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178.体育祭前日

「それでは、配布した作戦を基本として進めます。しかし、状況によっては臨機応変に変わる可能性がありますので、よろしくお願いします」


 体育祭前日に、各競技の作戦会議をクラス全体で行った。


 教卓付近の椅子には、体育委員の2人とリーダー・副リーダーの僕と陽葵さん。サブ要員の陽翔くんが座っていた。


 体育祭は、最初に学年内のクラス単位で1~3番を決定する予選を行う。予選を突破した3クラスと、敗者復活戦を勝ち抜いた1クラスによる決勝を行って勝者を決める。


 その勝ち抜き戦含めてリーダーの手腕が問われてしまう。


「僕のクラスにおいて1番のハンデは、僕・ 住吉・桜井が、生徒会で抜けている間だと思います」


 クラスの席から指示を出すリーダーに、現場の指揮官的な立ち位置になるであろう生徒が抜ける場合がある。

 だからこそ、例年は、生徒会役員が入っているクラスは、早々と予選敗退になる傾向がある。


「その際は、作戦表に書いてある指揮系統は、遵守して下さい。指揮系統の責任は、僕が全て背負います」


 責任を背負いますは、僕なりの強い覚悟だ。


「そして、クラス内には、今、色々な感情を持っている方がいるでしょう。中には、1学期にやらかしてしまってクラス内で微妙な立ち位置にある人も居るはずです」

 

 名指しはしない。


 理由は、本人たちにとって自分たちの評価をどう考えているかを測る側面もある。


 僕の最後の最後の情けと言う名のチャンスだ。


「何も、全て言う通りにしろとは言いません。空気の流れを読んで行動してくださいね」


 これを、警告と捉えるのか脅しと捉えるのかは、自由だ。


「そして、最終的には、勝利しましょう」


 体育祭の序盤は生徒会役員全員が、仕事があるためクラスから離れる事になっている。


 だからこそ、いきなり陽葵さんには大変な役回りとなる。だけど、以前の陽葵さんの表情や目を見ると大丈夫だと確信が持てる。


「――という事で、最初の方は頼みます。では、また明日」

「またね!」


 クラス解散後に、陽葵さんと明日についての打ち合わせを終えて、生徒会の打ち合わせ向かう。


 本当に、生徒会業務とクラスのリーダーの兼務は大変だ。生徒会役員が居るクラスが体育祭において高確率で予選落ちする理由が解った気がする。生徒会役員は、体育祭までの準備と当日の運営だけで疲労も溜まるし、ストレスも抱えてしまうのだ。


「失礼します」

「OK。じゃ、明日に向けての最後の打ち合わせしようか」


 打ち合わせには、中等部の生徒会役員も来ていた。そして、そこには見慣れた人物が一名紛れ込んでいた。


「羽衣は、何をしているのですか?」


 羽衣が中等部の生徒会に紛れ込んでいたのだ。


「羽衣先輩と知り合いなんですか?」


 中等部の生徒会長は、確か松下(まつした)新稲(にいな)さんだったか。


「松下さん。羽衣の苗字は?」

「えっと……白村です」

「僕の苗字は?」

「白村会長……あっ!兄妹ですか」

「正解です。と言うか、松下さん、なんで付いて来ているのですか?3年生でしょ?」


 3年生の羽衣が、2年生の松下さん率いる生徒会に混ざっている事が理解出来ない。


「私が前会長にお願いしたんです。高等部の事を知っておきたいと。そして、この場への同席を認めて頂きました」

「そうですか」






 打ち合わせを終えるたら、今日は羽衣と2人で帰宅する事にした。


「前会長の男の子と仲良くなったの?」

「んまぁ~~一通りクラスメイトとは顔なじみになったよ」


 流石のコミュニケーション能力だと思う。


 同年代の男の子とも一定の距離感を保って接していくのだろう。


「転校してからさぁ~~クラスメイトの3人の男子から告白されたよ」

「モテるねぇ〜〜」

「まぁ、全て断ってるけどね。ケニーが居るし!」


 やはり、羽衣はモテるようだ。


 容姿が整っており、スタイルも良いとなれば、男の子はほってはおかないだろう。


「あまりに、執拗いなら先生に相談しなよ。もしくは、僕から言うから」

「あんがと。まぁ、詩季にぃとケニーを超える男なんて居ないしね。私の身体や顔しか興味無いもんね」


 告白をされた羽衣が、そう感じているという事は、男子は隠せていないのだろう。


「あっ、高等部の体育祭私も見るよぉ〜〜中等部の生徒会にくっ付くから!」

「迷惑かけたらダメですよ」

「大丈夫!大丈夫!友達が中等部生徒会の副会長だったからね!」


 あっという間に、クラス内での人脈作りに成功しているようだ。

 これは、高等部に上がってきた際には、生徒会に勧誘するのもありだと思う。


「中等部の体育祭の準備はどうですか?」

「私は、よくわかんないから、流れに身を任せるだけだねぇ〜〜」

「まぁ、そうだね。それで、ケニーとは話してんの?」

「急に、話題変えるねぇ〜〜」


 僕の部屋は1階で、羽衣の部屋は2階なのだ。リビングとかでは電話している姿を見たことないので、電話しているとしたら2階の部屋だと思う。


「1週間に、1回程度だね。向こうは、進学に向けての勉強が大変みたいだから。電話しながら勉強してるよ。あっ、詩季にぃに会うために、日本語の勉強頑張ってる」

「頑張ってるんだねぇ〜〜かく言う、羽衣も勉強頑張らないもいけないと思うけど?」


「ほれ!」


 羽衣は、成績表を見せてきた。2学期開けてからの実力テストと中間テストの結果だ。


 両方とも総合1位を確保していた。


 ちなみに、高等部の実力テストと中間テストは、僕は首席をキープして次席が春乃さん。3位に瑛太くんが返り咲いて順位を維持した。


「文句はありませんね」

「でしょう!」


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