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192.相談

「失礼します」


 僕の部屋に、真司郎くんが入ってきた。


 部屋には、僕と真司郎くんを初めとして、羽衣に春乃さんが居る。


「適当な所に座ってください」


 真司郎くんは、部屋にある椅子に腰掛けた。


 僕達3人は、ベットに腰掛けた。


「すみません。急に、お話ししたいと言い出して」

「いえいえ、大丈夫ですよ」


 真司郎くんが、話したい内容は何だろうか。


 僕の中の予想では、黒宮家内における継承に関する話し合い……つまりは、僕が、黒宮を継ぐ気があるかを測りに来ていると思っている。


「今日は、相談がありまして……」


 来た。


 正直な所、黒宮の恩恵は受けたいと思っている。だから、学校内での結果に拘った。


 その動きが、当主の座を狙っていると見られても仕方がない。


「あ、あの。詩季さんは、恋人は、いらっしゃいますか?」

「ねら……えっ?」

「……はい?」


 恋人は、居ますか?


 当主の座は、狙っていないと質問されてすぐに伝えようとしていたので、真司郎くんの問に噛み合わない答えを言ってしまった。


「すみません。もう一度、質問いいですか?」

「はい。詩季さんには、恋人はいらっしゃいますか」


 真司郎くんに謝りたい。


 当主に関する権力争いに関して質問されると思っていたが、恋愛相談だったとは。


「恋人は、いますよ」

「そうですか」

「それが、どうしたんですか?」

「相談としては――」


 真司郎くんからの相談は、幼馴染と交際していたそうだ。過去形だったからわかる通り、もう別れている。


 告白したのは真司郎くんからで、振ったのも真司郎くんから。振る際に、嘘告白だったと言って振ったらしい。


 内容だけ聞くと、真司郎くんは、どれだけ酷い事をしていたと思ってしまう。こうなっているのは、自分自身の自業自得だと思ってしまう。


「では、何で、嘘告白だと言って振ったんですか?真司郎くんの様子だと、まだ好きですよね?その幼馴染の子が」

「……死ぬ予定だったんですよ……僕」


 この時、安直に理由を聞いた事を後悔した。


 真司郎くんは、産まれ付き身体が弱かったそうだ。


 真司郎の身体が弱い事は、以前に聞いた覚えがあるので知ってはいた。


 彼には、小さい頃から一緒に居た幼馴染2人(男の子と女の子)が居た。


 2人共、活発で運動が大好きだった。しかし、真司郎くんの体調面を気遣ってくれたりする優しい一面があって、2人と過ごす事は、楽しかった。


 ある日、想いを抑えきれずに女の子に告白した。


 振られると思っていたそうだ。


 自分は、身体が弱い。


 仲のいい幼馴染の男の子は、風邪にも滅多にならないような強い男の子だったそうだ。


 しかし、女の子は、真司郎くんが、告白したら涙目になって抱きついてきて了承してくれたらしい。


 そこからは、2人で楽しく過ごしていたそうだ。


 幼馴染の男の子からも祝福されて、仲良く絆を深めていっていたそうだ。


 そして、絆を深めて、身体を交えようと思ったタイミングで、真司郎くんの体調に異変が生じたようだ。


 元々、身体が弱かった事も理解していた女の子が、気を利かせて、「次、頑張ろう!」で、その場は収まったらしい。


 しかし、真司郎くんの体調は、回復する傾向を見せずに、悪化していたようだ。


 真司郎くんは、彼女だった女の子はもちろん、家族にも黙っていたそうだ。


 幼馴染の女の子が、家族旅行に行っている間に、事件は起こったそうだ。


 身体が、耐えきれずに悲鳴をあげてしまったようだ。


 家族で、ご飯を食べているタイミングで、真司郎くんは倒れてしまい病院に搬送された。


 病院の先生からは、心臓に大きな病気が発見されたと。

 日本での治療は難しく、アメリカに居る専門医を頼らないといけない程、悪かったようだ。


 真司郎くんは、病気のことを幼馴染達には内緒にしたようだ。両親も子供達の関係は、子供達に任せていたそうだ。


 真司郎くんは、この時思ったそうだ。


『僕は、もう死ぬ運命だ』


 死ぬと思った真司郎くんは、心の中が、パニックになっていたそうだ。


 自分にとって大切な人が、どうしたら悲しまずに、自分とお別れが出来るかを考えたそうだ。


 それが、告白が嘘告白という事にして嫌われるように仕向けることだったみたいだ。


 そして、幼馴染の女の子に、そう告げた。


 女の子は、号泣してそれを聞きつけた幼馴染の男の子に、真司郎くんから事情を話したい。案の定、ビンタされたみたいだ。


 そこからは、幼馴染2人からは避けられ、噂が広まったクラスからは、除け者扱いだったようだ。


 そして、その年が明けたタイミングで、治療のためアメリカに渡ったそうだ。


 真司郎くんは、親の悪足掻きだと思っていたようだが、両親は、黒宮の伝手を使いに使って、日本の病院で、言われた先生に治療をしてもらうようにしたそうだ。


 そして、治療は上手くいって、これからも生きられるようになったそうだ。


 その時に、激しく後悔したそうだ。


 でも、もう再会する事は無いと思っていたそうだ。


 そして、アメリカでの治療を終えて、日本に帰る事になった。


 日本に帰って、アメリカに行く前に通っていた学校に再度通う事になった。つまりは、幼馴染の2人が居る。しかも、同じクラスになったそうだ。


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― 新着の感想 ―
あー、善かれと信じた思い遣りが裏目に……色々と儘なりませぬな。
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