表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/326

171.不意打ち

「大変長らくおまたせしました。只今より、決選投票前の演説を行いたいと思います。予め、順番は決定しており、先に星川愛理さん。次に、白村詩季さんとなります」


 いよいよ、最終決戦前の演説勝負になった。


 一次投票では星川先輩が、リードしていた。だから、このままいけば、僕の負けは確実の物となる。


 だからこそ、最後はあの手段を用いる事になる。


「では、星川愛理さんの演説です」


 星川先輩は、応援弁士の方と共に舞台に上がって行った。


「では、演説を開始してください」

「私は、星川愛理候補の応援弁士の――」


 星川先輩の応援弁士の方が演説を始めた瞬間、舞台袖と講堂の外を繋ぐ扉が空いた。


「いやぁ〜〜広いねぇ〜〜体育館と講堂間違えかけたよ」

「演説始まっているので、少し声量落としてくださいね」

「おっとと、すまないね」

「白村くん、その方は?!」

「えっ……断られたんじゃ……」

「……そもそも、誰なの?」


 入ってきた人物を見て、各々、反応してきた。案の定、奈々さんは初対面なので、誰かわかっていない。制服を見て藤宮高校の生徒だとは、認識しているだろう。


「あれぇ〜〜女の子を侍らせてるねぇ〜~意外に、女好き?」

「そんな訳ないでしょう。選挙協力していただいているのです」

「ねぇ、この方はだれ?」


 痺れを切らした奈々さんが、紹介を求めてきた。


「こちらは、藤宮高等学校の生徒会副会長を務めている、有隅桃花さん」

「…………マジ?」

「彼女のポロシャツの襟見てみなよ」

「……本当だ」


 藤宮の生徒会メンバーは制服の襟付近に、バッチを付ける事になっている。


「それで、断られたんじゃ無かったの?」


 そう言えば、立候補した初日には、そんな事を言っていたか。


「本当は、了承頂いていましたよ。ただ、最初から表明すると、敵陣営も警戒するでしょう」

「なら、私たちにも教えてよぉ~~」

「騙すならまずは、味方からともいいますからね。奈々さん」


 戦術を読んで付いて来ていた春乃さんと松本先輩は、「隠し玉を用意しているとは思っていたけど、予想以上の人物を連れて来た」といった感じの感想を述べてきた。


「……この選挙戦、陽葵ちゃんには本当に頼らなかったんだね」


 春乃さん的には、隠し玉として陽葵さんを用意していると思っていたようだ。


「頼らないですよ。短期間ですが、陽葵さんは生徒会役員としては力不足でした。広報の仕事も大枠だけ調べて記事だけ書いて、細かい調査や色んな人との調整という大きな仕事は、春乃さんがしていたでしょう」


 見ていてわかった。


 陽葵さんの仕事内容は、表面的な調査をして生徒会新聞の記事を書いていた。その後に、春乃さんが、陽葵さんの分の記事も裏取りから何までしていた。


「広報の能力だけなら奈々さんの方が上だと思います。それに、情を掛けていたら、大事な所では勝てません。公私は分けるべきですから」

「しきやん、公私分けるって……高校の生徒会だよ?」

「生徒会でもです」


 僕にとっては、この学校の生徒会長という実績が確実に欲しい。だから、票数を集める戦いで相手の票数を削りにいく戦法を取ったのだ。実際の政治家の選挙活動のような戦い方を教育機関でしたのだ。


「――是非とも、皆さんの一票を私に投じてください!」


 星川先輩が演説の締めセリフを言った。


 星川先輩と応援弁士の方が一礼をすると、講堂内から大きな拍手の音が鳴り響いた。


「おぉ〜〜彼女、支持率高いねぇ〜〜」


 有隅さんは、僕の隣で面白そうに見ていた。


 星川先輩は、舞台袖に退場してきた。


「星川愛理候補の演説でした」


 星川先輩が、やりきった感じの表情をしていた。


「お疲れ様です。大変良い演説だったと思います」

「ありがと。次は、君の番だね……えっ」

「どうもぉ〜〜お久しぶりです!」


 星川先輩は、有隅さんの顔を見て固まった。まるで、恐れていたカードが登場したと言わんばかりに、固まっている。


 一度は無いと判断していたが来ていた。不意打ちを喰らったとでも思っていそうだ。


 まぁ、それも自分から不意打ちを受けに行ったとでも言える。

 敵対候補の言うことを素直に信じたのだから、仕方がないと思う。


 【嘘】も戦術の内なのだ。


「続きまして、白村詩季候補の演説です」


 僕の名前が呼ばれた。


「さぁ、奇跡の大逆転勝利といきましょう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ