137.バッサリ
「ありがとうございましたぁ〜〜」
お店を出た。
春乃さんが、お会計を済ませてくれた。お金に関しては、家から出る前に春乃さんに預けていた。
一緒に支払うと伝えたのだが、これも従者の役目ですと譲らなかったのだ。
「しきやん、ご馳走様……」
「詩季、お財布的に大丈夫か……」
2人は、自分の分は出すつもりだったようだ。僕としては、僕の事情で誘ったので全額出すつもりだったので、問題無かったのだが……
「全然、大丈夫ですよ。僕から誘いましたし……」
「はい、コレ、私とバカの分!私たちは、友人なんだから、お金はしっかりしないと!」
奈々さんは、自分の財布から瑛太くんの分も含めたお金を僕に渡してきた。何だか、夫婦みたいなやり取りに、僕と春乃さんは、クスクスと笑ってしまった。
これ以上の押し問答は、不要だと思うので、奈々さんから渡されたお金を受け取って自分の財布の中に入れた。
この後は、奈々さんオススメの美容院に行く事になった。丁度、予約していたみたいで、電話をしてくれて1人追加があっても大丈夫だそうだ。
「んじゃ、俺は用事あるからここで。詩季、奈々の事頼んだぞ」
瑛太くんは家の用事があるようで、駅でお別れとなった。元々は、今日この後、奈々さん1人で美容院に行く予定だったようだ。
僕と春乃さんは、奈々さんに美容院に案内してもらう。
「ねぇ、詩季くん。陽葵ちゃんの事好きなんでしょ?なら、何で今日は、春乃ちゃんと一緒なの?知ってるか解らないけど……この前、春乃ちゃんの行動で少し揉めたんだよ?」
「聞きましたよ。そうですね、いつかは説明しますけど、僕と春乃さんのお互いの実家の関係性みたいなものですね」
「今、説明は難しいの?」
「難しいですね。僕と春乃さんも、最近知った事なので、お互いにまだ慣れていないんですよ」
何とも、僕と春乃さんの自己都合である。リミットがあるのも、僕と春乃さんも解っている。
「わかった」
奈々さんは、これ以上の追求は出来ないと判断して観念してくれた。
「それで、何で、しきやんは髪を切るの?陽葵ちゃんのお気に入りなんでしょ。しきやんの髪セットするの」
奈々さんの呼び方が、詩季くんから僕のニックネームのしきやんに戻った。やはり、詩季くん呼びの時は、怒っていたのだろう。
「ん〜〜、選挙戦においての覚悟を示すためですね。それに、僕、結構顔良いんですよ?」
僕は、前髪を少しかきあげて顔を奈々さんに見せる。
「え、イケメン!」
「どうしたんですか?」
「私の推しアイドルとそっくり!」
そう言うと、奈々さんさんは、スマホを操作して僕と春乃さんに、メンズアイドルの写真を見せてきた。
「…………確かに、似ている」
春乃さんは、何か引っかかっている様子だった。
「なんだか、僕に似ている雰囲気は、ありますね」
僕も、見せて貰ったアイドルの写真を見て引っかかる物があった。
「そそ、似てる!まぁ、こっちの方がカッコイイんだけどねぇ〜〜」
「瑛太くんが、泣きませんか?」
「んまぁ〜〜推しに恋はできませんからね。と言うか、瑛太もこのアイドルの推したよ」
「瑛太くんが、意外ですね」
「でしょ!このアイドルね、男女共に人気が高いの!」
推しアイドルの事で、奈々さんは、機嫌が良くなっている。
そうこうしていると、奈々さんオススメの美容院に到着した。
「おぉ、奈々ちゃん、いらっしゃい!電話で言ってたお友達の男の子は、どこ?」
出迎えくれた、女性は、奈々さんの従姉妹だそうだ。
奈々さんの従姉妹さんは、多分、僕の事を探しているのだろう。
「あぁ〜〜土岐ねぇ、この子だよ」
「えっ、男の子なの?髪長くて可愛いから女の子だと思った!」
「でも、髪の毛かきあげるとイケメンだよ?」
奈々さんさんが、そういうと、土岐さんと言う方が、僕の髪をあげた。
「決めた!この子の散髪は私がする!奈々ちゃんは、清水さんお願い」
土岐さんは、早速準備に取り掛かった。
僕と奈々さんは、清水さんに案内された所に座った。春乃さんは、待合席に座って待っている。
「しきやん、土岐ねぇに気に入られたね。清水さん、おまかせだった場合どうなると思う?」
「ダンディーになるんじゃないかな?」
「さぁ、始めましょう!」
土岐さんが、色々な道具を持ってきた。奈々さんと清水さんの会話を聞いて、少々の不安を覚えてしまった。
「髪型、どうする?」
「まず、長さはバッサリ言ってください。一般男子高校生位に。後は、対人的によく見える髪型でお願いします」
「かしこまり!」
「どう!」
土岐さんの散髪が終わった。
「頭が、軽いです!」
「「そっちの感想?!」」
奈々さんと土岐さんの声がハモった。春乃さんと清水さんは、苦笑いしていた。
久しぶりに、髪が短くなった事で軽くなったと言うのが感想だ。元々、髪型に関しては無頓着な方だったのでそう言った感想しか出てこなかった。
「土岐さん、この髪型のセットの方法教えて頂けますか?」
「簡単だよぉ〜〜君、髪のセットは他人に任せる主義で頓着しないタイプだろうと思ったから簡単に出来る髪型にしたよ」
さすがは、プロだ。
説明を聞いて、髪型ズボラ男子の僕でも手軽にセット出来るようだ。
「にしても、しきやん。髪切るだけで、印象ガラッと変わるね。これまでは、悪知恵働きそうな女の子だったのが、一瞬で、好青年だもん」
「奈々さん、喧嘩売ってますか?」
仲が良くなってからか、奈々さんの僕に対する毒舌が日に日に強くなっている。まぁ、嫌なラインは超えて来ないので、気にならないのだが。
「それと、これ、プレゼント!」
土岐さんは、白色のパナマ帽子を手渡してきた。
「今の髪型なら、これ似合うよ」
ずっと、静ばぁから貰ったベレー帽を愛用していたので、帽子好きと思われたようだ。
「有難く頂きます」
僕は、被ってきたベレー帽をリュックの中に入れて貰った、パナマ帽子を被った。




