく。


 そして、金曜日もいつも通りの日常を過ごしていくのだった。


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