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154.誕生日②

「そ、それより、陽葵もプレゼント渡せよ!」


 からかわれ続けた陽翔くんは、限界と言わんばかりに、陽葵さんに話を振った。


「じ、自分のタイミングで渡すからぁ〜〜」

 

 陽葵さんは、どこかよそよそしくしているように見える。かなり、緊張しているのかもしれない。


「渡すなら流れの出来ている今じゃない?この流れを逃すと後々大変よ?」

「お母さん!」


 おばさんは、この数十秒程のやり取りの間に、陽翔くん側に寝返っていた。


 おばさんとしては、子ども達をイジって遊んでいるように見える。


「詩季くん。これ」


 陽葵さんは、バックの中から小さい包みを渡してきた。


 包みを開けていくと、小箱が出てきた。


 小箱を開けてみると……


「指輪ですか?」


 小箱からは、指輪が2つ入っていた。


 そう言えば、ホテルでのお泊まりの後に、羽衣に、右手の指輪を触らせろと言われて触らしたけど、これに繋がっていたのか?


「そ、そのね。大きい方は、詩季くんので、小さい方は、私の……」


 そう言うと、陽葵さんは、大きい方の指輪を取り出して、僕の右手薬指にはめてくれた。

 陽葵さんは、小さい方の指輪を取ると自分の右手薬指にはめた。


「ペアリングなの……」

「重くありませんか?」


 グサッ!


 陽葵さんの心に、見えない矢がクリーンヒットしてHPを奪って行く音が聞こえる。


 おばさんに陽翔くんは、僕と同じ事を思っていた部分はあったのか、もしくは、僕が正直に返した事に驚いているのか、目をぱちくりしている。


「うぅ、そうだよね。詩季くんとお揃いのが欲しくて、これ見た時に、コレだと思ったんだよね」


 そう言いながら、陽葵さんは、指輪を回収しようとするが、僕は返さないという意志を示した。


「もう、僕が貰ったので僕のです」

「え、でも、重いんじゃ?」

「陽葵ちゃん。大分、詩季にぃに、心開かれてるじゃん!」


 羽衣の一言に陽葵さんは、羽衣の顔を見た。


「どういうこと?」

「詩季にぃの素はこれなんだよ。私が、ふざけると直球的なツッコミを入れられるんだよ。これまでは、詩季にぃ遠慮がちだったけど、大分、心開いている証拠だよ」


 さっきまでの少し落ち込んでいた陽葵さんは、瞬く間に、嬉しそうな表情になっていた。


「陽葵さん。嬉しいですよ。恋人関係でない中、指輪は、重いとは思うけど、嫌ではないです。恋人関係になれた時には、お互いにはめたいですね」

「うん!!」


 本当に、コロコロと表情が変わる女の子だ。


「羽衣、僕の部屋にネックレス用のチェーンが眠っていると思うので取ってきて?」

「OK」


 確か、中一のクリスマスに、母さんが友人から使わなくなったと言うネックレスを貰ってきて僕にくれた。


 引越しの際は、前の家に置いていくつもりだったが、陽葵さんが勘違いで荷物の中に入れていたのだった。


 確か、そのネックレスは……


「詩季にぃ、持って来たよ」


 羽衣が持って来た包みを開けると、予想通りだった。


 母さんが貰って来たネックレスは、指輪を取り付ける事が出来る物だった。


 僕は、ネックレスを取り出して指輪を外すと取り付けた。


「陽葵さん。これをどうぞ」


 ネックレスは、2セットあった。片方を陽葵さんに渡すと、僕が付けた方法を真似してつけた。


「まだ、恋人ではありませんので、恋人になるまでは、ネックレスとしてペアルックしましょうか」

「うん!」


 陽葵さんは、嬉しそうに首にネックレスを身に付けていた。僕もそれに続いてネックレスを身に付けた。


「陽葵さん。ありがとうございます」

「どういたしまして!」


 陽葵さんは、上機嫌だ。


 機嫌のいい陽葵さんの笑顔は、可愛い。


 ただ、弱冠(若干)4人程、ニヤニヤした視線を向けられている。


 確かに、傍から見たら、人前でいちゃつくバカップルだ。


「ゴホン!2人のイチャイチャが終わった所で、ご飯にしましょう!」


 静ばぁの一言で、僕と陽葵さんは頬を真っ赤にしながら、席に移動したのだった。






 陽葵さんたちは、昼食を食べ終えて、少しゆっくりしたら帰宅していった。


 今日の来訪者は、もう一人居る。


 ちなみに、羽衣は僕に誕生日プレゼントを渡していない。1週間前から「プレゼント楽しみにしとけ!」を繰り返し言っていたので、何か用意しているのは確かだ。


 ちなみに、おばさんから帰宅間際に一枚のメモ書きが渡された。


『 夕方の用事が終ったら電話ちょうだい! あっ政伸には許可貰っているから安心して! Tel……』


 メモをポケットにしまった。


 それと同じタイミングで、家のインターフォンがなった。


 静ばぁが出迎えて訪問者は、リビングに来た。


「詩季、お誕生日おめでと」

「ありがと、母さん」


 母さんが、誕生日を祝いにお家に来てくれたのだ。手には、ケーキを入れているであろう箱を持っていた。静ばぁにお願いしてケーキは、冷蔵庫に保管する事になった。


 今日は、お昼に陽葵さんたちにお祝いして貰って、夜は母さんだ。


 これまでも、決められた曜日に会って食事を共にしていて、大分、心を開くことが出来ている。


「さぁ、しずか。詩季がよろこぶご飯を作りましょう!」


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