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184.嘘

「おはようございます」

「おやぁ、詩季。早いねぇ〜〜」

「静ばぁこそ、早いじゃん」


 早起きな静ばぁが、朝食の準備をしていた。


「ちょっと、髪の手入れしてくる」


 洗面台に、移動してワックスを使ったりして髪を整える。黒宮本邸に、訪問する際にした髪型にしていく。


 祖父母のお家に、住み出してから祖父母に対しては敬語だったが、今では、事故以前のような感覚で喋る事が出来ている。


 これも、羽衣と陽葵さんの2人のお陰だ。


 それと、陽葵さんの呼び方も変えたいな。


「おぉ〜〜決めねんねぇ〜〜詩季にぃ〜〜」

「かっかっこいいよ。詩季くん」


 リビングから戻ると、髪型を見た羽衣と陽葵さんから感想を言われた。


 よし、呼び方を変えるならしれっと変えて意識させるか。


「陽葵の家に、挨拶に行くんだからしっかりしないとね」

「へぇ〜〜いきなり、挨拶ねぇ〜〜って呼び方かわったあぁ?!」


 何で、陽葵さんより羽衣が驚くんだとツッコミを入れたくなる。陽葵さんの表情を見ると、目をぱちくりしていた。


「呼び捨て?」

 顔を傾けて、?をイメージさせているのが、可愛いと思ったのは、とりあえずほっておく。


「嫌でしたか?」

「うぅん。嫌じゃないよ!驚いただけ」

「お付き合い初める訳ですし……距離を縮めるためにも呼び方かえようと」

「うん!陽葵って呼んで!」

「じゃぁ、陽葵も僕のことは、くん付けは要らないですよ」

「おっしゃぉ〜〜私も詩季と呼ぶ――あだぁ!」

「羽衣は、今まで通りにしなさい」


 そこは、陽葵が返事をする場面で、何故、羽衣がしゃしゃり出て返事をするのだろうか。


 陽葵は、僕達兄妹のやり取りを見てお腹を抱えて笑っているので嫌だとは思っていないのは確かだ。


「2人の兄妹漫才見てるの、笑い疲れるよ!」

「「仕方がないでしょ、これがボケる(ツッコむ)だから!!」」

「息ピッタリ!」


 3人のやり取りは、静ばぁが、健じぃを起こして朝食に連れてくるまで行われた。


「恋人同士になってから、イチャイチャ度が上がりそうだねぇ〜〜」

「何かなぁ〜〜?」

「ちょっと、詩季にぃ〜〜チョップの構えはやめて!」

「こらこら、可愛い妹をいじめないの?」


 陽葵に、注意されたので矛に収める事にする。


「大丈夫?」

「うん!」


 陽葵の帰宅準備は整った。体操服は、陽翔くんが回収して行ったが、制服は置いたままだった。


「では、いってきます」

「いってらっしゃぁ〜い!」


 僕は、陽葵と共に、彼女のお家に向かって家を出た。


「詩季くん。今日は、なんでお母さん達に会いたいの?」

「くん付けの方が呼びやすいですか?」

「あっ!ごめん。ついつい……」


 陽葵さんのおっちょこちょいも可愛いものだと思う。


「おばさんに、会いたい理由はね。陽葵にも陽翔にも嘘ついたから。そのケジメ」

「えっ、詩季が嘘?」


 陽葵は、驚いた表情を見せた。


 この女の子は、純粋過ぎると思う。あの時の僕の説明なら恐らくおばさんは、ある程度察している物があるだろう。だから、僕の誕生日の時に、電話をしてきたのだ。


「僕のお家に関することで、嘘をつきました。陽葵が、そんな人じゃないと言うのは、接していてわかっていましたけど、自信が持てずに。だから、陽葵と真剣に交際する上で、話しておかないといけないです」

「そうなんだ……もしかして、陽翔のためもあったりする?」


 純粋だが鋭い視点の見方があるようだ。


「陽翔くんのためというより、僕と春乃さんがお互いの保身のために嘘をつきましたね。僕と春乃さんの関係性は……簡単に、受け入れて貰えるものでは無いですからね」

「確か、元々は婚約者同士で、今は主従関係なんだよね?」

「大分、濁したんですよね。その方が、陽葵達には理解してもらいやすいと思ったから」


 先に、陽葵さんには打ち明けておこう。嫌われるかもしれない。


 僕は、卑怯な事をした。


 本来なら、先に話しておかなければいけないことを話さずに、告白したのだ。


 近くの公園に移動して、ベンチに腰かけた。


 嘘を吐いて関係性を維持していたのだから、当然の禊だろう。


「2人とも、ここで何してるの?」

「春乃ちゃん?!」

「やっぱり、来ましたか」

「そりゃ、主人が禊をしようとしてるんだから、私も陽翔くんに対して禊をしないと対等じゃないじゃん?ご当主様は、それを許さないから」


 春乃さんは、昨日の僕のメッセージを見てから、陽葵の家の前で待っていたが、中々、来なかったので、陽翔くんに見つかり、2人は、ここじゃいないかと言われて迎えにきたようだ。


「それに、陽葵ちゃんが詩季くんとお付き合いするなら陽葵ちゃんの事も主人として見ないといけないですからね」

「そんな、私たちはおとも――」

「そうですね。僕の実家だと、仕方が無い事ですね……春乃」

「はい、詩季様」


 僕と春乃さんの呼び方を聞いて、陽葵さんは少しばかり混乱していた。


「陽葵、僕が春乃さんを呼び捨てで呼ぶのと、春乃さんが僕の事を様付けで呼ぶ時は、実家関連の時です。プライベートの時で使い分けます」

「そうなんだ」

「では、陽葵の家に行きましょう」


 僕達3人は、陽葵の家に向かうのだった。


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