180.決勝戦
決勝に進んだのは、
1年1組
2年3組
3年1組
だった。
星川先輩が、所属する2年1組は、僅差であったが、決勝進出を逃してしまったようだ。
午後からの決勝は、男子は騎馬戦。女子はリレーだ。
リレーに関しては、順番を決めて後は流れを任せるのみになるが、男子の騎馬戦は、各クラスのリーダーの采配にかかっている。
「では、午後の運営はおまかせいたしたします」
午後の生徒会運営は、星川先輩が行うことになった。
大事な決勝に、クラスで関わる事が出来て一安心だ。
「決勝女子リレーの参加選手は、入場門に集まってください」
アナウンスが流れた。
「春乃さん。行ってきてください。女子のリレーが終わりましたら、陽葵さんにここに迎えに来るように伝えてください」
女子のリレーの招集が掛かってしまったので、リレー終了後に陽葵さんにここまで迎えに来てもらう事にする。
「詩季にぃ、頑張ってんねぇ〜〜」
僕が、着席した隣に羽衣が座ってきた。
「陽葵さんの頑張りで楽に、クラス指揮取れました」
「リレーは、指揮取らないの?」
「リレーの指揮は、順番までですからね。後は、流れに身を任せるのみです」
3クラスの生徒が入場してきた。
女子リレーの上位2クラスが、男子の騎馬戦に進み戦う事になる。女子のリレーは、準決勝の位置付けだ。
女子リレーが、スタートした。
決勝に進んだだけあって、3クラスとも僅差で争っている。
うちのクラスのバトンは、春乃さんに渡った。春乃さんは、予想外に足の速さを持っていたようで、3クラスから頭一つ抜けた。春乃さんからバトンを受けた奈々さんで、少々、後方との差が縮められた。
そして、次の走者で、3年1組が追い上げた事で、1年1組と3年1組の一騎打ちの様相になった。
そして、アンカーの陽葵さんにバトンが渡った。
陽葵さんは、一騎打ちの様相だったが一気に離して行った。
陽葵さんが、距離を空けて行き3年1組のアンカーも決死の追い上げを見せたが、陽葵さんが振り切った。
決勝は、1年1組と3年1組の対決になった。
最後、走っている陽葵さんに見とれてしまった。隣に座っている羽衣が、ニヤニヤしているので、バレているだろう。
陽葵さんを好きと自覚してから陽葵さんの事が愛おしくて仕方がない。自分の事に巻き込みたくないがために、恋人前提の友人となっているが、僕も新たな覚悟を持って彼女を守る覚悟を持ってお付き合いを申し込もうか。
「詩季にぃさん、1人じゃないじゃん?付き合いなよ?」
「ありがとう。よく考えるよ」
羽衣は、自分も味方になるよと言う意思が込められているように思える。
女子が退場するタイミングで、陽葵さんが運営本部に迎えに来てくれた。
「陽葵ちゃん、やっほぉ~~」
「あっ羽衣ちゃん!」
羽衣が陽葵さんのことを手を振って呼んだ。その間に、僕はインカムを装着しておいた。
「陽葵さん、凄かったですよ」
反対側に座った陽葵さんの頭を撫でた。急に頭を触られた陽葵さんは嫌がる様子は、見せずに、何処か嬉し
そうな表情になっていた。
「陽葵ちゃん。近々、良い事あるかもよぉ~~」
「良い事?」
羽衣が、ニヤニヤしているが、ある種の暴走モードに突入している状態を止められる訳もないので見逃す。
「さぁ、今年度体育祭の決勝戦……3年1組と1年1組男子の騎馬戦が始まります。入場の準備をお願いします」
「では、移動しましょうか」
両クラスの男子が騎馬戦のために入場して各陣営ポジションに配置した。
決勝の騎馬戦は、大将のハチマキを取った方が勝ちと言うルールだ。
僕と陽葵さんは、自分のクラス席に戻って来た。
当たり前だが、男子が騎馬戦に出払っているので、女子だけで男子は僕だけだ。まぁ、陽葵さんにしか興味がないのだけど。
「陽葵さん、体操服泥だらけですね」
「沢山、頑張ったからね。お陰で、帰りはスカートの中には履けないかな?」
「さぁ、指揮頑張りますか」
「ちょっと、そこはパンチラ期待するかもとかないの?」
陽葵さんと話していると他の女子達から「イチャつくなら2人の時にしろ」と言わんばかりの空気を醸し出していた。春乃さんと奈々さんからは、後々、色々と言われそうだ。
「では、準備をして下さい」
アナウンスがされた事で、各クラスが騎馬を作り出した。
騎馬を作って戦う生徒に、騎馬にならずに地上で、僕からの指揮を受け取って指示を出す役割の生徒がそれぞれ配置に就いた。
パァン♪
教師の手によって、スターターピストルが鳴らされて、決勝が始まった。
ここからは、いかにリーダーが状況を判断して的確な指示を出せるかになってくる。
3年1組の実質的リーダーの松本先輩とのリーダー一騎打ちだ。
「A班は、迂回してください」
「B班後方注意!」
僕の指示を地上の指示役を通して出していく。
女子とは違って、高校3年生と高校1年生の男子では、体格差がある。
同じ身長でも筋力差があり、まともに戦ったら筋力差でやられてしまう。
そこは、リーダーとして頭を使って回避しながら戦って何とか、互角の戦いを繰り広げている。
1年1組の快進撃は、ここでも止まらない。
そう思わせられる戦いを繰り広げていた。




