176.覚悟の目
『新生徒会発足!白村政権陣容!』
新聞部発行の新聞が、発行された。
10月になり、生徒会の代替わりが行われた。
新聞には、昨日に公の場での生徒会引き継ぎ式の写真と新生徒会メンバーが一面になっていた。
次のページには、白村新生徒会長と松本生徒会長代理による引き継ぎ書の手渡しシーンと、新聞の4割近くが、生徒会の話題だった。
明日には、奈々さんの初めての仕事の生徒会新聞の発行が控えている。
「体育祭に関して説明するぞ」
今日の6時間目の総合の時間は、10月の下旬に開催される体育祭に関してのリーダー決めだ。
藤宮高校の体育祭を模倣したうちの体育祭は、クラス内でリーダーを決める。そのリーダーは、競技には出場出来ない代わりに、競技の指揮官としてインカムを通じて、クラスに指示を出す役割を得るのだ。
通常は、前に立っている体育委員の女子の方がなるのが通例らしい。
「うちのクラスのリーダーは、白村で良くないか?」
男子の体育委員の子が、僕を指名してきた。
「確かにな。脚の状態を含めると、それは、最適解だろう」
まぁ、確かに、僕の脚の事を考えると仕方がないか。
「わかりました。リーダーを引き受けます」
僕は、クラスのリーダーを受け入れた。
「副リーダーだが……」
インカムを持って指示を出せるのはリーダーと副リーダーの2人だ。
体育委員の2人は、少々、気を遣っている様に見える。
新生徒会の役員人事において陽葵さんを外したことだ。1年生の間ではニコイチと捉えられていた、その相方を生徒会から外したことは、少なからず驚かれていたようだ。
「白村どうする?」
どうしたものか。
生徒会活動とは別物だから大丈夫だろう。それに、春乃さんを任命したら生徒会との兼ね合いもあって、クラス内でリーダー不在の時間が出来るのも不味いだろう。
いや、そんな考えだと陽葵さんに申し訳が無いだろう。
「私、副リーダーやりたい」
僕からお願いしようと思ったら、陽葵さん自身が立候補してきた。
これまでの印象とは違う。
僕の前では、明るく天真爛漫な女の子だが、何かをするにしても、基本的には受け身だった。自分からクラス全体の行事に関して自分から立候補するとは思わなかった。
「詩季くん。お願い」
陽葵さんの目を見て、ただ単に僕の隣に居たいだけという理由では無いように思う。陽葵さんの目は、本気の目だ。
「わかりました。陽葵さんに、副リーダーを任せたいと思います」
「頑張る」
陽葵さんの表情は、今までにない表情をしていた。陽葵さんの表情は、選挙選中に春乃さんが見せていた表情そのものだ。
「では、僕が生徒会活動をしている間に関しては、陽翔くんが、陽葵さんのサポートという事でどうでしょう」
僕がクラスに居る間は、2人体制で指揮を取れるが、生徒会に行っている間は、1人になる。その際の代理を陽翔くんに依頼する。
「わかった」
「OK。体育祭に関してのクラス組織は、出来上がったな。今後、どの競技に誰が出るかの選抜は、来週のホームルーム」
今日は、帰宅となった。
僕は、体育祭の準備のため生徒会に行く事になる。
「詩季くん。体育祭のメンバー構成とかだけど」
「骨格作りは、お任せします。恥ずかしい話ですが、体育祭当日まで、放課後は、教師陣との打ち合わせや新生徒会での業務で余裕が無いので」
「わかった。陽翔行くよ」
そう言うと、陽翔くんの手を掴んで体育委員の2人のもとに歩いて行った。
さぁ、僕も先生方と話し合いをしますか。
生徒会室に寄って星川先輩と合流してから、『交流会館』にある会議室に移動した。
「お待たせ致しました」
脚の事もあり余裕もって動いていたので開始時間には間に合っている。しかし、他の出席者に関しては、揃っていたので一応儀礼的に言っておく。
「白村先輩、高等部生徒会長就任おめでとうございます」
「ありがとうございます」
中等部も生徒会長選挙を行い代替わりしている。僕が、中等部生徒会にいた頃に後輩だった男の子が、前会長で、その後を継いだのは女の子だったようだ。
以前、間違えて中等部の生徒会室に行ってしまった時にも彼女の姿を見ていた。それに、中等部の生徒会長選挙の資料を見たが、彼女は、前会長の後継指名で勝ったようだ。
「それでは、話し合いを始めましょうか」
ここから、話し合いのスタートだ。




