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198.紋章

「ただいま帰りました」


 今日の学校が終わり、黒宮本邸に帰ってきた。


 僕と羽衣は、自分の部屋に移動して鞄を置いて、私服に着替える。


 ここにいる間は、お家のような私服は着れない。よそ行きのワンランク下げたレベルの服を着ている。


「詩季様、この後なんですけど……」


 春乃さんも従者服(メイド服)に着替えて、部屋に来た。


 この姿を写真に撮って陽翔くんに送れば、歓喜乱舞に喜ぶ事は間違いない。まぁ、春乃さんに提案してみたら、即却下&手刀の構えをしたので、即提案即廃案になったのだけど。


「……何ですか?」


 僕の視線に違和感を覚えたであろう、春乃さんが、ジト目で僕を見る。


「やっぱり、陽翔くんにその姿送ったらダメ?」

「ダメです!……しばかれたいんですか?」


 そう言うと、春乃さんは、手刀の構えをした。羽衣も、僕が逃げられないように抑える構えをしたので、僕は降参ジェスチャーをした。


「それで、何かあるのですか?」


 基本的には、帰宅後は夕食が完成するまでは、別行動なのだ。それが、帰宅して早々に呼び出しに来たということは、何かある。


「はい、今日の夕ご飯には、しずか様がご同席して……聡様の会社に関する話し合いを持たれるそうです」

「なるほど、その話し合いに参加するメンバーは?」

「剣様一家とまとい様一家は、別室で夕食をお召し上がります」

「つまりは、僕と羽衣が参加するしないを聞きに来たと言う訳ですね」

「はい」

「僕は参加します。羽衣は?」

「私も!」


 参加しない理由はない。


 早く、父親との問題を進めないことには、何時までも家には帰れなくなる。つまりは、陽葵との2人の時間が取れない。


 問題を早期解決は難しいが、一二歩進めることは出来るだろう。


「わかりました。清孝様に、そうお伝えします。しずか様は、もうすぐ到着されます。ここに、通しても?」

「OK」


 それから数十分が経過したタイミングで、母さんが本邸に到着して部屋にやってきた。


「久しぶり、母さん」

「お母さん、久しぶりぃ〜〜」

「2人とも、元気そうね。詩季、寝てる?」


 やはり、親なのだろう。


 睡眠時間が、減っている事をすぐさま見破られた。


「大丈夫です。慣れてきましたから」

「それなら、いいけど……」


 暗に否定すれば、必要以上に心配をかけてしまうので肯定しておく。


「それで、父親の動向は?」

「今は、石川さんの所でお世話になっているみたい」

「会社は?」

「主要取引先だった黒宮系列の会社に、会いたいという要請を結構な頻度で出してる」

「つまりは、その対応という訳ですね」

「そそ」


株式会社 未来創造


 父親達が作った会社だ。


株式会社 スワングループ


 父親達の会社の主要取引先であり黒宮からの設立資金援助の経由会社だ。


「私は、黒宮直轄の会社に転職したんだよ。それでね、今回の話し合いは、私が黒宮の代表としてスワングループに、出向の形を取るの」


 なるほど。母さんが首取り役か。


 父親にとっては、これでもないダメージだろうな。


「失礼します」

「あっ、春乃ちゃん。詩季と羽衣のお世話ありがとうね!」

「いえ、お仕事ですから。しずか様、清孝様がお話したいと……」

「なら、僕と羽衣も行きます」

「わかりました」


 清孝さんが待っている書斎に向かう。


「しずかくん。よく来てくれた。詩季くんに羽衣ちゃんも来たか!」


 僕達は、ソファに腰掛けた。


 清孝さんは、向かいのソファに移動して、遅れてやってきた誠子さんも清孝さんの隣に座った。


 春乃さんは、僕と羽衣の後ろにたっている。


「ところで、おじい様」

「おやぁ、呼び方が変わったの?」


 この人は、何を考えているのだろうか。表情の1つでも変えてくれればわかるものの。ずっと、ニッコリのままだ。


「お母様を父親の会社との取引諸々の交渉に赴かせると聞きました」

「そうじゃな。一応は、これから黒宮直轄会社である程度の立ち位置で働いて貰う訳だから実績作りもある」


 実績作りと言われれば、仕方がない部分もある。


 能力があっても実績が無ければ、近い将来組織から浮いてしまう。


 そのための実績作りを行わせるのか。しかも、母さん自身にとって身近とも言える人物相手に。


 ある種の踏み絵要素もありそうだ。


 妥協をしないかを


「なるほど、踏み絵ですか。裏切らないかどうかの。そして、僕と羽衣は人質的な立ち位置ですか?」

「そんな悪どい事はしないよ。しずかくん含め家族だと思っておる」


 この人は、本心を話さない。


 なら、これ以上追求しても話さないだろう。


「では、その話し合いに、僕も同席させてくれませんか?」

「私もお願いします」

「2人が同席?」

「はい。父親……白村聡にとって、最も屈辱的な出来事を突きつけて、背後に黒宮が居ると突き付けるのです」

「フフッ」


 清孝さんの笑い方が変わった。


 これまでの本心を隠す笑顔から面白いことが起こったのか認識したかのような笑顔に変わった。


「いいね。その案採用!2人に、黒宮の紋章が入った上着を支給せよ」


 清孝さんは、僕の説いた作戦に賛成の立場なのだろう。


「何で、僕の作戦を聞き入れて下さったのですか?」

「なぁ~に、バカ息子の教育の一貫だが、真実はそこにあるだろうからな。詩季くんにとっては、けりを付けるには絶好の機会だろ?」

「……ありがとうございます」


 清孝さんには、何が見えているのだろうか。


 答えがそこにはある?


 どう言う事だろうか。


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