161.家族第一
「それでぇ~~作戦会議どうだったぁ~~」
夕食を食べている僕の隣で、戦国ゲームをしながら羽衣が聞いて来た。
「有意義な話し合いになったと思います」
「へぇ~~」
「何なの?言いたい事でもあるの?」
羽衣の喋り方的に、何かを言いたいように思えた。もしくは、聞きたいのか。
「陽葵ちゃんに、嫌われる覚悟もしてんだ?」
「そりゃしてますとも。今回の選挙戦ににおいて、陽葵さんの協力を拒否した時点で。選挙戦略を話すつもりありませんから」
選挙戦に出ることは、伝えた。
作戦会議の際に、メンバーに陽葵さんには話した旨を伝えた。メンバー以外で漏れたならそこからの可能性はある。
まぁ、自分の都合すぎて申し訳がないのだが。
「それで、勝てる算段あるの?」
「ありますよ。現状、僕側に付いてくれている人たちを上手に配置すれば、最終的には大きな大差で勝てるでしょう」
「そのリターンの1つとして、陽葵ちゃんに嫌われる可能性があると?」
「……そうだよ。特に、最後のカードは、陽葵さんにとっては、よく思わないと思います」
3本の矢の他に、最後の最後に使うべきカードも用意している。そのカードを切った際には、大きなリターンが帰ってくる事もわかっている。
「そうだよねぇ〜〜好きだと伝えて、両想いの恋人前提の関係になってからだとねぇ〜〜あの時に、告白したのは、悪手だったかもねぇ〜〜」
「……何だか、知っているような口ぶりですね」
まるで、僕が考えている戦略を誰かから聞いているような口ぶりだ。
「春乃ちゃんからね。1学期の詩季にぃの事を聞いていたのだよ。もちろん、詩季にぃが、箝口令を敷く前だからね。責めたらダメだよ」
「責めませんよ。ある程度の流れは分かりました」
羽衣は、陽葵さんだけでなく春乃さんにも学校での僕の事を聞いていたのだろう。
陽葵さんは、伝える事を選んで伝えているようだが春乃さんの場合は、陽葵さんが言えない事を伝えている可能性もある。
つまりは、藤宮高校生徒会副会長でアイドル並みに整ったルックスを持つ有隅桃花さんと連絡先を交換した事も知っているのだろう。
そして、連絡先を交換するまでの前後のやり取りも聞いているのだろう。
つまりは、羽衣が僕の考えている事に近い事を言い当てている理由は、得た情報を元にして僕の戦略を考えているのだろう、
「そう言えば、小さい頃は、2人で戦略ゲームで遊びましよね」
「そうだねぇ〜〜勝敗は、五分五分だったなぁ〜〜」
羽衣が、アニメオタクになったきっかけは、趣味の戦略ゲームを買ってきた際に、そのアニメキャラにどハマりしたのがきっかけだった。
「相変わらず、僕が考える戦略の予想は得意ですね」
「だって今回は、対私じゃないでしょ?私以外に向ける戦略なら簡単に予想できますとも」
羽衣は、自分の胸を強調するかのように胸を張った。
「まぁ、それで陽葵ちゃんに愛想尽かされたら、私が日本で作る新たな友人を紹介して参じようではないか!」
「遠慮しておきます」
「な、なんとぉ!性欲に溺れる――あいだぁ!」
すぐに下ネタに持ち込もうとする羽衣の頭を強めに手刀をお見舞いしておく。
「痛いよぉ〜〜」
羽衣が、頭を抑えながら抗議の視線を向けてくる。流石に、強くやり過ぎたと思い頭を撫でる。
「うぅ〜〜極楽浄土じゃ〜〜」
するとたちまち、機嫌を良くしていた。我が妹ながら、チョロくねと思ったのは内緒だ。
「陽葵さんは、どう思うかな?」
「わからん。陽葵ちゃん次第じゃないかな。嫌われんのが嫌ならやらなければいいだけじゃん?」
「やりますよ。今は、家族第一だから。家族としての関係性をはっきりさせる為にも」
「そうだよね。未だに、態度をはっきりしないもんね。クソ親父は」
普段なら汚い言葉を使う羽衣を注意するのは、僕の役目的な所だが、今回は見逃す。
僕だって同じ思いを持っている。
母さんは、再会後に態度をしっかりと表明して友人たちを拒絶してまで、僕と羽衣との関係性の回復と維持に動いてくれた。未だに、態度を保留しているのは、父親だけだ。
「羽衣と一緒です。今は、家族第一。目的において陽葵さんが邪魔なら切り捨てます」
おばさんにあんな啖呵切っておいて、こんな事言うのは矛盾しているとは思う。
僕自身も、陽葵さんとの関係の継続には努力するが、どうしてもどちらか一方を選ばないといけない場合は、家族第一の方針を取る。
「まぁ、頑張りたまえ!私は、味方だぞ!」
「そんな格好で言われても響かんなぁ〜〜」
「だって、後は食べて寝るだけだよ?なのに、私服に着替えんの?この格好の方が、洗濯物減るしスカートシワにならないんだけど?」
「……すみませんでした」
服装に関して、羽衣に言いくるめられてしまったが、覚悟を決めないといけない。




