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185.打ち明け

「お邪魔します」

「こういった機会でお会いするのは初めてですので、自己紹介しますね。住吉春乃と申します。陽翔くんと陽葵さんとは、仲良くさせていただいております」


 春乃さんは、おじさんとおばさんに改めて挨拶をしていた。


 陽菜ちゃんは、小学校のお友達と家に遊びに行っているらしい。


「とにかく、上がってちょうだい!リビングのソファに座って!」


 僕と春乃さんは、リビングのソファに腰掛けた。


 おばさんが、僕と春乃さんの前に、紅茶を置いてくれて陽葵と陽翔くんと共に、向かい側に座った。


「まずは、陽葵と詩季くんは、お付き合い開始したんだよね?」

「はい。昨日、気持ちを伝えて受諾頂きました」

「そんなに、かしこまらなくていいよ!だけど、ただの交際報告では無さそうだけど?」

「そうですね。主な訪問の理由は、嘘に対する謝罪です。その嘘は、僕のお家に関する事です」


 そう言った後に、僕は、西原さん一家それぞれの表情を見た。

 恐らく、おばさんは、ある程度の答えを持っているに違いない。その他は、何が起きているんだと言った様子だった。


「おばさんは、察しているようですね。僕の誕生日に電話してきましたし」

「そうだね」

「以前、話した、僕の実家に関してですけど。黒宮の親戚の白村家という事でしたが……僕の血筋は、黒宮本家にあります。そして、黒宮家における継承順位1番の家系です」


 言葉だけでは、難しいので、ペンと紙を用意してもらって説明を行っていった。


「桜の予想通りだ……」

「そうだね」

「今まで、嘘をついていて申し訳ありません」

「私からも謝らせてください」


 僕と春乃さんは、頭を下げた。


「仕方がないだろう。色々と環境が変わったんだから」


 返事をしてくれたのは、おじさんだった。


「詩季くんは、急に、環境が変わった事で関わる人が増えた。これまで近くに居た人に、疑心感を覚えてしまうのは仕方がない。まだ、16歳の高校生だからね。陽葵は、そこの気持ちを解れとは言わないが、理解しなさい。友人の態度が豹変する事の怖さをね」

「うん」

「住吉さんも、大変だっただろう。自分が、黒宮家と強い関わりがあると友人にバレれば、ふとどきな思いを持った人間が近寄ってくるかもしれないと。陽翔。この子が好きなら、陽葵に言った事と同じだぞ」

「うん」


 おじさんは、子ども達に叱責をするような強い口調で、話していた。


「2人は、悪くない。むしろ、被害者だ。親達の不手際や思惑に振り回されたね」


 被害者だと言ってくれる事は、予想していなかった。僕は、陽葵達に対して嘘をついた加害者だと思った。


「陽葵。ショックを受けたかもしれないが、しっかりと詩季くんは、自分の口から真実を話してくれたんだ。あの時、詩季くんの隣に居るために、努力をするって決めたんだろ?」

「うん」

「なら、落ち込んでいる場合か?」


 それを聞くと、陽葵は、僕の隣に来て座ってくれた。


「詩季、本当の事を話してくれてありがとう。これから、君の支えになれるように頑張るよ」

「ありがとうございます」


 おじさんのお陰で、陽葵と交際してすぐに、気まずくなるというのは防げた。これから、頭が上がらない事は、間違いない。


「陽翔も、住吉さんに何か言うことあるんじゃないか?」

「う、うん。大変だったんだな。力になれなくて済まない」

「大丈夫だよ!」


 陽翔くんは、出来事の処理が追いついていないようで、おじさんから自分が春乃さんに好意を寄せている事をバラされた事に気がついていない様子だった。


「それで、詩季くんは、黒宮家を継ぐの?」


 おばさんが、直球をついて質問してきた。


 そりゃ、気になるよね。


 黒宮家内において、次期当主の正統な血筋にいるのが僕だ。


 家を継ぐ継がないは、親としては気になる問題だと思う。


 僕は、手を両手に開いた。


 そう、知らないと言うジェスチャーに使われるポーズだ。


「わからないです。現当主の清孝さんの考えている事は、誰にもわからないです」

「詩季様の発言には、間違いないと思います。まだ、清孝様は、自分の後継者を表明していません。ただ、継承順位においては、詩季様は、かなりの高順位に居るのは確かです」


 清孝さんの考えている事は、解らない。


 春乃さんの言う通り、継承順位が高いのは事実だろうが、最近、黒宮に入ったばかりの新参者であり裏切者の息子という立ち位置の僕の事を良く思われていないだろう。


「まぁ、黒宮の立ち位置は、色々と僕にとっては、メリットが多いんですよね」

「メリット?」

「黒宮内で実績を積めば、将来的な就職においてかなりのアドバンテージを得る事になるのも1つです。まぁ、それは、あくまで予備的なメリットですね」

「本当の目的があるんだね」


 話してもいいか。


 黒宮と深くかかわる事を決めた理由は、主にこれなのだから。


「父親に選択させたいんですよ。今後、僕達と家族として接したいのか、仕事人として接したいのか」

「そっか……そこには、陽葵は関わらせたいの?」

「僕の家の事ですからね。関わらせるつもりはありません。僕の家の事は、僕達家族の問題ですから」

「そう」


 僕は、陽葵と陽翔くんに伝えないといけない事がある。春乃さんも同じような表情になった。


「僕と春乃さんの関係性は、主人と従者の関係です。プライベート上は、友人です」


 誤解されたくないので、しっかりと打ち明けて置く。


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