158.名前
委員長 西原陽翔
副委員長 阪部詩織
1学期の始業式が始まる前に、クラスの委員長・副委員長を決めた。
本来、学級委員の任期は1年間だ。しかし、外的要因なので、変更になる場合がある。今回は、その外的要因でクラス委員長と副委員長が変更になった。
その理由は、委員長の春乃さん・副委員長の僕が、生徒会に入る事になったためクラス運営と生徒会業務の両立が厳しい。そのため、学級委員と生徒会は兼務しない事になっている。
委員長は、春乃さんのお願いは、断れなくなっている陽翔くんになった。副委員長の阪部詩織さんは、奈々さんのお友達だ。
今回、石川くんは、自分の席で大人しくしていた。
「んじゃ、新しく委員長・副委員長が決まった事だし、始業式だ。時間までに移動しろよ。白村と住吉は、生徒会に合流すること」
そう言って、朝のホームルームは、終了になった。
「ねぇ、白村くん。髪切ってかっこよくなったよね!」
「そう!髪長い時は、可愛い系男子だと思ったけど、今は、カッコいい!」
「……思ったんだけどさぁ、この前、お前が話していたアイドルに顔立ち似てないか?」
「あぁ、言われてみれば!」
体育館への移動中にクラスメイトが、僕の髪について話していた。そう言えば、奈々さんも推しアイドルに似ているとか言っていたか。
体育館に移動すると、生徒会メンバーと合流した。
「おはよう、白村くんに住吉さん!」
「おはようございます、松本先輩」
始業式等の式典は、生徒会と教師陣が協力して運営する。
「それでは、9月に行われる生徒会長選挙に関する説明を――」
生徒会長選挙の話題になると、体育館内の空気は、一気にピリついた。それほど、学校全体で生徒会長選挙に対する関心が強いという事だろう。
昨今は、選挙における若者の投票率のことをよく言われるが、若者全員が、選挙と聞いてピリついた空気になれば、投票率も上昇するだろう。
「まぁ、国や自治体の選挙でピリつく時は、本当の国の危機なんですよね」
「どうしたの?」
どうやら、独り言を喋ってしまっていたようだ。隣に立っている陽葵さんに不思議がられている。
「なんでもありません。春乃さん」
「うん」
昨晩、おばさんとの電話の後に、春乃さんと本日に関する打ち合わせをしていた。
2学期の始業式では、生徒会長選挙の概要が発表される。
事前に調べているが、公式な場での発言は、しっかりと聞いておく必要がある。
マイクの前に立ったのは、選挙管理委員担当の教諭だ。バインダーを台の上に置いて、話し出した。
「まず、本年度の生徒会長選挙の立候補期間ですが」
これは、是非とも聞かないといけない。
「立候補期間は、本日より1週間以内とします」
立候補期間は、今日から一週間以内。なるほど、今日からも立候補を受け付けるという事か。
立候補者は、立候補した瞬間から生徒会長候補として、名前が発表され、新聞部(生徒会のは別の媒体)にも取り上げられる。
だからこそ、自分の名前を売り込むために、立候補期間初日に、立候補する場合がほとんどだ。
まぁ、それをして1番効果があるのは、影響力のある候補者だ。長く名前を売れるからという理由で、初日に立候補した所で、影響力ある人と比べられるだけだ。
「選挙方式ですが――」
選挙方式の説明に入った。
中等部時代は候補者の中で、1番票数を集めた人物が、生徒会長になっていた。しかし、高等部では方式が異なる。
その理由として、『生徒の過半数以上の信託を獲るべし』と、この学校の創設者が述べた事が由来らしい。
事前に調べているが、先生の説明を聞いていく。
先生の説明は、こうだ。
選挙には、立候補人数によって方式が変わってくる。
先生の述べた選挙方式は、下調べしていた内容と変わりなかった。
(よし、戦術は、そのままにいくか)
僕たち生徒会メンバーは舞台袖に、待機している。
生徒会長選挙に関する説明が終了した後は、9月で任期満了になる現生徒会長メンバーが、壇上に集まり、代表として生徒会長である古河先輩が挨拶をする。
生徒会長メンバーが壇上に上がると、1年生である僕たちに、視線が向けられている。
それも仕方がない。
1学期の終業式時点では、所属していなかったので、ある意味、お披露目も兼ねている。
注目は、1年生である僕たちに集まっているのは、同然だが、春乃さんが1番集まっているように思う。
そう言えば、高等部から入学してきた生徒が、生徒会に入ること自体、春乃さんが最初になるんだった。
そりゃ、今年度高等部入学組の中で、トップの成績を残していたのだから、ある種、名前は売れているだろう、
ちなみに、僕もトップ成績で、高等部に上がってきた事で、春乃さんまでとは行かないが、名前は売れていると聞いた。
古河先輩の挨拶を終えた事で、2学期終業式が終了した。




