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153.誕生日①

「詩季くん、お誕生日おめでと!」

「ありがとうございます」


 8月31日


 僕の誕生日だ。


 家には、西原さん一家が、僕のお祝いに訪問してくれている。つまり、同級生の友人は、陽葵さんと陽翔くんが訪問してくれている。


 陽葵さんが、一番にお祝いの言葉を言ってくれる。


 好きな人からのお祝いの言葉は、嬉しい。


 昨年の誕生日は、色々あって、病院で寂しく迎えたから、程よい盛り上がりで嬉しい。


「詩季にぃちゃん。おめでとう!」

「あわぅ!陽菜ちゃん、ありがとうございます」


 以前のパーティーの際は、殆ど構ってあげられなかった事が影響してか、陽菜ちゃんが抱き着いて来た。これは、これは、激しい愛情表現だと思う。


 遠目に、羽衣からは、睨みを効かされている。その視線には、「浮気するな」と「陽菜ちゃんに構って貰えて羨ましい」とでも思っていそうだ。


「ごめんね。陽菜、久しぶりに、詩季くんと遊べると思ってテンション高いの」

「大丈夫です。可愛い物ですよ、羽衣と陽葵さんの暴走に比べたら」

「「何で、私なの(なんや!)」」


 女性陣2人から強烈な抗議の視線を送られる。行動にも移したそうにしているが、陽菜ちゃんが居る手前、動けずにいるようだ。


「詩季、お誕生日おめでと」

「ありがとうございます。所で、一昨日、春乃さんとデートに行かれたみたいですけど……どうでしたか?」

「んなぁ、何で知っているんだ?!」


 陽翔くんは、情報が漏れていたことに混乱しているのか陽葵さんの顔を見ていた。陽葵さんは、「私ではない」と言わんばかりに、呆れた視線を陽翔くんに向けていた。

 

 2人の様子を見るに、陽翔くんは、春乃さんとデートする事になった事を陽葵さんに話して、デートプランの相談に乗ってもらったのだろう。

 まぁ、僕は、春乃さんから「陽翔くんとデートするから、どんな服がいいか相談にのって!」とプライベート用のスマホで相談されていたので、知っていたのだが。


「なぁ、詩季。何で、知っているんだ?」

「春乃さんから相談されていましたからね。陽翔くんとデートするからどんな服が良いか相談されていたから知っているだけですよ」

「何だ、そう言う事か」


 陽翔くんは、納得した表情になっていた。


「詩季くん、お誕生日おめでとう」

「おめでとう」

「おじさん、おばさん。ありがとうございます」

「これは、私たちから。もし、陽葵と付き合った際に、使ってね?」


 おばさんから手渡された包みを軽く開けてみたが、見覚えのある赤い箱が見えた。

 恐らく、0.01と書かれているであろう0.まで見えてしまった。


 陽菜ちゃんが、おじさんに呼ばれて部屋を後にした事を確認してから渡してきたのには、理由があったという事か。


「おばさん、何かの冗談ですか?」

「あらぁ、それは間違えたわぁ〜〜本当は、こっち」


 おばさんは、さっきの包みをより細長いものを渡してきた。


「ありがとうございます。これは、お返ししますね」

「いやいやぁ〜〜いざという時のために持っておきなさい。高校生は、お盛んな年頃だしねぇ〜〜」


 この母親あっても娘ありか。


 陽葵さんより、手強い気がする。


「では、有難く頂戴致します……」


 これ以上の押し問答は、おばさんの後方で頭を傾けながら、こちらを伺っている陽葵さんに、勘ぐられる可能性があるので、引き下がる。


 それにしても、健じぃから渡された分も含めると、2箱……。陽葵さんが持っている分も合わせたら、3箱……。


 いかんいかん。


 これ以上、こっち方面に流されてはいけない。


 おばさんから貰った細長い方の包みを開けていく。


「万年筆?」

「そう。私ね、基本的に、大事な書類を書く時には、万年筆を使う事にしてるの。政伸との婚姻届も万年筆で書いたね」

「何か、理由があるのですか?」

「通常時と大切な時に、物を変える事で、自分に対して、これは大事な事だと意識させるためにしていたかな。これから、詩季くんは色んな事を決める事が多くなると思う。その時にでも使ってくれたら嬉しいかな?押し売りだけども」

「有難く受け取らせて頂きます」


 何だか、おばさんには、見透かされているのではと思ってしまう。

 僕が、陽葵さんに隠している事に関して、本質は付かずとも近い所で、見透かしているのかもしれない。


「それに、この後に、陽葵から渡されるプレゼントもいいよ!」

「ちょっと、お母さん!」

「何たって、一生懸命選んでたからねぇ〜〜時折、顔を真っ赤に――んぐぁ!」


 顔を真っ赤にした、陽葵さんが、おばさんの口を手で塞いでいた。


「母親に、何をするの!」

「お母さんが、プレゼントの事バラそうとするから!」

「あ〜んた、どうせ、こっちかは話振らないと、もじもじして渡さんでしょ!」

「そ、それは、時を見計らって……」


 陽葵さんとおばさんが、親子のじゃれ合いをしていると肩をツンツンとつつかれた。


 そこには、戻ってきていた陽菜ちゃんと陽翔くんがいた。


「詩季にぃちゃん!これ、私から!」


 陽菜ちゃんからプレゼントを貰った。


 それは、僕・陽菜ちゃん・陽葵さん・陽翔くんが描かれた絵だった。


「ありがとうございます!」


 そう言って、陽菜ちゃんと頭をわしゃわしゃの撫でてあげる。陽菜ちゃんは、物凄く嬉しそうな表情になっている。


「これは、俺から」


 陽翔くんからは、美味しそうなクッキーを渡された。


「こう言うのを自然に、春乃さんに渡せたらイケメンなんですけどね。もしかして、僕で練習してます?」

「そ、そんな訳無いだろ?!」

「怪しいですねぇ〜〜?」

「何で、詩季まで陽葵や母さんみたいに、俺をからかってくるんだよ!」

「「「面白いから(です)」」」

「何で、そこで3人ハモるんだよ!」


 何時もは、表情を変えないからこそイジって楽しいのだ。


 普段とは違う陽翔くんの表情を見れて、楽しい誕生日になりそうだ。


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